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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
最終章「闘神の顕現と究極の依り代」

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209/215

死凶招来


半蛇神の召喚に応え、各都市上空に暗黒の空間が現れた。


帝国「マッツーラ」では城壁に群がる魔物達との一進一退の攻防が繰り広げられていた。つい先日、ギガテュラノスから受けた被害が復旧したばかりの城壁だ。

これが間に合ってなかったらと考えるだけでゾッとする。


冒険者チーム「紅い陽炎」の面々も迎撃の為に城壁の上を忙しく駆け回っていた。

城壁を登って来ようとする魔物に向けて魔導士ナギの炎魔法がその顔面を焼く。焼かれた魔物は落下するが、すぐに新しい魔物が這い上がろうと迫る。

密偵リクがその魔物に対し矢を放つが、魔物の肩を掠めて矢は地面に突き刺さる。


「落ち着け!一発で倒そうとするな、確実に狙えば良いんだ。マサキさんみたいに格好よくやろうなんて思うな、あの人は別格だ。」

リーダーのユーキが声を掛ける、リクもマサキの名前を出されて苦笑いする。


「すまん、ついやっちゃうんだ。「救国の英雄」マサキさんと一緒に行動した事が数少ない自慢の種だからな。」


リクの言葉にユーキも当時を思い出す。凄腕のマルクスと言う男と一緒に行動したが、ガラの悪い言葉遣いが全然板に付いていないし、ぶっきらぼうな振舞の中、仕草の端々に自分達を心配するような行動も見受けられて変な人だとは思っていた。


それがまさか「救国の英雄」マサキが帝国に潜入する為の借りの姿だったとは、後から聞いて驚きもしたし、その行動のちぐはぐさにも納得した。

その事実が判明してからというもの、一緒に行動した事が自慢になったし、事有る毎に「あの人の様になれたら」との思いが心から離れない。


「救国の英雄」の影響力は凄まじいものがある。わずかな間一緒に行動しただけの自分達だが、それを知った他の熟練の冒険者達は駆け出しの自分達を決して粗雑に扱わなくなった。

噂話で聞く所によると、冒険者たちは『救国の英雄と比べられたんじゃ堪んねぇ』と己の行動を律していると言う事だった。実力で到底かなわなくとも、せめて品性くらいは「英雄」に近づけるのではないかと考えているらしかった。


僕たちも一人前と見られているからには、それなりの事をしなければならない。


今回の魔物の襲来にも自分達から城壁での防衛に当たらせてもらう様に頼んだ。

熟練の冒険者たちも何も言わず防衛の一端に迎えてくれた、「英雄」が護ってくれたこの街は、今度は自分たちの手で護るんだ。


その時、ふと異様な気配を感じて空を見上げると、そこには真っ黒い穴があった。

大きなモノが一つ、小さめの穴が4つ程見える。これは何なんだと思う間もなく、その穴から黒い魔物達が続々と落下してきた。


「なんだ!?あれは!?」

「魔物の増援か!?」


城壁の上はたちまち騒然となった。守備隊が王都へ向かい人数の少なくなっている今、ギリギリ保っていた均衡が、たった今破られようとしていた。



────────────────────



帝国領「シンノウ州」黒姫城


襲来した魔物と攻防中の黒姫城上空にも暗黒の穴が開くのが確認できた。


それまでの魔物との攻防はイヅナ家側が圧倒的に有利な状況だった。


元々平時の治世用の施設と言う訳ではなく、戦時の防御用の要害として建設された城である。普段使いには少々不便な面もあるが、防御に関しては本来の目的に合致し鉄壁とも言える強固さを誇っている。


そして何より強いのがサクヤ姫の操る「イヅナ」の存在だ。その特性を上手く生かし攻城側の魔物の中へ神出鬼没に現れ一方的に被害を拡大していく為、魔物側は城を攻める所では無くなっていた。いつ背後から斬られても可笑しくない状況の中、戦意を維持するのが不可能になり、城の損害は軽微に留まっている。


そんな状況の中、客人としてこの城に滞在中のフリッツが、いち早く空の黒い穴に気付いた。フリッツにとっては何度か見た状況だ、すぐさまサクヤに報告する。


「サクヤ姫!空に穴が開いた!新手の魔物が投入されます、警戒を!」

「解りました!ヒュウガ!新手の魔物の警戒をなさい!ハルナ!『炎帝朱雀』の仕上げはどうなっていますか!?」

サクヤはイヅナを操りながら周囲に指示を出す、その姿はすでに一人前の当主である。もはや剣の修行が辛いと泣いてばかりいた少女の面影は全くない。


「すでに仕上げ砥の最終段階です!完成までで2時間程かと!」

「マサキ様のお使いになる最強の神剣です!丁寧に仕上げなさい!」


フリッツがここに滞在する目的の邪神との戦いにおける「切り札」となる、マサキ専用の最強の神剣『炎帝朱雀』。その「切り札」がもうすぐ完成する。


『剣を使った事の無いマサキが扱う最強の剣、しかし一振りの刀で一体・・・?』


フリッツには間もなく完成する最強の剣『炎帝朱雀』、この刀をマサキが振るって邪神を倒す光景が全く想像できないでいた。刀の扱いに置いて達人のスーフェイでさえもこの刀一振りで邪神に立ち向かう等、不可能であるとしか思えない。


しかし、今はこれに賭けるしかない。自分はこれを持ち帰る為ここまで来たのだ。



────────────────────


ツヴェルグ同盟国「ツェントラーレ」


スーフェイが魔物を操っていたと思われる男を倒したことで、周囲から魔物の姿が見えなくなった。住人は城門が破られた後に「白百合の君」がたった一人で1000匹からの魔物を追い払い街を危機から救ってくれた事に、安堵の声を上げていた。


