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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
氷の女王とドラゴンの山

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風の巨大結晶と侵入者

俺とアレックス、スーとリンダは風の巨大結晶の下で座り込んでいた。

アレックスの持ってきた「涙滴型クリスタル」に魔力を封じ込めている最中だ。


ビャクゴウの球根輸送はグレートウルフを使えば安全なので『ヴィルトカッツェ』の面々に任せ、ついでに巨大結晶の元で魔力を封じようという事になったのだ。


俺も「涙滴型クリスタル」は預かっていたのだが、プラム熱騒動でワイズマン邸に置きっ放しにしてた所為で所持しておらず、アレックスは俺の蝙蝠の呼び出しに荷物を纏めて持ってきていたため、アレックスの分一つのみ結晶の真下に置いている。


どの位時間が掛かるか解らないが魔物が近づけないこの場所は安全という事で、非常にゆったりした時間を過ごせている。リンダはスーの膝枕で寝てしまっている、余程に疲れたのだろう。


しかしこの場所、ドラゴンの居た山頂から歩いて30分ほどの距離の同じ山脈に位置するのだが、あちらと違って殺風景な眺めが広がっていた。


なにしろここは昔、「勇者」と「ドラグーン」の二人と邪神が戦った場所であり、その時の衝撃で地表は抉れ、樹木は吹き飛ばされ辺りは瓦礫と武器の残骸だらけとなっている。


その荒涼とした景色の中心に淡い緑色の巨大な結晶体が地表から3m程の所に浮いた状態で佇んでいる。この光が届く範囲は明らかに魔力が充実しているのを感じる。

ここに座っているだけで体も心も癒されていく様だ。


アレックスと状況を確認する意味で話していると、話題はやはりと言うか泉付近で襲ってきた術者の事になる。魔物をけしかけて自分が直接戦わないやり口は王都での虎獣人と同じだ、対アカツキ様に対策していたのだろうが神様から逃げる事に成功しているのはそれなりの相手という事なのだろう。


「空を飛ぶ」という事は。翼のある鳥獣人とか翼竜人と言った所なのだろうか。

空から一気に襲われると言うのは危険だ、今後は上空に注意を払わなければいけない。先ほどから自然と視線が空に向かってしまっている。


なにしろ現在は頼みの綱のアカツキ様がドラゴンと情報共有中で不在なのだ。

まぁここは普通の魔物は入ってこれないという事だから安心ではあるが・・・。



退屈な時間の中睡魔に襲われかけた時、淡い緑色の光が届く境界にこちらへ向かってくる一人の半裸の男の姿が見えた。リンダと一緒に居たあの男か?その正体は銀色の体毛を持つ巨大狼で、人の姿を取る事の出来るワーウルフだという事だったが。


