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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
最終章「闘神の顕現と究極の依り代」

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201/215

政木狐


『あ・・・暁様?そのお姿は?依り代と変わってないようですが?』


『我は古に中つ国より来りて『妲己』、『玉藻の前』『政木狐』と称されてきた、正真正銘の「九尾の狐」である。今の名は『紅月』であるがな。』


白き神獣、九尾の狐はにやりと笑うと,政樹の名付けた「紅月」を名乗った。


『は!?本物の『九尾の狐』様だったんですか!!?』


政樹は長い間を共に過ごした白狐の正体に驚愕した。自分が思いつき依り代として考えた「九尾の狐」と同じだったとは何と言う偶然なのだろうか?


『偶然ではない。お主が稲荷神社を思い出すよう誘導した上、お前が狐を考えた時点でこの姿をとったのだからな。』


『そういえば俺が思いついたのは、稲荷神社の神の使いの「狐」の事で、決して「九尾の狐」なんて大それたものは考えてもいなかったよな?』


「紅月」がその白い身体を震わせるようにすると、政樹とアレックスの体が様々な光に幾重にも包まれ、各種防御魔法の効果が上書きされた。


『うむ、完全に本来の力が復活したな、戦線に戻るぞ。』


そう言うや「紅月」は再び空に舞う、政樹とアレックスも白狐を追い戦線に復帰する。そこでは「蒼月」と邪神が怪獣映画の様な戦いを繰り広げていたが、そこへ「紅月」が攻撃魔法を邪神に叩きこむ。


魔法により左の腕と翼を失った邪神は空中で大きくバランスを崩す。依り代に縛られていた頃の威力に比べて遥かに強力になり、本来の力を取り戻した「紅月」様の攻撃も「蒼月」と同等以上の威力があるように見える。流石は神獣「九尾の狐」!




『俺の元居た世界の最高位の神獣「九尾の狐」と同等の力を持つ「蒼月」、「応竜」とは一体何者なのだろうか?』

そう思った時には紅月様が今までの経緯を教えてくれた。


『我とお主は一緒に元の世界からこちらの世界に「神隠し」を利用して送り込まれてきたのだ。こちらの世界の神獣「応竜」を蘇らせるのが目的の一つだ。』


ただ、転移の際に政樹に一切の負担を掛けぬよう政木狐の霊力を使って守っていた所、思いの外霊力を消耗し、本来の体とその目的を見失ったと言う。それでも本能で「応竜」の神殿に向かい、消滅しかけた「応竜」の魂を己が胎に取り込む事だけは忘れず、回復もかねて神殿で時が来るのを待っていたそうだ。


曲亭馬琴著「南総里見八犬伝」に登場する「九尾の狐」、政木狐は多くの人を救い積んだ徳によって、自らが「狐竜」となって天に上り、新たな龍へと転生するとされている。政樹と行動を共にしたのはこの徳を積むためだったのである。


この「狐竜」となる為に必要な徳を全て「応竜」の魂に注ぎ込み、消えかかった「応竜」を再び竜へと転生させる事に成功したのが今のこの状況らしい。


そして「応竜」の成長の為に政樹の「霊力」を「紅月」を通じて与えた結果、再生する「応竜」の核は政樹の分身とも言えるモノとなり、「応竜」にとって政樹は親同然の存在となっているのだと言う。


『政樹よ、お主は竜の力を借りるだけの「竜の加護」ではなく、龍の力を全てを使役する事の出来る「龍の血族」を持つ。個人としての戦力は勇者、ドラグーンを遥かに凌ごう、勇者覚醒まで時間を稼ぐぞ。』


『はい!「蒼月」!反撃する暇を与えるな!』


紅月の言葉に政樹は「蒼月」に攻撃を指示する事で応える。育ての親とも言える政樹の指示に「蒼月」はその思いに応えるべく、魔法をぶっ放す。


「蒼月」の魔法は避ける邪神の右足から尻尾までを蒸発させ、遠くの山肌を灼いた。


『威力が有りすぎる位だな、撃つ方向は考えて撃たないと・・・。』


政樹は思う、これが人や動物に当たれば一溜りもない、「蒼月」に他の生物を巻き込まぬよう指示を出すと、「蒼月」はそれを理解し邪神の背後に何もない場所で魔法を撃つように心がけ、無理な場合は直接攻撃に切り替える。


