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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
最終章「闘神の顕現と究極の依り代」

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206/215

勇者覚醒


「アン・・・いや!教皇猊下そんな場所で何をしておられるか!」

「・・・ヴァレンティーン大司教、女神様へ祈りを捧げている所です。」

アンネマリーは後ろのヴァルにも振り向かずに答える。


「なにもこんな場所で祈らずとも良いではありませんか!?」

「いえ、女神様を信じるからこそ此処で祈るのです。」

「・・・それは・・・・」


ヴァルもアリーシアもその返答を否定する行動がとれなくなった。

ヴァルは真正面に見える邪神とマサキ、アレックスの攻防をみて決断する。


「・・・ならば、私も大司教としてこちらでこの戦いを見守ります。」

「!?大司教!それは成りません!あなたは次期枢機卿、さがって下さい!」


「いえ、私も女神様への信仰は誰にも負けないと自負しております。ここは引くことは出来ません・・・それにマサキさんとアレク兄さんを信じてるからね?」

ヴァルは努めて明るくそう言うと、驚くアンネマリーに微笑んだ。


「特にマサキさんは彼に任せてたら大丈夫だって思えるからね、今もドラゴンを使い魔にするなんてわけわかんない事平気でやってる不思議な人だし。」

「・・・大司教、いえヴァル兄さんも成長したんだね?」

『ヴァル兄さん』の言葉にヴァルは驚いた。


「・・・いつもは呼び捨てなのに、兄さんって呼んでくれるんだ?」

「マサキ様と一緒に行動してから、頼り無いのが無くなったみたいだから。」

アンネマリーの言葉にヴァルは苦笑しながら応える。


「でも兄さんってマサキさんとかアレク兄さんみたいな人の事言うんだろうなぁ。そう考えたら僕なんかまだまださ、ヴァル呼びで結構だよ?」

「それは比べる人が悪いわ、アリーシアさんもそう思いませんか?」

「教皇様、私の名を・・・?」

名乗る機会を伺っていた所に名を呼ばれ、驚くアリーシアにアンネマリーは


「はい、アレク兄様がヴァルのお守りに一番信頼している仲間を付けるから心配するなって言ってましたから、ああこの人なのかって。」

「・・・お守りって・・・。」

「そうでしたか、はい、あの二人は特別です。比べる事自体が間違いですわ。」

アンネマリーはアリーシアと共に笑う、ヴァルは「お守り」の言葉に落ち込んだ。


そして3人は女神の加護と、マサキ、アレックスの二人を信じて、最後までここを動かない事を決断した。


────────────────────


邪神が構えた右手がわずかに右に振れた時、その右手の魔法陣から電撃が放たれた。

「蒼月」が易々と躱したその攻撃の向かう先にアレックスが咄嗟に思い当たる。


『あの方向は、マジックタワーの辺りか!』

そう思った時には反射的に本部の建物の方に飛んでいたアレックスは、攻撃がマジックタワーの右方向の壁を掠め、その破片が落下していく先に教団本部があるのが見えた。そこにはバルコニーに立つアンネマリーとヴァル、アリーシアの姿が!


「アリーシア!!」

「え?アレックス!?」

自分の名を叫ぶアレックスの声に上空を見上げると、そこには落下してくる大小の破片とそれを追うアレックスの姿があった。


「教皇様!上から破片が!?」

「アン!下がって!?」


破片に追いついたアレックスが左手の盾と「ファルコーラスティコ」で破片を弾き飛ばし、3人への直撃は免れたもののアレックスがその勢いを殺しきれずバルコニーに落下する形になった。


「ぐっ!」

何とか右足から着地するもダメージを受けてしまい、その場に伏せるアレックス。

それでもアレックスは3人のケガを心配する。


「・・・ケガはないか?3人とも?」

「あなたがケガしてるじゃない!アレックス!治療するから動かないで!」

「アレク兄さん!なんて無茶するんですか!?」


「アレク兄様!大丈夫ですか!?」

アリーシアから治療魔法を掛けられながらアレックスは、心配するアンネマリーの、室内からの光で逆光になったその姿を見て、突然の強烈な既視感に襲われた。


『!?この光景、どこかで・・・?』


アレックスの脳内に昔の記憶が蘇ってきた。



────────────────────


  9年前


「おい、アン。一体どこに連れて行く気なんだ?」


10歳の誕生日を迎えたアンネマリーは困惑するアレックスの手を曳いて教団の奥へ向かっていた。彼女は今日から教皇になる為の勤めに入る事となり、午後からはその就任式が行われる予定となっているのだ、遊んでいる時間など無い。


