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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
氷の女王とドラゴンの山

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ヴィルトカッツェ

ようやく連絡の取れたビャクゴウ収集集団「ヴィルトカッツェ」、彼らに指定された面会場所に辿り着くとそこはごく普通の酒場だった。


俺、アカツキ様、アレックスにフリッツ、4人の座るテーブルを挟んで相対するのは。年の頃30代後半位の美女と言っても問題ない女性で彼女が「ヴィルトカッツェ」の代表者だと言う。彼女の後ろには若い女の子が3名並んで立っている。

皆服装は違うが、首に赤いスカーフを巻いていた。

そうか、この赤いスカーフは『ヴィルトカッツェ』の目印なのか。仲間の女性が襲われた件での後処理で連絡が取れなかったのだろう。


「お待たせして申し訳ない、ちょっとゴタゴタしてたもんでね。」

愛想良く答えてくれたが若干警戒している風にも感じられた、こちらの依頼が本当かどうかその真意を探っているのだろう。


「無理を承知の依頼です、交渉の席に着いて頂けただけでも幸いです。」

フリッツがにこやかに返答する、こういう場では彼以上の適任はいない。


「あたしはデルマ、『ヴィルトカッツェ』の代表をやってる。」

「僕はフリッツ、こっちはアレックスとマサキです。」

俺達もデルマに挨拶を返した。


「あたしらが比較的安全に山頂付近へ行くルートは知ってるけど、そこから先、大結晶までのルートは不案内だよ?それでもいいのかい?」

「そちらのルート上で大結晶に一番近づく事の出来る場所までで結構です。」

フリッツは向こうが警戒しているであろう「ビャクゴウ」の生息地には全く興味がなく、大結晶に辿り着くことが目的なのを説明する。そして卓上に革袋を置くと。


「報酬は前払いで金貨100枚用意しています。」

デルマは大きく目を見開く、後ろの女の子も同様に大金を見て驚いている。


「・・・こんな大金を用意してるって事は本気なんだろうね。」

デルマはため息交じりにそう言うと

「解った、明日の朝案内してやるよ。」

交渉は成功だ、デルマとフリッツが握手を交わし細かい打ち合わせに入った。


────────────────────


今回はフリッツが足手纏いになるのを嫌って、街で待機する事になった。登山中に戦闘になれば逃げきれる保証はないし体力面でも登山は厳しい、無理。とフリッツ。


『山に登るからなるべく軽装で』と予備の武器より飲み水を確保するよう言われ、

俺がアレックスとアカツキ様の分の水をバッグに入れ背中に背負った。

「あんた、軽装でって言っても、武器と防具位持って行きな?」

とデルマに言われたが、普段から持ち歩いてないと答えると絶句された。


今回辿る登山ルートは野生生物や魔物との戦闘はほぼ無い、と言うか極力避ける事が出来るルートで、それを確立する為に相当な試行錯誤を繰り返してきたそうだ。


そのルートをどうにか探ろうとする輩も当然居る訳で、こっそり後を付いてこようとしたりする者が後を絶たず、今回も第三者の介入等があった場合途中で取り止めになる事もあるので了承してくれ、と念を押された。


山の麓にイグニスの街がありその境界には一本の川が流れており、街の出入り口の一つはその川を渡る橋がすぐ目前にある場所にある。その橋を渡ったあと川沿いを少し遡上した処から登山道が申し訳程度に整備されているが、この登山道は比較的危険の少ない中腹までしか続いていない。


ヴィルトカッツェの6人と俺達3人はその登山道を無視してそのまま川沿いを遡上し、しばらくして見えてきた獣道を目印に山へ分け入る事になった。

この山に棲む生物達は夜行性のものが多く、この時間帯は各々自分の巣で休んでいる事がほとんどでその間に山頂を目指すという訳だ。

ただ進むだけでは昼行性の生物の行動時間に行き当たる場所も幾つかあり、その場所の付近で周囲を観察し危険が去るまで待機するという事を何度も繰り返し、ようやく目的地へと辿り着くのだ。


