ドラゴンの棲む山
マジックアカデミアから冒険者ギルドへ戻った俺達3人とアカツキ様は、ロビーのテーブルに着いて今回の依頼の内容を確認した。
「今回の依頼はこの街の冒険者で10人位ってことは国全体だと・・・。」
フリッツは情報を口にしながら考えを纏め、俺とアレックスはそれを見守る。
「騎士団からも選抜されるし50~60人規模だろうねぇ。」
「あのクリスタルって貴重品なのか?」
「んー、結構貴重だよ。用意できて精々10個じゃないかなぁ?」
「え?10個?だって選抜されたのは50人とかって・・・。」
精々10個の言葉に俺が反応すると。フリッツは笑って
「まぁ、残りは偽物だろうね。魔族に対する欺瞞情報も兼ねて。
とにかく相手の目を欺く事で成功率を上げようって魂胆だろうね。
そのうち1個でも成功すれば御の字だろうし。」
だからマサキ、君のは確実に本物だよ。とフリッツ。
「個人で最高戦力の君に偽物掴ませる無駄はしないだろうからね。」
「ただ、それも王国が君を囮にして奴らの戦力を君に集中させる策かもしれないし、魔族が残り4人全員でかかって来るのか、君を無視するのかも分からない。」
「あと奴らの襲撃とは別の問題もあるんだ、どの順番で回るか、ってね。」
ドワーフの治める「ツヴェルグ同盟国」は王国と友好国で、そんなに手間は無い。
王国と領土問題で揉めてる「シュタール帝国」は少々面倒だ、王国の依頼と言うだけで協力を仰げないかもしれない。
が、それはまだ良い。
「問題は『アイントラハト共和国』にある巨大結晶なんだ。」
フリッツは声を潜めて言った、自然と俺とアレックスも顔を近づける。
「この巨大結晶のある山にはドラゴンが棲んでるんだ。」
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そう言えば以前「神罰」を見せて貰った時に聞いた覚えがある。
サンダードラゴンと言う個体が居て、S級フルメンバーでも一撃で倒す位圧倒的な強さだとか。
そのドラゴンが棲むのがその山なのか・・・。
「ドラゴンが棲んでる所為で人の手が入らない山になってて、野生動物とか魔物の住処になってて進むだけでも一苦労なんだ。」
さらにこのドラゴン、ヒトが大挙して押し寄せて来ようモノなら遠距離から魔法攻撃して拒絶するという。以前共和国が軍隊を山に入れた途端にドラゴンの攻撃で全滅したこともあったらしい、大軍が山に入ると侵略と見なされ拒絶されるとの事だ。
しかしドラゴンも10人以下程度ならお目零しをして呉れるらしい。山中では少数で正々堂々戦う分には寛容なお方なのだとか。
「で、順番なんだけど、このドラゴンの山から回ろうと思うんだ。」
フリッツは最難関のこの山から攻略しようという。なにか秘策があるのか?
「まぁ、他のチームと一緒に山に入ってドラゴンの機嫌を損ねたくないのもある。」
それと一つ考えてる事があるからそれが上手く行くかどうかだね。どうせ3つ回らなきゃいけないなら最難関をさっさと済ませればあとが楽だよ。
フリッツの提案でフリッツとアレックス、俺とアカツキ様で行動する事になった。
あとはフリッツが準備が必要と言うので出発は数日後のフリッツ待ちとなった。
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その間、俺がいない間に問題がない様、各所に手当をしていた。
先ずは子供たちが通う学校へ行って金貨500枚を寄付金として進呈した。
学校長と教育長の二人が対応してくれたが、二人とも仰天している。
「こちらに私の教え子たちがお世話になっていますので・・・。」
ギルド謹製の「ビーストマスター」のプレートの効果は絶大でアポなし訪問したのに非常に丁寧な対応を受けた、冒険者ギルドの信用の所為なのか、アカツキ様の噂の所為なのかは判らなかったが。
「くれぐれもあの子達をよろしくお願いいたします。」
そう言って念を押し、丁度下校時間になったので子供らを呼んでもらった。
「あー!先生、久しぶりー!」
「先生!なんか凄い有名になったんだってね!」
「S級超えた『ビーストマスター』なんて格好いいじゃん!」
「ワンちゃん、元気だったー!?」
応接室の前で子供らとの久々の再開に騒いでいると、近くを通る他の生徒や教師たちも何事かと注目してくる、少々嫌らしいやり方だがこの関係性を見せつければこの子らに嫌がらせやイジメなんて出来る命知らずはいないだろう。
「よし、お前ら買い物に行くぞ。」
子供らを引き連れて街の大通りを堂々と闊歩する、子供たちにとっては以前の修学旅行の再来だ。随分懐かしんでくれている。
子供らを服屋に連れていき、店員のお姉さんにそれぞれ3着ずつ見繕って貰った。
もうこれで服装とかを揶揄われる謂れは無くなった。
その後は冒険者ギルドのロビーへと向かってテーブル3つを占有して、飲み物を注文し其々の近況報告を兼ねてこれからの俺の予定も説明した。
カウンターからギルドマスターがこちらを何事かと見ていたので丁度良い、マスターや他の冒険者にも子供らとの関係性を見せつけて、俺の不在の間子供らが問題に巻き込まれない様に注視してもらおう。
雑談してる間にケンツがアカツキ様の顔や背中をわしゃわしゃしていたが、マスターは何故かそれを見て顔を赤くしたり青くしたりしていた。
「俺が居ない間、何か困った事があったらあのおじさんに相談するんだぞ?」
そう言ってマスターを指さす、子供らがマスターに一斉に注目するとマスターはぎこちない笑みを浮かべて首を上下に振っていた、これで良し。
その後、村から馬車が迎えに来る時間になったので、子供達と馬車乗り場まで行くと、そこで雑貨屋の婆さんと再会した。送り迎えのついでに仕入れをした様だ。
「やぁ先生、元気そうと言うか、すっかり有名人になっちまったね。」
「村は変わりありませんか?」
ばあさんとも近況を少し話した、そしてついでにバッグから革袋を取り出して
「これ村のために役立ててください、俺はまた稼げますから。」
「・・・・あんたにゃ感謝してもしきれないねぇ。」
金貨500枚を手渡した、俺には全く使い道のない金だ、村の為に使って貰おう。
「先生!気を付けて行ってきてねー!」
「小さい子の面倒は心配しなくていいですよー」
「先生、お洋服ありがとうー!」
「また村にも遊びに来てねー!」
「ビーストマスター格好いい!!」
馬車の周囲には村を守る役目の狼たちが5頭ほど付いてきており、アカツキ様に挨拶をして村へ戻る馬車の後を追いかけて行った。
とりあえずこれでこの国を出るのに心残りは無くなった。
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それから二日後、フリッツの準備が出来たと連絡が入った。
これから俺とアカツキ様にフリッツ、アレックスの4人の旅が始まる。




