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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
氷の女王とドラゴンの山

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サンダードラゴン

山頂に辿り着くとそこは一面のビャクゴウの花が咲き乱れる別世界だった。


「ビャクゴウの花がこんなに・・・。」

この光景に目を奪われたスーが、ようやくこの言葉を絞り出した。

本当に辺り一面で星明りの元、白い花が光り輝いて見え、視界も暗視カメラ状態ではなく普通の視界に切り替わっており、淡い間接照明に照らされたかのようだ。


「あれがサンダードラゴンか・・・。」

見ると正面にひと際大きな影があり淡い光を背景にその輪郭が黒く際立っていた。

その姿は四つ足で長い首と長い尾を持ち、蝙蝠のような飛膜を持ち頭部には数本の角の生えた、誰もがイメージするドラゴン其の物だった。全長は20m程もあろうか。


「凄ぇ・・・ドラゴンって初めて見た・・・。」

「俺もだよ、冒険者歴10年で初見だ。」

「・・・・近づいて大丈夫なの?」


ドラゴンはその姿を見つけた当初から頭を目の前の大地に向けた状態で動かない、

いやドラゴンの視線の先に白い狐がいる、アカツキ様だ。

アカツキ様もドラゴンを見上げ視線を交わしている、何も言葉どころか音も発していないが明らかに意思の疎通を行っている様子だ。


とりあえず意思の疎通が出来るならいきなり襲い掛かってくることもあるまいと、アカツキ様の元へ向かう決断をした。ただ、近づこうにも一面の白い花を踏み潰すのも忍びなく、辺りを探るとドラゴンの元へ続く畦道のようなルートを見つけた。


ドラゴンの元へ何者かが通う道なのだろうか?それがどんな存在なのか不明だが、俺を先頭にスー、アレックスの順でアカツキ様を目指す。


『来たか、マサキそこでしばし待っておれ。』

アカツキ様がこちらを振り返りもせずに、そう言った。

待てと言われた場所はアカツキ様から10m程離れた場所だったが、そこで言いつけ通り待つことにした。スーとアレックスにもそう説明する。


「でも、リンダはどうなる?」

『リンダは無事だ、心配は要らぬと伝えてやれ。』


アカツキ様にそう言われそのままスーに伝えると、スーは安心したのかその場にしゃがみ込み両手で顔を覆った、張り詰めていた気が一気に抜けた様だ。

俺もアレックスも一安心してはいるのだが、サンダードラゴンの威容を目の前にしてしゃがみ込むと云う選択が出来ない。

我が身を重ねていたリンダの無事は、眼前のドラゴンの脅威より勝るのだろう。


アカツキ様は至って平静でドラゴンとの意思の疎通を続けている様子だ。

古の神であったアカツキ様と現世での神獣のドラゴンの間で交わされている意思の疎通、その内容は全く解らないが、アカツキ様の力を取り戻す一助になればと願う。


そしてドラゴンとアカツキ様が不意に同じ方向の闇の中へとその顔を向けた。

その闇の向こうから、夥しい足音がしたかと思えば大きな狼の群れが現れた。

狼たちは闇から抜けたところで群れ全体が静止し、ドラゴンに対し其の首を垂れて先頭の巨大な白い狼だけがこちらへゆっくり近づいてくる。


「・・・リンダ!」

白い狼の背に乗ったリンダを見つけスーが叫ぶ、

「スーお姉ちゃん!?お兄ちゃんたちも!?」

リンダもこちらが解ったようで大声で返事をする、良かった元気そうだ。


白い狼の背にはリンダと一人の男が乗っていたが、二人はその背から降りるとリンダがこちらに向かって走り出そうとする。が、一面の白い花に気付き踏まなくて良いルートを必死に探そうとしている。

それを見たスーが大きく手を振り『こっちだ』と、リンダの左方向へ指先を向け、あぜ道の存在を伝えた、更にそちらへ駆け出すスー。


リンダも元気よく白い花を迂回しながら駆け寄り、道の途上で二人が抱き合った。


「リンダ!心配したのよ!」

「お姉ちゃんごめんなさい。」


『お兄ちゃんと先生とニーナお姉ちゃん達のお薬が欲しかったの。』

リンダはアベルだけではなく、身近の罹患した知人の分まで薬を手に入れようと必死だったようだ、それで体の割に大きすぎるバッグを肩に下げていたのか・・・。


「人の子よ、まずはこの山の主の元へ行け、話はそれからだ。」

男が近づいて来てそう言った。その『人の子』にまるで自分が人間では無いと言っているかのような違和感を感じたが、もしかしてそう言う事なのだろうか?


