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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
氷の女王とドラゴンの山

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三国を回れ

ただ一体の虎獣人に対し、フルメンバーでなかったとは言えS級冒険者チームと多くの騎士団員と魔導士達が戦いを挑んで全く歯が立たなかった事実は、王国と関係各所に衝撃を与えた。


数年後に迫っているとされる邪神の復活に対し、現段階では今代の「勇者」と「ドラグーン」となり得る者の候補すら見つからず、可能性のある強者の噂すらない。


ジギスムント王国を始め世界に4大大国が存在しており、それらの王族は歴代の「勇者」の子孫であるが4つの国の王族らに血縁関係は存在しない。

「勇者」とはある日突然に「神」によって選ばれその力に目覚めるものとされており、出自や人種、性別等は「勇者」となる条件とは全く関係ないと言われている。

ただ歴代の「勇者」に共通して言えるのは、全員が博愛精神を持ち自己犠牲も厭わない人の規範となる人物であったという事だった。


神に愛され選ばれることで出現した歴代の「勇者」は、平凡な町娘が、ある時は聖職者から、またある時は辺境の村人がいきなりその強大な力を手に入れて、人族の命運を背負って邪神との戦いにその身を投じて行ったのである。


今代の「勇者」、「ドラグーン」の顕現を悠長に待っている余裕は無くなった。

各国に支部のある教団が中心となって「勇者」「ドラグーン」に関する情報をどんな些細な事でも収集し、早期発見する為の使者が各国に送られた。


──────────────────


冒険者ギルドを通じて主にS級冒険者冒険者に対し緊急招集がかかった。

王国、教団からの連名での依頼で全てにおいて最優先される依頼という事だ。


俺は朝起きてギルド内の自室からロビーに降りたところで受付嬢に声を掛けられて、招集に関する要項を記したその書面を手渡された。


『本日の正午、マジックアカデミアへ集合、か。』

詳しい内容はマジックアカデミアで知らされるそうで、詳細までは書かれていない。

ちなみにこのギルドに所属する冒険者からはフリッツとアレックス他数名に招集がかかったらしい、おれはアカツキ様と一緒に朝食を済ませ、招集場所へと向かった。


マジックアカデミアに着いてカウンターで書面を見せると、2階の会議室の様な場所へと案内された。そこはは50坪ほどのホールで正面に一段高くなった教壇の様なスペースがあり、机と椅子が30脚程後列が高くなる階段状に設置されていた。


少し早い時間だったがアレックスとフリッツを始め招集された人物9人が思い思いの前の方の席に着いていた。俺に向かって手を振るフリッツの後ろの席に座った所で、もう一人の冒険者が部屋に入って来て、全員が揃った様だ。


正面の壇上には6人の騎士団員らしき人物が並び、招集された全員が揃った事を確認すると、顔を見合わせそのうちの一人の女性騎士が前に出た。


「本日、ここに居る名の知れた冒険者に集まって貰ったのは他でもありません。」

そう口を開くと、今回の依頼の内容の説明が始まった。

この世界には「火」「風」「水」「土」の性質を持つ「四元素」と呼ばれる4つの属性があり、それぞれが混ざることで物質が構成されている。魔力の系統も「四元素」の4種類に分けられるものとされている。


そしてこの世界の各地にはそれぞれの元素の巨大な結晶体が、無尽蔵の魔力の源、その象徴として過去に邪神を封印した「勇者」に関連する場所に存在している。


アイントラハト共和国に「風」の巨大結晶が、ツヴェルグ同盟国に「火」が、シュタール帝国に「水」、ジギスムント王国の王城の円塔内に「土」が存在している。

大きさや形は若干異なるものの全長約10m幅約3m程の巨大結晶が原理は不明だが、地上数mの高さに浮いた状態でその地に屹立している。


それらの巨大結晶は周囲に自らが持つ属性の力を放出しており、付近で使用する魔法は明らかに強化され、傷付いた者を癒し心穏やかにする空間を形成しているという。


「あなた達に依頼するのはその地に赴いて、その力を収集する任務です。」

力を収集?一体どうやって?と素朴で当然の疑問が呈されると、騎士団員の一人が持っていた箱の中から透明の結晶体を取り出して、冒険者一人一人の前に置いていく。


「これは・・・涙滴型の水晶体?」

フリッツがその物体を手に取り確認する、それは長さ10cm程幅6cm程の「涙の雫」の形状の透明な物体だった。アカツキ様は匂いを嗅いだが興味なさそうだ。


「そう、それは特殊な『涙滴型クリスタル』です。それを使います。」

これを巨大結晶体の付近でその光に長時間晒し、十分に魔力が貯められる事でその属性の力を持つ結晶体に変化するという。

前回の邪神襲来の時はその戦いで怪我を負った「英雄」二人の回復に三日三晩掛かったとされているが、治療そのものはそれ程時間は掛かっておらず、消耗した魔力の回復にそれだけの時間が必要だったというのが真相なのだそうだ。


長時間かかる魔力の補充を予め行って置けば今度の戦いは有利になる、との判断で今回の依頼になったようだ。成る程、電池が切れてしまうならバッテリーを用意すれば良いという事か、そう考えたらすんなり納得がいった。


そしてこの一つのクリスタルには最大3種類の属性の力を貯める事が出来るという、1種類だけでも利用価値はあるが出来れば3種類の力を集めた方が効果は高くなる。

3か国を回る順番も、集める方法も、どういう人選で挑むかも全て冒険者次第だと。


「ちょっと質問良いか?」

冒険者の一人が声を上げ疑問を口にした。

「これって、例えばここに居る全員で一緒に回ったりしちゃダメなのか?」


確かに場所は確定してるのだから、全員一緒に行って全部のクリスタルに力を充填して回れれば、最大数の充填が手っ取り早く終わりそうだ。

「その意見はもっともだが、虎獣人のような邪魔が入る可能性が非常に高い。」

「!」

そうか、全員で行って虎獣人の仲間の待ち伏せに会えば全滅の可能性がある。

こちらにはアカツキ様が居るとは言え、前回も奴らは俺達を草原に呼び出すなんて手間も惜しまず、頭も使ってくる奴らだ油断はできない。

『我を当てにされても知らんぞ。』

・・・アカツキ様は他の冒険者を守る義理はないと一蹴する。


「ただ、大結晶の周りには魔物は近づけない。辿り着きさえすれば安全だ。」

・・・・帰りを考えなければだけどな。


出来るだけ別行動して、方法も順番も極秘で行動して的を絞らせないという事か。

そしてこの道中にかかる費用は全て王国が負担するそうだ。それは助かる。


「だから、今後もお互いに一切の相談も報告もせず極秘で行動して貰いたい。」

こうした最低限の説明が終了するとこの場は解散となった。



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