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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
最終章「闘神の顕現と究極の依り代」

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204/216

援軍集結


この戦いが始まってから切り伏せた魔物の数は300を優に超えたはずだ。

その数が曖昧なのは途中で数を数えるのを止めたからだ。今は目の前の魔物の侵攻を止める事が最優先なのであるが、疲労が溜まる頭と身体は言う事を聞かない。


ただ機械的に、反射的に眼前の魔物を切り伏せるブルーノ一人が戦場に立っているだけだった。他の近衛騎士団達は既に大地に伏していた。死んでいる訳ではない、魔物から受けたダメージで動けないモノ、疲労で立ち上がれない者、幸いな事に魔物はその者たちを無視して、王都中央を目指していく。


「曾爺ちゃん、1000匹倒したって絶対うそだろ!?盛ってるよな確実に!?」


ブルーノは絶望の中で、偉大な英雄の曽祖父の伝説に悪態をついている。


ああ、もう駄目か?ずっと会えないうちに更に美しくなったと言うクラウディア姉ちゃんの姿も見れずにここで終わるのか?俺がここで死んだら姉ちゃん泣いてくれるかな?「救世の英雄」にフラれた時の方が泣いたりするのかな?


働かない頭の中でそんな事を考えていた時、後ろから大音声が聞こえてきた。


「お前ら全員、その場に伏せろおおおおおおおおおお!!』


驚いたブルーノが後ろを振り向くと。王宮へ続く大通りを「何か」がこちらに向かって魔物をなぎ倒しながら向かってくるところだった。慌てて言われた通りに地面に伏せると、地上から2m程度の高度を巨大な質量が通り過ぎながら魔物を粉砕し、ブルーノはその返り血を浴びながらその巨大質量を目で追った。


『なんだ!?船が飛んでる!?魔物をなぎ倒したのはアレか!?』


その船は城壁に突っ込んでいくかと見えたが、その手前で急激に上昇して邪神との戦いの場に自ら飛び込んでいった。


エヴァルトラウティ王女の乗った「セイヴァー・マサキ・イヅナ号」の参戦だった。


────────────────────


「魔導砲!撃てぇぇぇ!」


いきなり飛び込んできた飛行艇が王女の号令の下、後部デッキに搭載された魔導砲を放ち、邪神の胸元に穴を開けた。が、それも瞬く間に修復されてしまう。


政樹は魔導砲を撃った飛行艇の甲板に王女が乗っているのを確認、王女の方も政樹の姿を確認した。フリッツが言っていた、王女は失恋のショックで落ち込み、武器調達の件で全面的な協力は仰げないかも知れない、と。


しかし政樹に満面の笑みで手を振る王女はそんな風には全く見えない。


「マサキ様!同盟国の国民一同より供出された武具の数々御持ち致しました!」

「!!ありがとうございます!でん・・姫様!!助かりました!!」


そうか、同盟国の国民が武器を分けてくれたのか!みんなに改めて礼言わないと・・・。政樹がそう思った時、邪神が飛行艇に向けて魔法を撃つ気配を感じ


「蒼月!撃たせるな!」

蒼月が放った電撃を顔面に受けた邪神の動きが止まり、再生が始まる。


「マサキ様!そのドラゴンは一体!?」

「あ!コイツは俺の使い魔みたいなモノです!味方ですのでご心配なく!」

王女の問いに政樹が返した答えに


『ドラゴンが使い魔!?そんな馬鹿な!?・・・いや、彼のお方ならば出来ても不思議ではないのか?彼のお方も空を舞っておられるし、流石は英雄で居られる!』


そのドラゴンの圧倒的な攻撃力に対し、飛行艇の魔導砲は大きく見劣りする事を知った王女は、この場は政樹とドラゴンに任せ自分は別の任に就く事を即断する。


「これより村人の護衛に就きます!村人たちはいずれへ!?」

「ならば姫様!俺の使い魔に案内させます!いけ「桜」!」

政樹が指示するや、「桜」が「セイヴァー・マサキ・イヅナ号」の甲板に降り立ち、王女に身振りで村人たちの場所を指し示す。王女にはその美女に見覚えがあった。


『この美女は三国会談の時の!?使い魔?使い魔であったのか!?』

あの時はいきなり騒ぎが起きて、政樹がこの美女に抱き着き、その政樹に美女達が群がり、どこからか現れた美女が政樹を小脇に抱えて拉致していったが・・・。


『何故、マサキ様の周りにはこれ程美女が群がるのじゃ!?』


そうか、ただの使い魔であったか。マサキ様はこのような獣の耳の格好がお好きなのかと思っておったが、違っておったのか。折角名工に造らせた獣耳であるが、着ける機会はなさそうじゃな。・・・と、それより今は救助が先じゃ!