「着くまで内緒よ、アレク兄様。」

アンネマリーはそう言いながら、普段は関係者以外立ち入り禁止の区画の、施錠された扉を手にした鍵で次々に開け、奥の奥へと進んでいく。


「アン。その鍵どうしたんだ?なんでそんな物持ってるんだ?」

「あら、だって今日から次期教皇様なんだもん。関係者だからいいよね?」

でも、普段は鍵の掛かった金庫に入ってるから、今じゃないと駄目なんだ。とアンネマリーはアレックスの手を引き構わず目的地の頑丈な扉を解錠する。


「わたし、これから色んな人に女神様の加護を祈って祝福するんだけど、一番最初にアレク兄様に祝福したかったの。」

「・・・わざわざこんな所に来なくても教会で良かったんじゃないか?」


関係者以外立ち入り禁止の扉を開ける鍵を勝手に拝借してまで祝福する意味がアレックスには理解できなかったが、当のアンネマリーはどこ吹く風だ。

アレックスはアンネマリーに導かれるまま、共に進み床から一段高くなった場所に留め置かれる。アンネマリーはその前のさらに一段高い場所へ立った。


「じゃあ、兄様、そこで跪いてくれる?」


不思議な光に満たされた、かなり天井が高い空間に導かれたアレックスはアンネマリーに言われるままその場に跪くと、アンネマリーは彼の前に立ち姿勢を正し大仰に恭しく言葉をかける。


「我が騎士、アレクサンダー・アルブレヒトよ、貴方に女神アンネリーゼと土の光のご加護があらんことを・・・。」


アレックスがアンネマリーを仰ぎ見ると背後からの光で逆光になった彼女の姿が、背後の「土の大結晶」の光に包まれて、これから教皇として歩む彼女自身の人生に祝福を受けているように見えた。


────────────────────


「!!!」


9年前にアンネマリーから受けた祝福の記憶が蘇ったアレックスに衝撃が疾る。

その頭頂から脊髄、尾骨まで電気とも熱とも言えない力が流れ込み、その力は全身の末端にまで及び四肢の先から凄まじい力が噴出するかのようだった。


『そうだ、あれは土の巨大結晶だったんだ!俺は4元素全ての加護を受けていた!』

アレックスがその事実を自覚すると同時に、彼は『勇者』へと覚醒した。


その瞬間、王宮の方角からアレックスを呼ぶ声が彼の脳内に響き渡る。


『勇者よ、我を手に取れ、共に邪神を討たん!』


それがワイバーンを300年間封印し続けてきた聖剣の、主を呼ぶ声であると確信したアレックスは、『ヴァル!二人をしっかり守ってろ!』と言い残し王宮へと飛ぶ。


「アレックス!?どこへ行くの!?」

「アレク兄様!」


バルコニーには未だ勇者と成れずに周囲に当たり散らす国王代理バルドリックの姿があった。その右手にはアレックスを呼ぶ剣の姿があった。


「バルドリック!その聖剣を手放せ!貴様にその資格はない!」

「貴様!アレクサンダー!臣下の分際で国王に歯向かうか!」


バルドリックは右手の聖剣の切っ先をアレックスに向けて突き出し、取れる者なら取って見ろとばかりに挑発する。その瞬間、聖剣はバルドリックを拒絶し、彼の右手に衝撃を加えその痛みにバルドリックは思わず手を放す。


「がっ!?な、聖剣が!?」


聖剣はそのままバルドリックの手を離れ直立したままアレックスの下へとゆっくりと進む。アレックスの目の前で静止したその柄を彼が右手で掴む。


その瞬間、アレックスの全身で行き場を求めていた力が噴出先を得た事で、凄まじい力がその刀身から放出された。剣から溢れ出す青白い光は10mにも及び、聖剣は新たな勇者の覚醒を歓喜の雄叫びで迎えた。



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