「しかし、邪神が倒れたわけではない。姫様が帰還するまで油断は出来ん。」

邪神が健在な限り、魔物の襲来はあると考えなければなるまい。そう考えた住人達は破損した防御施設の修復に急ピッチで取り掛かっていた。


そんな中、城壁の上で周囲を警戒していた一人の衛兵が空の異常に気付いた。


「なんじゃ?夜空の一部に星も見えん黒い部分があるじゃと?」

彼が目を凝らすと、大きな円形と小さな円形が幾つか見える。最初はなにか黒くて丸い物体が浮いてるのかと思っていたら、その部分から何かが降りてきた。


「あれは!?・・・魔物だ!魔物が空から降りて来たぞ!!」

降下する魔物を衛兵が発見し、周囲に非常事態を知らせる鐘が打ち鳴らされる。

その音に集まった人々は城壁の上から、周囲を警戒する。


空から降下した魔物は城壁から矢も魔法も届かない距離でこちらの様子を伺っているかのように、声も上げずに整然と並んでいる。その表情は一概に無表情で一切の感情が無いように見える、やはりこいつらも操られているのか?


相手が動かないなら、こちらから弓と魔法の届く場所まで行って相手に多少なりとも損害を与えよう。そう考えた人々はスーフェイと共に城外の魔法の届くまでの距離に移動し先手を取るべく、相手を伺いつつ距離を詰める。


魔物の集団のその背後の空から巨大な物体が降下してくるのが見えた。


「!?なにか落ちて来たぞ!?でかい!?」

「なんだぁ?6本足の化け物か!?」


その体高20m程、4枚の羽根を持ち6本脚の象の様な魔物は、着地するなりその身体を大地に固定し、淡い光を放ち始めるとツェントラーレ全体が大きな地揺れに襲われた。


「地揺れじゃ!建物から離れろ!」

「母なる大地が・・・再び揺れる!?神よ!」


2度目の地揺れに住民達は初回と同じく成す術もなく恐怖にその足は震え、立ち上がることが出来ずに大地に伏せる者が続出した。それを合図にしたかのように待機していた魔物達が地揺れの中、確実に一歩ずつ城壁目掛けて進んでくる。


1000匹の魔物を追い払ったスーフェイでさえ、この地揺れの中では立ち上がる事すら出来ず、城外の全く障害物の無い荒れ地の上で無防備に固まってしまい、住民達は恐怖の中迫り来る魔物達を見ている事しか出来なくなった。



────────────────────


アイントラハト共和国「イグニス」


城壁の外で魔物相手に無双を続けるアキラは上空の違和感に気付いた。


「月が欠けている!?馬鹿な?今宵は満月のはず!?」


先程までは確かに満月であったはずの紅い月の端が、丸く切り取られたかのように見えたのは月の手前に何かがあるからだとアキラはすぐに気付いた。


「なんだ?黒い・・・穴か?」

襲来した第一弾の魔物は大半を始末した。残りの魔物を確実に葬りながら上空からは目を離さない、そうこうする内にその黒い穴から巨大な物体が降下して来るのが見えた、その周囲にも黒い身体の新たな魔物が随伴して降りてきている。


巨体は降り立ったまま動こうとはしない。随伴してきた魔物達だけが一斉に街を目掛けて進んでくる。辺りに散らばる魔物の死体など存在しないと言わんばかりに完全に無視して、無表情に進む。


新手の出現にどの程度の強さかとアキラは黒い魔物に襲い掛かる。当たり所が良ければ一撃で倒せるが、大きめの個体は二撃が必要か?多少強くはなっている様だが、所詮は人狼の敵ではない。しかし、後方に陣取る巨大な魔物はどうだ?


その魔物は巨大な虎の様な体躯の高さ10m程の大きさで、頭部は人の顔、四肢や尾などはあらゆる動物を組み合わせた合成生物の様だ。魔法を使えそうな知性の在る風貌はしていない。所詮は力自慢のデカブツか?


「この魔獣さえ撃退すれば、あとは雑魚ばかりだ!」


アキラは手前の魔物は無視して、魔獣へと一気に飛び渾身の蹴りを胴に喰らわす。

分厚い肉の塊に阻まれ、骨まではダメージが届かないようだ。アキラが大地に降り立つとほぼ同時に直上から巨大な前足が振り下ろされる。アキラは余裕で躱す。


そのまま魔獣の脛に魔物を一撃で葬る右の拳を叩きこむ、が、分厚い皮の向こうの手ごたえはまるで鉄の塊を殴っているかのようだった。一向にダメージを負った様に見えない魔獣に対しアキラは、顔面ならどうだと、魔獣の脚、背を足場に頭まで飛ぶ。


魔獣の顔前に位置したアキラは人面の眉間に強力な蹴りを見舞う。しかし、その手応えは大地を蹴ったかのように感じられ、その反動で後方に大きく飛んでしまう。


その隙を逃さず、魔獣は巨大な尾の一振りで素早くアキラを叩く。空中でまともに受け身も取れずにアキラは大地の上の魔物の群れの中へ叩き付けられ、左の大腿部を骨折した。しかし、満月下の人狼はそのダメージを素早く回復し、元の五体満足な体に修復する。


アキラも魔獣も魔法を使えないパワータイプ。ならば体の大きさで遥かに勝る魔獣の方が圧倒的な状況下だが、アキラは身長で10倍以上の体格差を物ともせず大地に仁王立ちになったまま魔獣の顔を睨みつけていた。



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