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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
氷の女王とドラゴンの山

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アイントラハト共和国

船は夕刻を回って「アイントラハト共和国」のドゥーレの港へ寄港した。

港へ着いて船を降り、港湾エリアから居住区へ入ると酒場や宿屋に出入りする人の群れで活気にあふれていた。


本来なら冒険者ギルドへ顔を出して食事なり宿なりを求めるところだが、今回は極秘での任務なのであえて通常の宿屋へ泊る事になった、どうせ費用は王国持ちだし。

それなりに良い宿屋を取り一階の酒場で今後の予定を確認する。


「明日の朝、朝食後にドラゴンの山の麓のイグニスの街に馬車で向かうよ。」

イグニスの街へは馬車で2時間ほどかかるようだ、俺はラガーを片手にソーセージを摘まみながらフリッツの説明に耳を傾ける。アカツキ様はこの街で作られている蒸留酒を試してもらっている、悪くない様だ。


「で、プラム熱の特効薬の原料である「ビャクゴウ」って植物があるんだけど。」

「ドラゴンの棲む山にしか無いって植物か。」

「そう、それを採取するのを生業にしてる集団がイグニスに居るんだ。」

その集団がドラゴンの山の動物、魔物の活動が少なくなる昼間に山頂まで到達できるルートを確立していて、その集団と交渉出来れば「風の大結晶」の付近まで行けるかも知れないという事だ。


一つ問題は「ビャクゴウ」の群生地と「風の大結晶」は歩いて一時間程離れた距離にあって、群生地から先は自分達だけで進まなければいけないし、「涙滴型クリスタル」に魔力を充填する時間が不明な為、帰りの道案内は期待出来ないから自分達だけで帰還する必要があるという事だ。


理想としては朝早く出発して昼前に群生地へ辿り着き、そこで採取の集団は街へ戻る、自分達は「風の大結晶」の場所へ向かう。大結晶周りは安全だという事でそこで一夜を過ごして明るくなって群生地へ戻る、その後採取の集団と再び合流し一緒に山を下る。これが一番確実で安全な方法となる。


ただ二日連続での案内を頼めるのか、そもそもが彼らが独自に開発したルートなので他人に知られるリスクを考えて案内そのものを受けて貰えない事も考えられる。


「こればかりは交渉次第だからねぇ、金銭的には幾らでも払えるんだけど。」

ここでも費用が王国持ちなのを最大限に利用するつもりらしい。

そして夕食後、フリッツはこの街に昔の知人がいるという事で別行動となった。アレックスは初めての街に来ると武器や防具で目新しいものがないか見て回るのが常で街を回ると言い、アカツキ様は街の外を見てくる、と全員別行動となった。


俺も暇つぶしに街を見て回る事にする、この港町は船員や港湾関係者が遅くまで働いている所為で日が暮れた現在でも開いている店も多い。

俺はアレックスと違って武器、防具は興味が無いので雑貨や食品と言った店を見て回る。その中で錬金術に使う品を扱っている店があり、なんとなく見ていると


「あ、これが例のプラム熱の特効薬なのか。」

そこには小瓶に入った液体が並べられており、小さな瓶にも関わらず一瓶金貨1枚の値段が付けられていた。庶民にとってはそうそう手軽に買える物ではなさそうだ。

その隣には花の蕾と球根らしきものがおいてあり、それぞれ金貨1枚と10枚の価格が付いていた。『高い!』金貨10枚と言えば村で作ったメロンの倍の値段だ。

最近金銭感覚がおかしくなっていたが、そう考えるとこの球根の価格の異常さが実感できた。


白く細長い蕾と鱗片が幾重にも重なった形状の球根、この花と球根どうも「百合」科のものの様だ。「百合」は種類によっては食用だったり、反対に毒があったりするのだが、ちょっと興味が沸いたので買ってみることにした。

