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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
最終章「闘神の顕現と究極の依り代」

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207/215

邪神の断末魔


聖剣が覚醒したその力の噴出はマサキの所からもはっきりと確認できた。


『紅月様!聖剣が目覚めました!アレックスが勇者に覚醒したようです!』

『やはりあの馬鹿王子は誰からも期待されておらんかったな。』


その時、聖剣の噴出する輝きの見えた場所に巨大な魔法陣が出現し、放たれた攻撃魔法が邪神の頭部を吹き飛ばした。


「アレックスの攻撃魔法か!?蒼月!攻撃しろ!」

アレックスの攻撃に重ねて蒼月の攻撃魔法が邪神を打つ。当たった瞬間、何かが砕ける閃光と破裂音が響き、邪神の上半身が派手に弾け飛び、再生が数瞬止まる。


「!?威力が増した!?蒼月!もう一発だ!」


再び蒼月の魔法が邪神を打つが、明らかに威力が落ちたように見える。そこへアレックスが邪神に向かって飛び込み、長大な光の剣で邪神の右腕を肩から斬り飛ばす。

再び閃光と破裂音が響くと、やはり再生し始めるまでの時間が明らかに遅い。


『政樹!アレックスと交互に攻撃せよ!お互いの攻撃が干渉しておる様じゃ!!』

「アレックス!!交互に攻撃するぞ!タイミング合わせてくれ!!」

「解った!そっちの竜に合わせる!!」


政樹が蒼月に攻撃を命じ、魔法攻撃と直接攻撃を使い分けて邪神を撃つと、アレックスがタイミングを合わせて邪神に斬りつけ、その度に閃光と破裂音が響く。

両者の攻撃は確実に邪神にダメージを与え、邪神の動きが完全に止まる場面もあり、勇者とドラグーンの二人の攻撃が邪神に特効な事の証左となった。


────────────────────


「アレク兄様が勇者だったなんて・・・。」

「アレックスは『竜の加護』を持つドラグーンだったのでは?」

「兄さん、土の加護をどうやって受けたんだろう?4つ全部必要なはずなのに?」

ヴァルの言葉にアンネリーゼが驚く、勇者の条件を聞いたのは初めてなのだろう。


「・・・勇者になるには4つの加護が必要・・・。でも、今は土の加護を受けられる人は王族以外ほとんどいない・・・。・・・・あ、そうだったんだ。」


アンネリーゼが何かに思い当たり、その答えに確信する。


「あの時の夢、女神様のお導きだったんだ・・・。」




アレックスに初めての祝福を与える日の朝、アンネリーゼは不思議な夢で目覚めた。


『自分が一番信用できる騎士に、ある場所で祝福を与えなさい。』

夢の中で優しい女性の声に誘われ、指定された場所までの道順と手順も示され、祝福の言葉までも丁寧に優しく教えた貰った事を、アンネリーゼは二人に説明した。


「その時からアレク兄さんが勇者に成る事が確定していたなんて・・・。」

「『教皇様が一番信頼する者』、それがアレックスだったんですね。」

もう9年も前に勇者候補がアレックスに絞られていた事実に二人は驚いた。


「でも、その時アンがアレク兄さんに祝福を与えなかったら、今代の勇者は居なかった事になって邪神に対抗する術がなかったって事だよね?」

「そうですよね、マジックタワーで覆われて土の巨大結晶の光は封印されている様なものですから・・・。女神様のお導きが無ければ確実に破滅していた所でした。」


「・・・どうして教団は、危険を冒してまでタワーを造ろうとしたのでしょう?」

アリーシアが呟いた疑問にヴァルが反応した。


「え?タワーはマジックアカデミアから要請されて建設したって聞いてたけど?」

「いいえ、集めた巨大結晶の光の利用方法が幾つか検討され、強力な魔法を生み出す為の研究機関としてマジックアカデミアは設立されていますから、タワーの建設が先なんです。」

ヴァルとアンネマリーはお互いにお顔を見合わせた。


「それって、先にタワーの建設ありきで、後で理由が作られたって事?」

「それじゃ、まるで勇者が現れない様にタワーを造ったみたいじゃないか?」

ヴァルの言葉にアンネリーゼがアリーシアに質問する。


「アリーシアさん、それ程の危険を冒して得た成果はどの様な物なのですか?」

「・・・先程ご覧になった通り、まるで邪神に対抗出来たものではありません。」

アンネリーゼがアリーシアの答えに絶句し、ヴァルが一つの可能性を示唆する


「・・・王族以外から勇者を出さない為に、王がタワーを建設したって事かい?」

「その可能性もありますが、もしかしたらタワー建設そのものに邪神の意思が関わっている可能性すらあり得ます・・・。」

アリーシアの返答にヴァルは言葉を失った。


「まさか・・・そんな頃から?王国内に使徒が関わっていたなんて・・・。」


3人は黙り込んだまま教団本部に併設されたマジックタワーを見上げた。

最上部は街の明かりが届かず闇に溶け、天空の彼方まで届いているかの様な錯覚を覚え、ヴァルは思わず身震いした。





ドラグーンの素質を持つ「勇者」アレックスと、歴代のドラグーンを遥かに超える「龍の血族」を持ち最強の竜「応竜」を従える政樹。

二人の攻撃に晒され、防戦一方となる邪神の姿は再生の速度が目に見えて遅くなってきていた。たまに苦し紛れに放つ攻撃魔法も、白狐に弾き返されて二人は勿論、王都の城壁にすら痛痒も与える事は出来ない。


