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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
氷の女王とドラゴンの山

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「ドラグーン」

「それでは!新生『ヴィルトカッツェ』の前途を祝して!」

『かんぱーーい!』

デルマの掛け声に皆が一斉に杯を掲げる。


翼竜騒ぎから数日、ようやく落ち着いてきたころ『ヴィルトカッツェ』では盛大な宴が開催されていた。主役をリンダに、翼竜を倒した俺はおまけで祝われた。

何しろリンダのお陰で山へ行くのが簡単、安全になったのだから。

リンダとアベルは二人で上座に座って嬉しそうに料理を摘まんでいる。


アレックスはもちろんフリッツも一緒に卓を囲んだ賑やかな宴となっていた。


「わぁ!凄い!氷があるじゃん!それもこんな大量に!」

「凄い!どうしたのこの季節に貴重な氷がこんなに!」

卓には様々な料理が並んでいたが、ひときわ目立つ中央に大皿に砕かれた氷が大量に盛られおり、それを見た者から感嘆の声が上がる。


「あーこれ、プラム熱対策で山の氷室から持ってきて用意したんだけど、皆のお陰で薬が間に合ったから余っちゃったんだ、だからお礼を兼ねて持って来たんだ。」


フリッツが説明する、なんでも冬季以外で氷を手に入れるには、氷を保存してある山の氷室に行かねばならず、保存の手間と運搬の手間でかなり高額なんだとか。

20×20×40cm位の大きさで金貨1枚が相場で、それを5個持ってきたと言う。


皆、その氷をカップに入れたり布に包んで首に巻いたりと様々な使い方をする。


「あー、凄く贅沢してる感じ。」

「冷たいお酒って美味しいよね。」


皆、十分に氷を楽しんでから思い思いに料理に手を伸ばす。


「さあ、リンダ何が食べたい?好きなもの言ってね。」

「兄さん、もっと飲んでほら!」

「流石ビーストマスター!グレートウルフまで手なずけるなんて!」

「あれ?スー姉さんまだ来てないの?」

「なんか準備が有るからちょっと遅れるってよ。」

「フリッツさん!氷のお礼にお酌させてください!」



皆思い思いに好きな料理を楽しむ、その中に料理を手掴みで平らげる不届き者が二人いた、ワーウルフの「銀狼」アキュラと「白狼」メイだ。

二人は今後『ヴィルトカッツェ』の一員となり用心棒兼、サンダードラゴンとの連絡役となる事が決定していた、今日の宴は彼らの歓迎会も兼ねている。


「肉をもっと呉れ。」

「ワタシも肉!」

こいつ等肉ばかり喰っている、ちゃんと野菜も食べろと突っ込むが何処吹く風だ。


「兄さんも何か食べたい物ないの?」

そう俺に聞かれたが、何か割と手の込んだ料理ばかりでシンプルな物がいいな。

あ、そうだ。じゃがバターなんか良いな、居酒屋なんかでの定番だ。


「ジャガイモ茹でたのある?」

俺がそう言うと、皆が何故か固まった。あれ?なんかおかしいこと言ったか?