カウンターの老婆に声を掛ける。


「これ一つ下さい。」

「はいよ、誰かプラム熱になったのかい?」

「いえ、ちょっと面白そうだったので。」

そう言うと店主は目を丸くし、これ金貨10枚だよ?別のものと間違えてやしないかい?そう聞いて来たが「間違ってないですよ。」と金貨を10枚差し出した。

ちょっと待ってな、と言われ待つこと数分、布製の袋に入った木製の小箱を渡された、中身はさっき選んだ球根とオガクズが入っていた。流石に金貨10枚の商品ともなるとそれなりの体裁で扱うんだな、と妙に感心した。

俺は礼を言って店を出た。


その後、今までの街や村とは違う雰囲気の港街を目的もなくふらふらと散策した。

傍から見たら田舎のお上りさんか不審人物とかに見えてしまうのかな、とか思いつつ気ままに歩いてみたが一通り歩いたと思えたので宿に戻ることにした。


「・・・あの、そこのお兄さん・・・。」

暗い路地から女の子の声がした。

周りにお兄さんと呼ばれそうなのは俺しかいなかったので

「俺?」

声の主に聞いてみたが、返事がない。と言うよりは返答に躊躇している雰囲気だ。

見ると声の主は。年の頃15~6歳といった所の訳ありな普通の女の子だった。

「・・・・・」

声を掛けたは良いがどうしていいのか解らないと言った風なので俺の方から


「お腹減ってないかい?」と聞いた、女の子は一瞬驚いた顔をした後に「ぐ~」とお腹のなる音で肯定した。彼女は自分のお腹の音に真っ赤になったが

「じゃ、着いといで。」と言うと俺の後に着いて宿の酒場へ入っていった。


目の前で一心に料理を食べる彼女はの名はナディア。

種族はドワーフだそうだ。RPG等でイメージされる姿とだいぶ違う事に驚いた。

見た感じで少し小柄で骨太な体型だと思っていたが、女性は大体こんならしい。

男性は同じく小柄だが、筋肉の質が違うのか何もしなくても筋骨逞しい体型で、鍛えだしたらそれこそ筋肉達磨の様になるのが常だと言う。


数か月前までドワーフの国「ツヴェルグ同盟国」に居住していたのだが、父親の借金の所為で両親は離婚し、母親と二人で共和国の知人を訪ねる事になったそうだ。

母親との旅の途中ひと月ほど前に母親はプラム熱に罹患し息を引き取ってしまった。父親以外に身内は居ないが戻れば借金のカタに取られてしまう彼女。

イグニスの街に居る知人を頼ってこのドゥーレまで来たが、所持金が尽きどうしようも無くなり最後の手段に出た、と。


『自分の様な境遇の子は幾らでも居る』『お金を稼ぐにはこれしか無いんだ。』と、自分に言い聞かせ一か八かで目を付けた俺に声を掛けたそうだ。


「なんで俺に声かけたの?」

ナディアは咀嚼していた料理を飲み込んで、一口リンゴジュースを飲んで答えた。

「・・・他の人と雰囲気が違って優しそうに見えたから・・・」

彼女は俺がふらふら店を見ながら散策しているのを見て、街の人間ではなく旅行者だと判断し、買い物後に店主にお礼を言うなんて変わった人だと観察していたそうだ。

お金も持ってるし、後腐れなくちゃんと対価を払ってくれると思ったという。


「解った、丁度明日イグニスに向かう所だから一緒に行こう。」

「そこまで甘えるわけには・・・私を買って呉れるだけで大丈夫です。」

え?買うってそんなつもりは全く無いんだけど・・・。


「マサキ!なんか穏やかじゃない言葉が聞こえたんだけど?」

いきなり後ろからフリッツの声が飛んできた、なんかややこしくなりそうな予感。


────────────────────────


フリッツに彼女との経緯を説明した後、ついでにナディアを買うなんて行為もしないし、最初からその積りも無いと誤解を解いた。

フリッツも行く当てがない人間に中途半端にかかわるのは良くないが、行く当てがあるのならそこまでは面倒をみても大丈夫だろうと、納得してもらえた。


そして彼女用に部屋を取り明日の朝一緒にイグニスの街へ向かう事となった。



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