「あ、試練があるんだったっけ。お姉ちゃん行くね。」

「試練!?試練とは何だ!?」

スーが男を睨みつける、返答次第では刀を抜きかねない権幕だ。


「山の主の試練は既に終わっている。あれはお前を試しただけだ、許せ。」

「え?終わったの?」

「お前が手に入れた赤い実、『アンブロシア』がその証だ。」

え?これが?とリンダがバッグから赤い実『アンブロシア』を取り出した。


「アンブロシア」、元居た世界の神話上で、食すると不老不死を得て傷も立ちどころに治癒するという「神の食物」があったが、それと同じような物なのだろう。

これが試練を潜り抜けた証という事なのか、一体どんな試練を?


『よくぞ此処まで辿り着いた、小さき勇者よ。』


その時、サンダードラゴンが言葉を発した。いや直接頭の中に響いているのか?


『お前は、か弱き存在でありながら他人の苦難を救うべく自らの足で立ち上がり、たった一人でヒトの恐れるこの山頂を目指したことは称賛に値しよう。』

ここに居るすべての者がリンダとドラゴンを見守っている。


『道半ばにして病に倒れ地に這い蹲りながらも、決して進むことを諦めなかったその覚悟、真の勇者と呼ぶに相応しい。』

その言葉にスーが悲鳴を飲み込む、かなり危ない状況だったようだ。


『その勇気を称え褒美を遣わそう。国をも購う財宝か、誰よりも比類なき力か、望むものを云うが良い。』


「お薬のお花を下さい!みんなの病気を治す白いお花が欲しいです!」

リンダの即答にサンダードラゴンは問う。


『麓のヒトの町で蔓延する病からヒトを守りたいと云うのがお前の望みか?』

「はい!お兄ちゃんやお姉ちゃん、先生とお友達の病気を治したいです!」

リンダはまたもや即答する。


『・・・よかろう、この山中に在る薬草は全てお前の所有物としよう。この山中の生きとし生けるもの全てはお前達に危害を加える事はしない。お前が望む時、狼達に送り迎えもさせてやろう。」

そのドラゴンの言葉に男が静かに首を垂れる、了承したと云う意思表示なのだろう。


これで街のプラム熱のアウトブレイクは収束に向かうはずだ、今後の球根の収集も危険なものではなくなる。リンダとその仲間に限り許すとの事で『ヴィルトカッツェ』の面々は何時でも山中に入れる事になった。


「これでデルマお姉さん達も危ないお仕事しなくていいね。」

「・・・リンダ、お前は街を救った英雄だ。だが危ない真似はこれきりに、な。」

スーがリンダの頭を撫で優しく抱きしめる。


『勇者よ、お前の望みは叶えたが、お前の善行に対し代価が聊か低すぎよう。』

その言葉にリンダはサンダードラゴンの双眸を見上げる。


『報酬すら他人の為に成るものするとは、この力はお前にこそ相応しかろう。』

サンダードラゴンがそう言うや、リンダの体が白い光に包まれた。


「あ。」

白い光はリンダの全身からその両手に収束されて、両手の甲にドラゴンの頭部を模した文様が白く浮かび上がり、そして消え去った。


『人の子よ、我の分身を使役する事を許可しよう。最初は大きな力を呼び出すことは出来まいが、徐々に強力な分身を呼び出すことが出来よう。幾年月で我そのものの力を呼び出すまでになるか楽しみだ。』

ドラゴンを呼び出すことが出来る・・・って、まさかそれ・・・


「召喚士!それもドラゴンを召喚するサモナー!?」

アレックスもスーも驚愕する、俺も二人の驚き様に驚いた。


召喚士は幻獣と呼ばれる存在を呼び出すことが出来る者で、現実の魔物を操るビーストテイマーなどよりも遥かに希少という、と言うかほぼ伝承に伝わるだけらしい。

さらに呼び出す対象がドラゴンなどと前例がない事なのだそうだ、


そのドラゴンを呼び出せる「召喚士」にリンダが選ばれたという事だ。

邪神との闘いまでに完全体のドラゴンを呼び出すまではいかないだろうが、リンダとその周り程度を守る位は出来るのではないだろうか。


数年後と言われる邪神の復活に向けて色々と世界が動き始めたようだ。




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