「いけるぞ!マサキ!こいつ再生が間に合ってない!」

「ああ!一気に畳みかけるぞ!アレックス!」


勇者とドラグーンの攻撃を交互に受け、ダメージを軽減していた障壁も打ち砕かれ、その身体を抉られ砕かれ、失った身体を再生させる為の邪神の生命の源も、攻撃される度に消し飛んでいく。


王都の上空をから魔物の襲来を警戒していた飛行艇「セイヴァー・マサキ・イヅナ号」のエヴァルトラウティ王女は、邪神が成す術もなく打ち砕かれる様子を固唾を飲んで見守っていたが、その両目からは涙が溢れていた。


「マサキ様・・・世界の人々を救い続け、ドラゴンまで支配下に置き、そして世界に仇成す邪神すら討ち滅ぼされようとなさるとは・・・私程度の女子が寄り添おうなどなんと甘えた考えであった事か・・・。」



地上からも邪神の最期を見届けようと、村の子供と大人たちが館の庭に出て声援を送っている。同盟国近衛騎士団も周囲を警戒しつつも視線は上空に釘付けとなる。


「いいぞー!モモタロー先生!」

「やっちゃえー!邪神なんかぶっ飛ばせー!」

「流石は俺達の先生だぜー!!」

子供達は手を叩き、飛び上がって大騒ぎする、これが俺達の先生だ!と。


「先生、あなたが村だけでなく世界を救う救世主だったとは・・・。」

「子供達の未来を護ってくださって何とお礼を言ってよいやら・・・。」


大人達も空を見上げ、村にふらりと風来坊が現れたあの日の事を思い出す。

村の仕事も率先して働き、子供達に様々な事を教え、村を襲った盗賊団も楽々と撃退し、子供達の未来を守ると旅だった男が、今それをまさに実現しようとしている。


『女神様、大地の神様、様々な神様、どうか先生を御守りください。』

大人達は自然と手を合わせ、女神だけでなくマサキの言っていた自然に在る様々な神様へ、マサキの勝利を願っていた。


────────────────────


「おお!マサキ、張り切ってるな、一方的じゃないか!」

ファルネ村へと駆け足で向かう帝国兵を率いるユーキ・オーガは、マサキ達の戦闘を遠目に見ながらマサキの勝利を確信した。


「姫様お迎えして平和になったら、メイさんとの仲取り持ってくれよな?」

邪神の封印はもうすぐだが、ファルネ村へはまだまだ距離がある。途中で魔物に遭遇する可能性もあるが、俺達なら全く問題ない。


「邪神はカタが着くがお前ら!気ぃ抜くなよ!目的地はまだ先だ!!」

帝国兵たちは鬨の声を上げて夜道をファルネ村へと駆けて行った。



────────────────────


そして遂にその時は訪れた。


蒼月の攻撃を受けた邪神の胸部にアレックスの聖剣が降り抜かれた時、今までに無く激しい破裂音が響き、その四肢と下半身を失った邪神の体の再生が完全に止まった。


今まで空中に浮いていた邪神の身体は、表面の禍々しかった艶を失い、不気味に赤黒く光っていた眼光も消え失せ、ゆっくりと大地に崩れ落ち力なく仰向けに倒れた。


「やったか!?アレックス!?」

「油断するな!邪神は最後に負け惜しみの様に復活する事を宣言するはずだ!」


そうだった、邪神は毎回封印される間際に何年後に復活すると宣言をして、人々の希望を奪い未来に不安を抱かせようとするのだ、だが所詮は負け惜しみだ。


邪神は四肢を失った身体を動かそうとするが、その力すら残っていない。

震える頭部だけが虚しくわずかに大地から浮き上がり、微かに眼光が灯る。


『・・・忌々しい人間供よ・・・これで勝利した等と思い上がるな・・・』

邪神の耳障りの悪い不快な意思が脳内に直接響き、王都の人々全てに届く。


『・・・100年・・・。』

100年?コイツは100年後に再び蘇るつもりか?前回と同じ100年、この程度しか平穏な時間を稼ぐ事が出来なかったのか?いや、被害は格段に少ない、上出来か。


『・・・100年の長きに渡り・・・貴様らを滅ぼす準備をして来たのだ・・・』

・・・・?


『・・・そして、勇者・・・ドラグーンよ・・・貴様らの弱みも調べた・・・』

・・・さっきから何を言ってるんだコイツは!?


『・・・この程度は想定内、ここから貴様らの絶望の始まりだ!!』

邪神の両目が不気味に赤く光り輝く。


『ガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』

大音量の叫び声が大気を震わせる、振動が木々を、城壁を、建物を震わせる。


「コイツ!まだやる気か!!」

「マサキ!油断するな!!」

アレックスと政樹は身構え、聖剣を構え直す。


『大厄災カタストローフェよ!!我が身を依り代とし復活せよ!!!!』


邪神の叫びに応え、其の身を横たわらせた大地に暗黒の穴が出現した。

穴からは無数の触手が湧き出でて邪神の身体を絡めとり、たちまち邪神の身体は暗黒の触手で埋め尽くされ、その身を中心とした暗黒のドームが膨れ上がった。



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