王女は「桜」の指さす方へと「セイヴァー・マサキ・イヅナ号」を向かわせた。


────────────────────


王都内の通りを低空飛行する飛行艇には対魔物の集団に対抗する為に新装備が装着されていた。4脚の降着装置の前脚部分に船体とほぼ同じ幅の長大なブレードを取り付けた、魔物を根こそぎ刈り取る事を目的とした無慈悲で凶悪な装備である。


飛行艇の武装は魔導砲しかないが、これは普通の魔物には威力が大き過ぎる上、集団に対してはあまり効果がない。そこで考案されたのが、この巨大ブレードだ。

雑草を鎌で刈り取るように無造作に、無慈悲に魔物を刈り取って行き王都に侵入した魔物の半分以上を刈り取る事に成功した。


魔物を薙ぎ払った後に、武器が無い為に物陰から様子を伺っていた王国騎士団員達が通りに出てくる。それを確認した飛行艇はその場に着陸し彼らに声を掛ける。


「お前ら武器が無いんじゃろ?武器を持ってきた、使え!」

「おお!有難い!しかし何故アンタらがこんなことを?」

「ワシらはマサキに助けられたからな、あの男の依頼を断る事は断じて無い!」

飛行艇から大量の武器が搬出され、王国騎士団員がやっと戦える体面を保った。


「すまん!何と礼を言っていいやら・・・。」

「礼ならマサキに言ってくれ、俺達はマサキの依頼に応えただけだからな?」



────────────────────


西の港にも1隻の飛行艇が到着していた。港の脅威となっている電撃を発する魔物を魔導砲で仕留めようとするが、動きが早く海に潜ったりもする為、手古摺っていた。

この港の中には4匹はいる様だ。内、1匹は何とか斃せた。


「くそ!何と狙いづらい奴じゃ!?10発撃って1匹しか仕留められんとは!?」

「こいつを何とかしないと、ここから魔物が上陸してしまうぞ!?」


この港だけは例え武器があろうが、多くの兵士が居ようが、迂闊に近づく事すらできず、魔物の上陸を防ぐのは難しい、おまけにここからだと王宮は目と鼻の先だ。


同盟国と王国の騎士団達が打つ手もなく気ばかりが焦る状況で、港に侵入しようとする数隻の揚陸艇の存在に気付いた、その先頭の船上には10人程の戦士達が見える。


「ほう、こんな海にギュムノートスか。邪魔だ、排除するぞ!」

「了解しました!」

揚陸艇の上で一斉にボウガンを構える戦士たち、装備からすると帝国兵の様だ。


「目標!一番手前のギュムノートス。放て!」

掛け声に合わせて帝国兵たちは構えたボウガンを一斉に放ち、数本の矢がギュムノートスの頭部に刺さった。ただそれだけで魔物に深刻な痛打を与えきれていない。


「次!中央のギュムノートス、放て!」

2匹目の魔物にも矢が頭部に3本刺さる、が、痛みを感じているの定かではない。


「最後だ、放て!」

3匹全ての頭部に矢が刺さるが、刺さった当人にその意識があるのかすら怪しい。


「よし、入港する!浮いてる魔物が襲ってこないかだけに注意してろよ?」


ギュムノートスを無視して入港する帝国船団にようやく気付いたのか、ギュムノートスが再び電撃を放った瞬間、3匹の魔物は体を硬直させ動かなくなり、そのまま海面へと派手に水しぶきを上げて倒れこんだ。


ギュムノートスはその身体の重要な器官、脳から腸までの全てをその頭部内に収め、胴体の大半を発電細胞が占める事で高電圧の電撃を放つことが出来る。

体の表面を覆う絶縁体の皮膚で自身を感電から護っているのだが、金属製の矢が絶縁体の皮膚を貫いて頭部に刺さると、自らの電気で感電してしまうのだ。


この性質を熟知している帝国民にとってはギュムノートスは大した脅威ではない。

其の身は脂分が強いうえに不味く、食用にすらならない為敬遠されがちだが、この電機を放つ性質を利用した狩りをする漁民も少なからず居た。


『ついでだ!立ちはだかる魔物は全て排除しろ!皇弟殿下の露払いだ!』そう言い放つユーキ・オーガに率いられ、帝国兵約1500名が王国の地に上陸した。


「1番から15番隊!全て片付けたら王都内を突っ切って、姫様救出に向かう!」


『残りはこの場を確保、巨大船の到着まで死守しろ!』

脅威の無くなった港湾部に残された水棲の魔物達を屠りながら、帝国兵達は鬨の声で応えた。


────────────────────


アンファングの村人たちが天空の戦いに声援を送っていた時、クレアが気づく。


「あ、あれ、船が空を飛んでる?」

「何言ってんだ?そんなわけ・・・あ!船だ!空から船なんて、まさか!?」

「月からの船!?今度は『カグヤヒメ』かよ!?」


先生、こんな事まで予言してたのか!?子供達が大騒ぎする中、船は目の前の庭に着陸した。その船から鎧を纏った筋肉ダルマの様な兵士達数十人と一人の赤い髪の美女が降りてきた。一人のドワーフが大音声で叫ぶ。


「アンファング村の方々は居られるか!ツヴェルグ同盟国、エヴァルトラウティ王女とその旗下、近衛騎士団、マサキ様の命により護衛に参上つかまつる!」


その光景を窓から見ていた村人たちは、マサキが護衛を呼んでくれた事に驚く。


「先生、他の国からも護衛を呼んでくれたんだ!?王女様って言ったよな?」

「先生が一声かければ、他の王族でも動くんだ!?凄い!」


飛行艇は乗員を下ろすと再び空へと舞いあがり、邪神以外の魔物を倒す任に戻る。

船は一隻だけでなく、次々にやってきては護衛の兵士を下ろして空へと戻って行く。

たちまち庭は重装備に身を包んだドワーフたちで溢れ、鉄壁の布陣を組んだ。



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