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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
鉱山都市と管狐の三姉妹

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鉱山都市

船から降りた俺達は鉱山都市「ツェントラーレ」の大地を踏みしめた。


頂上の平らな「フェルデルング山」の麓には、民家や商業施設が立ち並び、其の奥側に王族の住まう城が見えている。王国の優美な外見の城とは異なり、いかにも質実剛健な性質のドワーフの王の城と言った威容を誇っている。


この街の住人の大半はドワーフだが2割程の多種族もここで生活をしている様だ。

その他種族も採掘や精製、加工や彫金といった生業で日々の糧を得ているという。


ここでも俺達は冒険者ギルドには向かわずに、この国に滞在する間の拠点となる宿屋を物色する。街の中程の利便性の良さそうな中規模の宿屋を見つけ、俺達は滞在の手続きをし、各々の部屋を確保した。


荷物を部屋に置いて身軽になった後、まずは鉱山都市内部を確認する事にした。

繁華街を歩いて抜け、鉱山内部への出入り口へと向かう。


あまり広くない坑道を思い浮かべていた俺は、鉱山の出入口を見て驚いた。

荷馬車が数台並んで通れる広さの出入り口で、内部も高さ10m位はありそうな空間が広がっていた、山の内部を掘削しながら坑道と空間を拡張していった結果、山体の3割位の容積を空間が占めるまでに至ったそうだ。


鉱山内部にはレールが敷かれ、其の軌道上を鉱石を積んだトロッコが移動している。

他にも上下方向の移動用に昇降機が設けられ、多くのドワーフの鉱夫達が行き来している光景が見て取れた。所々には鉱夫相手に軽食を提供する店まであるようだ。


しばらく歩くが結構広い空間の為、目的の坑道になかなか辿り着けない。

そこでフリッツが近くを通りかかった空のトロッコのドワーフに話しかけ、お金を払って目的地まで送り届けてもらうように交渉に成功した。


鉱石を運ぶ為の大きな鉄の籠のような作りのトロッコの内部に乗り、胸の高さほどもある籠の淵に手をかけて立ったまま運ばれる。速さは人が走るくらいだろうか、歩いて進むのとは雲泥の差がある。結構快適な乗り心地だ。


鉱山内部で働く男達の存在の為か、街中には乏しかった活気が満ち溢れている。

多くのドワーフ達は一日の仕事の終わりに一日分の賃金を受け取り、その足で街の酒場へ繰り出して手にした金を全て使い果たすという生活を送る者が多いそうだ。

『宵越しの銭を持たない』江戸っ子の様な気質なのだろう。


しばらくして問題の坑道前でトロッコは止まった。トロッコから降りた俺達の目の前には半ば以上が落石で埋もれた坑道が確認できた。


落石を取り除いては新たな抗木で坑道を支え、と言う作業を繰り返さなければならないのだが、その作業が遅々として進まないらしい。坑道内部で働くドワーフ達が見て取れたが、皆慎重に慎重を重ね細心の注意を払いながら作業しているように見える。

おそらく再発防止の観点から慎重に作業をしているのだろう。


とりあえず当分開通の見込みがない事が確認できたので、街に戻る事になった。

帰りも空荷のトロッコに声を掛けて、入り口まで乗せてもらう事に成功した。



────────────────────



地上に出た後、フリッツが鉱山の管理会社の偉い人に会って事情を聴いてくると、別行動をとったので俺達も各々別行動をとる事にした。鉱山入り口付近にドワーフたちが仕事終わりに立ち寄るという酒場が有るので、そこを集合場所と決めて別行動に移った。


落盤事故の方はフリッツに任せて俺は彫金士ギルドに足を運んだ。

『ヴィルトカッツェ』の皆にお土産代わりにお揃いのアクセサリーでもどうかと考えての事だが、ギルド内に飾られた装飾品はどれも手の込んだ細工が施された精巧なものばかりで、選ぶ方にもセンスが問われる物ばかりだった。


今見ているものは、縦5㎝、幅4㎝程のブローチだが、この大きさの中に『庭園のベンチで愛を語る男女』の装飾が施されている。二人が座るベンチの背景の樹木や前景の花の姿まで丁寧な仕事が見て取れる。はっきり言って芸術品だ。

その隣には『ドラゴンと戦う勇者』のモチーフや、『優美な女性の肖像』といった感じのブローチもある。別の棚には指輪やネックレス、ティアラといったものも多数展示してあり、小さな美術館と言っても差し支えないような品揃えだ。


『あまり手の込んでない指輪なんかの方が良いのかな?・・・解らん。』


自分のセンスが試されてる様でもあり、センスの無さを笑われている様でもある。

管狐の名前を考えていた時よりもはるかに難しい、見れば見る程迷ってしまう。

そんな時、後ろから声を掛けられた。


「お兄さん、アクセサリー探してるの?面白い物あるよ?」

あれ?どこかで聞いたようなセリフだと、振り返るとそこには港町カロローゾで俺に声を掛けてきた少年の微笑む姿があった。


────────────────────


「昨日はお世話になりました、マサキさん。」

彼はティム、ドワーフではなくヒトで元々この街で彫金士として働いているそうだ。彼は昨日晴れて自由の身となって俺と別れたあと、馬車を乗り継いで先ほどこの街へ戻ってきたと言う。


俺は彫金士としての彼の意見を聞こうと、ギルドのロビーのテーブルに着いた。


「装飾品を贈る相手の方々はどういったご関係なんですか?」

「俺にとっては・・・妹みたいな感じかな?年の頃は15~25位の子らで。」

「だったら指輪やネックレスみたいな素肌に付ける物はやめた方が良いですね。」


この世界では素肌につける物を贈るのは親密な間柄に限られ、特に四六時中付けっぱなしになる指輪は『愛の告白』と言う意味に取られる為、避けた方が良いと言う。

『うわ、あやうく指輪を選ぶところだった。』

異世界での迂闊な行動が招く悲喜劇の可能性に冷や汗が出た。


「迂闊なものは送れないな・・・あ。」

一旦、贈り物は置いといて前から気になっていた問題を思い出した。


村を出る際に子供たちから渡されて今も首から掛けている木彫りの像。

共和国で翼竜人とあれだけ激しい戦闘した後で、よく無くさなかったなと安堵したが、今後も無くさないとは限らないのでオリジナルは保管しておいてレプリカを作ろうかと考えていたのだった。


「ティム、この像なんだけど、同じようなの彫金で作れるか?」

首から外した像をティムに見せる、興味深そうに見ていたティムは


「これ位ならまぁ、1時間もあれば作れますよ。」

え?1時間?めちゃ早くない?待ち合わせの時間にはまだまだ早いし、試しにティムにレプリカを作ってもらうことにした。



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