そう思った時に男の違和感に気づいた、銀色の体毛を持つワーウルフ、その髪は同じく銀色だった、この男は赤い髪、更にドラゴンの方向とは逆の方から向かってくる。

アレックスも気づいたようだ。


「スー!気を付けろ!妙な男が来る!」

アレックスが注意を促し、スーは正体不明の男を見るやリンダを俺に託す。

・・・まぁ俺が戦力外だから、必然的にお守りになるのだが何か情けない。


しかし普通の魔物は近づけないはず、この男は人なのか?それとも・・・。


男が20m程の距離に近づいた時もこちらの警戒を解くような素振りを全く見せず、そのまま近づいて来る為、敵の可能性が跳ね上がった。


「おい!そこで止まれ!貴様は何者だ!?」

アレックスが剣を構えつつ男に警告する。

スーも同様に刀を正眼に構え、相手の出方を待つ。


「・・・全く、下等なヒトの姿を取らねば近づけんとは忌々しい・・・。」

男の自嘲とも言える呟きに敵判定が下る、アレックスとスーが男に斬りかかる。


その瞬間、男が何かをアレックスに向けて投的し、アレックスは間一髪躱す。

その隙に乗じ男に斬りかかるスーにも同様に何かを投げるがスーも難なく躱して男に刀をふるう。


俺は二人の動きに驚嘆した、相手に向かって行きながら自分に投げられたモノを躱すなどとんでもない技量だ、実際俺には投げられた物の軌道など全く見えなかった。


男はスーの刀を後ろに飛んで躱すと更に斬りかかるアレックスの剣を下がりながら躱す。男は剣を躱した際にその体を沈め、地面から両手で何かを拾い、また投げた。

男は石を投げている様だ、素手の男にとって剣を持つ二人はやはり脅威で攻撃の牽制に投てきに頼らざるを得ない様だ。


アレックスは飛んできた石を難なく剣で弾き飛ばし、返す剣で男に斬りかかる。後ろに下がる男を追ってスーが刀を突き出すや、男が再び石を投げる。男がスー目掛け投げた石は、その手から離れた直後に刀先を当てられて全く違った方向へと消えてしまう。スーの放ったその切っ先が男の体表に血を滲ませた。


しかしアレックスとスーの動きは恐ろしい程洗練されている、連携などした事のない二人のはずだが、咄嗟にここまで息の合った攻撃が出来るものなのだろうか。


アレックスが斬りかかり男が左後方に下がり躱すと、アレックスの陰からスーが飛び出し刀を横なぎにふるう、さらにそれを後ろに飛んで躱す男に返す剣でアレックスが追撃する。その合間に男が投げる石を間一髪で避ける二人、男は巨大結晶から離れるように追い詰められていく。


────────────────────


男との戦いの最中、二人はマサキが思った以上に自らの動きに驚嘆していた。


『体が軽い!?』

『奴が投げる石の軌跡が見える!?』

『背後のスーの動きが解る!?』

『アレックスの次の動きが予測できる!?』


つい数時間前、泉で獣に襲われた時と明らかに違ってこの場に居る者の動きが手に取るように解る、お互いの動きの意味すら理解できる為、無駄な動きをすることなくこの男を追い詰めて行ける。


そしてその瞬間が訪れる、アレックスの袈裟切りに対し後方に宙返りで飛んで躱した男だが、宙に浮いて体の自由が利かない瞬間をスーに捕らえられ、着地寸前に横なぎに払った刀にその首を刎ねられたのだった。


男の首は大きく宙を舞い、巨大結晶の淡い光の届かない闇へと向かって行ったが、その首が大地に落ちる前に。首を刎ねられた男の右手の中へと納まった。


「・・・やはり中心に近付く程に、力が弱まってしまうか・・・。」

男の首はそう呟き、自らの身体の上へと戻された首は瞬く間に繋がってしまう。


「まぁ、上手く乗せられてくれたものだ、愚か者が。」

その言葉は泉で白狐に投げつけられたものだったが、二人に知る由は無く、その後の男の意外な行動に一瞬動きが止まってしまった。


男は二人に対し左手に一気に走り出し、二人から距離を置こうとする。

追う二人が直後に男の意図に気づいたときは遅かった。

巨大結晶の光の弱い場所を駆ける事でデバフの無い速度で走る男は二人を引き離したと見るや、方向を変えて一気に巨大結晶の方へと走りこんできた。


「しまった!」

「マサキ!逃げて!」

奴の狙いは結晶の下で魔力を充填中のクリスタルか、一気に距離を詰めて来た。

二人は中心から20mは離れた距離をこちらに向かってきているが明らかに男の方が速い。残りの距離は10mも無い、それに対し俺もリンダを庇っている為、中心から20mは離れてしまっている。クリスタルには到底手が届かない。


男が巨大結晶の下に辿り着き勝利を確信したかのように、俺達をゆっくりと見回す。

そして男は悠々とクリスタルに手を伸ばした。


・・・次の瞬間、男はクリスタルを手に取れないまま5m程吹き飛んでいた。

男は何故、自分が大地に伏しているのか理解できず困惑している。


その場に居た者全員が何が起きたのか理解出来なかったが、唯一俺だけが理解した。


俺が「飛翔」で一気に飛んで男を蹴り飛ばした。


たった今、それを確かに理解出来たのだ。






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