皆が固まる中、ワーウルフの二人だけは肉料理をむさぼっている。


「兄さん、ジャガイモってこんな席で食べなくて良くない?」

「そうそう、せっかくのお祝いなんだから、ね?」

皆が言う事を纏めるとこうだ、芋料理なんてお金が無い時に仕方なく腹を膨らますために食べる物でしかなく、こんな席では余り食べたくないという事らしい。


えー?ジャガイモはアンファング村の名産だし、美味しい物だって教えてやりたいと猛烈に思った。『あ、揚げ物料理があるな。ならあれを作れるな。』


「ちょっと厨房行ってくる。」俺はそう言い残し宴会場を後にした。



少ししてミアに手伝ってもらって作った料理を大皿に盛りつけて会場に戻った。


「ほら、俺特製のジャガイモ料理、フライドポテトだ。」

俺は自信満々に大皿を卓に置く。皆、皿を見てるが手が出ない。


「え?これ芋切って揚げただけ?」

「ソースもかかってない?塩だけ?」

確かに切って揚げただけだが先ずは喰えよ、でもなかなか手が出ない彼女ら。

ふと俺は思いついてメイの口にフライドポテトを押し込んだ。


「おい!何をするワタシは肉以外は・・・・・!!!!」

フライドポテトを飲み込んだメイが目の色を変えて両手に鷲掴みして貪りだした。

それを見た面々も「え?何その反応?」「そんなに美味しいの?」と言いつつ少量を口に入れた。


「!!!」

「なにこれ!?美味しい!!??」

「え?信じられない、切って揚げただけ?」


たちまちポテトに群がり大皿はあっという間に空になった。

「あー!お前ら勝手にヒトのものを喰うな!」

メイが両手にポテトを鷲掴みしたまま叫ぶ、


「ちょっともうないの!?」

「あー慌てるな、ミアに追加作ってもらってるから少し待て!」


突然メイが立ち上がり厨房の方へ向かって行った。


「あ、メイの野郎!厨房で喰い尽す気だ!止めろ!!」

「ちょっとアンタ、さんざん食べたろ!?少しは遠慮しな!?」


皆でフライドポテトを取り合ってるうちに、表の扉が開いた。


「済まない、少し遅れた。」


そう言って入ってきたのはいつもの甲冑姿とは似ても似つかぬ小綺麗な女性らしい服を身に纏ったスーの姿だった。


「スー、やっと来たね、じゃあ空いてる席は・・・と。」

「あースー姉さん、私ポテト取ってくるから此処座ってー。」


俺の隣に座っていたナディアが席を空け厨房へと向かって行きながら俺にウィンクして見せた。余程ポテトが気に入ったらしい。


スーが俺の隣に座り、彼女の為に杯が用意された。

ワーウルフの二人はスーの姿を見て居住まいを正し首を垂れる、どうやら「竜の加護」持ちであるスーは二人にとって敬うべき者らしい。


「あれ?二人とも殊勝だねぇ?さっきの弾けっぷりはどうしたの?」

フリッツが面白そうに揶揄う、もちろんその理由は当に知っているのだが。


「『竜の加護』を持つ者はドラゴンに次ぐ敬うべきお方なのだ。」

「『竜の加護』を得られるものなどこの世に数名と居られないのだ。」


アキュラとメイが理由を説明する、メイは掴んでいたポテトを皿に置いてまで居住まいを正している、が、礼が終わると直ぐにポテトを口に頬張りだした。


「そうだよねぇ、『ドラグーン』候補がここにきて二人も居るって凄いよね。」


そうなのだ、王国を出る前までは今代の「勇者」も「ドラグーン」もその手掛かりすら全くなかったのだが、現在は二人もの「ドラグーン」候補が出現したのだ。


本来、「ドラグーン」とはドラゴンと共に戦う者を指していたのだが、歴代の「ドラグーン」でドラゴンを使役したり、力を借りたりしたものは存在しないらしい。

主に「魔導士が魔法を放つ姿」や「銃を撃ち銃口から火が噴き出す姿」を竜に例えて「ドラグーン」と呼んだそうだ、もちろん「竜の加護」を持って居る事が前提だが。


「・・・私には邪神と戦う程の力は無い、アレックスに任せる。」

スーがぽつりと呟く、デルマがそれを受けて


「もうスーが戦う理由も無いし、これから普通の女として生きて行かなくちゃね。」

「・・・マム。」


そうだな、今までスーは頑張ってきたんだ、此れからは良い相手を見つけて結婚して子供を作って幸せな家庭を築いて行かなくては。

村の子供たち同様、スーの未来も守る義務が俺には有るんだ、しっかりしないと。


「ねぇマサキ、今日のスー、何時もと違わないかい?」

デルマが俺に話を振ってきた。確かにいつもは甲冑姿で雰囲気が全く違う。


「そうだな、今日はなんかオシャレしてて凄く別嬪さんになってるよな。」

「・・・からかうな。」

スーが俯いて、デルマが口笛を小さく鳴らした。


「『竜の加護』って初めて見たときは凄い圧倒されたなぁ。」

「・・・?」

「アレックスとの連携が息もぴったりで、そりゃあ綺麗で見事で見惚れたよ。」

「・・・・・。」

スーが顔を赤らめた。


「『竜の加護』持ち同士、いっその事付き合っちゃえよ。お似合いだぞ。」


俺はポテトをつまんでエールを飲み干し、空になった杯を卓に置いた。




・・・あれ?なんか時が止まってないか?皆なにも喋らず、固まってる?

・・・いや、メイだけは相変わらずポテトの皿を抱え込んで咀嚼しているな。


デルマが『まぁアレックスにも良い人いるみたいだし、それはそれとして。』


「スー程の別嬪さんだと普通の男じゃ釣り合わないんだよねぇ?釣り合うとすればこの街を救った誰もが認める英雄とかさぁ、どっかに居ないかねぇ?」


「それは俺も心配なんだ、俺の妹も『すぅ』だし、他人と思えなくてさぁ。」


・・・・あれ?また時が止まった?更に何か空気が寒々しいような・・・?


相変わらずメイはポテトを食べ尽くし皿を掲げて『お代わりー』と叫んでる。

止まった時の中、隣のスーが卓上の杯を手に取り、中身のラガーを一気に煽った、空になった杯を卓に置く。静止した時の静寂の中にその音だけが重く響く。


「・・・マサキ。」

「ん?どうしたスー?」


「良いか、先ず私はお前の妹ではない。」

「うん?」

確かにそうだが・・・あれ?年下と思ってたがもしかして「お姉さん」だった?


「それとスー呼びは仲間内の愛称だ、お前は私を『スーフェイ』と呼べ!」

え!?仲間じゃないから馴れ馴れしくするなって?年下と勘違いして怒ってる?


「あー、解っ・・解りました、『スーフェイ』・・・さん?」

スーがいきなり立ち上がったかと思うと襟元を引っ掴まれて怒鳴られた。


「貴様!馬鹿にしてるのか!全く・・・お前は・・・・!!」


デルマに助けを求める視線を送ったが、彼女は冷めた目で明後日の方向を見ていた。

他の女子は固まって何やら小声で会話している、助けは期待出来そうにない。


『ちょっと!あたしスー姐さんの本名初めて聞いたんだけどー!?』

『あたしだってそうよ!姐さん昔話とか絶対しないし!?』

『あんなに感情露わにして、『氷の女王』はどこに行ったのー!?』


堪らず周りを見渡すとリンダと目があった。リンダはポテトを食べながら


「マサキお兄ちゃんって・・・もしかして、馬鹿?」


10歳の女の子にはっきり、しっかりと、そう言われた。





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