『・・・見た目ほど損害を与えて居らぬようじゃの、どうやら奴の周囲に威力を減衰させる障壁があるようじゃ。それを何とかせねば・・・。』


優勢に押しているように見えるこの状況下でも白狐は冷静に分析していた。



────────────────────


遂に始まった邪神との戦いに、この状況を待ち焦がれていたはずの国王代理バルドリックは困惑していた。邪神が出現した直後、城壁の上に居たドラグーンたるアレックスは右手に構えた剣が光り輝き、奴は空に舞い邪神との戦いに突入している。


それに対し、勇者たる自分は「勇者の鎧」も「聖剣」も何の反応を見せずに沈黙しているのだ。これはどうした事かと周囲の魔導士とマジックアカデミアの職員が右往左往している。


「おい!貴様達!これは一体どういう事なのだ!?勇者に覚醒せんではないか!?」

ドラグーンは既に空中を飛び回り、邪神に痛手を負わせていると言うのに。自分には一向に覚醒の兆候すら認められないとは?


その時、現場で戦っていた王国騎士団の一人が王都の戦況を報告に王宮のバルコニーのバルドリックの元に駆け込んできた。息を整える暇もなく、国王に向かい


「申し上げ・・・ます!・・・西の・・・港湾守備隊・・・半壊・・・巨大な魔物の魔法により・・・海上は封鎖されております!」

更に続いて別方面の騎士団員も駆け込んできた。


「申し上げます!南門での戦闘は武器の消耗により、防戦一方となっております!至急援軍を請うとのブルーノ近衛団長の要請です!」


武器の損耗により、まともに戦えない南門の隊は「アレス-シュナイデン」の持ち主ブルーノが単身跳ね橋の上で敵を切り伏せ続けており、それも何時まで持つかという状況に追い込まれているとの報告が上がってきた。


バルドリックは思いもよらなかった苦戦の状況に、勇者に覚醒できない焦りも加わり、混乱し周囲に当たり散らした。


「ええい!何をしておるか!?このままでは城門が破られてしまう!至急援軍を南門と西の港に回して防衛せよ!私が勇者になる時間を稼ぐのだ!!早くせよ!この無能共が!!」


普段からの傲慢な態度に内心辟易していた周囲の者たちは、邪神が復活し危機的状況にある中でのこの国王代理の罵倒に、わずかにあった忠誠心も霧散した。


「・・・承知いたしました!只今より我らも支給された武器にて、援軍に向かいます!国王陛下、ご武運を!」


この惨状は勇者である自分の栄誉の事しか考えないどこかの愚か者の無策から来るものなのに、当のご本人は全く無自覚と来ている!喉まで出かかった『ふざけるな!』との言葉を無理やり飲み込んで王の周囲の騎士団員が迎撃に向かった。



何故?何故私が勇者に成れないのだ!?土以外の3つの属性の加護、あれが足りないのか?いや、クリスタルは一番優秀なもので間違いないはずだ。まさか、属性の加護は現地へ直接受けに行かなければならぬとでも言うのか!?


そんな馬鹿な話があるか!?王族たる私がわざわざ巨大結晶の元まで向かうなど出来るわけが無かろう!?そんな事が出来るのは暇を持て余す一般人しかできまい!?


「なんだ!?一体何が足りないと言うのだ!貴様達、答えよ!」


「品性」と「優れた人格」を大して持ち合わせぬ傲慢な国王は、周囲に怒鳴り散らしてはわずかに残っていた「品性」、「優れた人格」をも自ら手放していることに全く気付いていなかった。


政樹の積み上げた徳と比べれば、この男の徳など塵芥に等しいだろう。



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