山へ分け入り3時間程も過ぎた頃、先頭を進んでいたデルマが立ち止まり


「ここから真っ直ぐ行けば、ビャクゴウの採取地へと向かう。大結晶へ向かうにはここから道を逸れてこの方向に進めば最短距離になるよ、多分。」

と言った、多分というのはこの方向は未知なので谷や沢と言った障害物があるかも知れないが、そこまでは解らないので後は自分達で進んでくれ、という事だ。


普通なら沢や谷、断崖絶壁があればそこから先へは進めないが、俺には「飛翔」があるから高低差は大した障害にはなり得ない、その事は言わずこの場まで連れてきてくれた彼女らに礼を言い、アレックス、アカツキ様の3人で大結晶を目指し歩き出す。


デルマは俺達を見送ってくれていた様だが、彼女らから100m程も進んだ頃


「あんたら、ちょっと待ちな。」

彼女らが早や足で追いかけてきて後ろから声がかかった。

『なにかトラブルでも起きたかな?』

そう思い、彼女らが近づいてくる方を振り返り立ち止まると、後方で音がした。


「!?」

後ろを振り返ったところ、赤いスカーフを首に巻いた女性が5名武器を手に現れ、右手の大木脇から白いマントに白い甲冑、黒髪の美女「氷の女王」が現れた。



────────────────────


『囲まれた?』

俺とアレックスに緊張が走る、アカツキ様は面倒くさそうに欠伸をしていた。


「驚かせちまったね。ゴメンよ、実はアンタらを試してたんだ。」

デルマが申し訳なさそうにそう言う、どういう事か尋ねると。


今までも何度か山中の案内を頼まれる事があったが、ビャクゴウの採集場所に近づいたと見るや否や、約束を反故にして襲い掛かってきた奴らが居た為、依頼人を試す為に全く関係ない場所に連れてきて相手の出方を見るようにしているらしい。


「アンタらは問題ないようだから、後日改めて正しいルートを案内するよ。」

確かに途中で取り止めになる事があるとは念を押されていたし、其の想定もしていたから文句はない、これも彼女らの生きる知恵なのだと考えれば問題はない。

しかし彼女らが生きにくい世の中なのだとしたらそれはそれで別の問題になる。


「だから、マサキさん達はそんな人じゃないって言ったでしょ?マム?」

後ろから聞き覚えのある声がした、ナディアの声か!?


「お久しぶりです、マサキさん、その節はお世話になりました。」

「やぁナディア、君が頼る知人ってデルマさんだったのか。」


改めて事情を聞くと、デルマは身寄りも行き場もない女の子を集めて仕事の世話をして自分で生活できるようにこの「ヴィルトカッツェ」を立ち上げたらしい。

プラム熱で肉親を失う事が他人事ではない為、普段は酒場を切り盛りしつつ依頼があればビャクゴウの収集で収入を得ているそうだ。


『氷の女王』はその事業に賛同し、ほぼ無償で用心棒を引き受けていると言う。

俺は『氷の女王』が腰に佩く刀に目を奪われていた、どう見ても日本刀だ。

どういう経緯でこの刀この世界に来て、何故彼女が持っているのか不思議に思った。


「お前、前にも私の剣を見ていたな?」

『氷の女王』も俺があの時、あの場に居た事を認識していた様だ。日本刀の話を持ち出すと面倒事になりそうだったので、凄い切れ味の剣に驚いたという事にした。


「兄さん、ナディアも買わず、スー姐さんの美貌も無関心って・・・まさか?」

デルマの後ろに居た大柄な女性が面白そうに俺をからかってきた。

「お連れさんも色男だし、もしかしてそんな関係?」

他の子も楽しそうに詮索してくる、否定はしているが信じてくれたかは不明だ。


山を下りて街に向かう間も俺の横にはナディアがくっついていた、他の女性陣もそれを見て揶揄ってくるが、俺が危険な存在ではないと認識されてるという事だろう。


麓の川沿いに出た時『おい、マサキ。』と、アカツキ様が言うや駆け出した。

俺も思わずその後を追い、河原に飛び降りたアカツキ様の後に続き高低差5m程度を躊躇なく飛び降りる。


「え?兄さん『飛翔』持ちなのか?」

「『飛翔』って初めて見た!」


そんな声を尻目に河原で見つけたのは足を怪我して動けないでいる男の子と女の子の姿だった。




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