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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
暁の邂逅

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マジックアカデミア

「あれ?マサキは魔法使えないの?」

ギルドの隣の酒場で夕食を摂っているときにフリッツにそう尋ねられた。


「使った事がないと言うか、どうやれば使えるんだ?」

言われてみれば魔法なんて自分が使えるかどうかなんて考えたことすら無い。

フリッツもアレックスも意外そうに俺の顔を見、お互いの顔を見合わせた。


「一応魔法適正は調べてるんだよね?」

「・・・なんだそれ?」

再び二人がお互いの顔を見合わせる、かなり非常識な事を言った様だ。


「大体皆、成人前にマジックアカデミアで適性を調べるのが普通なんだ。」

フリッツの良いところの一つは、俺が非常識な事を言っても呆れたり蔑んだりせず、単純に知らないだけだと考えてその知識を補足してくれるところだ


「魔法の適性があるのに全く関係ない職に就いたりしたら国家的損失だからね。」

魔法の適性があれば適正に相応しい職を王国が斡旋してくれる制度があるらしい。

特に攻撃魔法や回復魔法と言った邪神との戦いにおいて有用な人材は好待遇で魔法師団に登用される事になっているそうだ。


しかし俺はビーストテイマーとして活動してるから関係ないよね、と考えてたらフリッツからその考えを訂正された。


「使い魔が主力と言っても、援護とか回復が出来るに越したことはないよ?」

言われてみればその通りだ、どんな道具も使い様だが道具がなければ意味がない。

俺はフリッツに勧められるまま、マジックアカデミアに行くことにした。


「アレックス、君も一緒に行かないかい?」

「俺はアカデミア関連で先約があるからそっちに行くよ。すまんな。」」

フリッツがアレックスを誘ったが約束を優先して断られた。

なんか魔法適正に興味津々と言ったフリッツだが、こいつはそんな暇なのか?



────────────────────────


今まで利用したことのある「冒険者ギルド」や「錬金術ギルド」と同様に「魔術師ギルド」も存在するそうだが、これらは互助会のようなもので民間で運営されている。それに対してマジックアカデミアは王国が運営する王立組織なのだと言う。


それ故なのだろうがマジックアカデミアの建物は、今まで見たことのある冒険者ギルドや錬金術ギルドの建物とは全く違ってかなり大規模かつ立派な建築物だった。


建坪1000坪程もありそうな3階層からなる建屋は1階が魔法の研究施設で2階、3階が関係者の寮となっており彼らはほぼこの建屋に籠った状態で研究に明け暮れているそうだ。


マジックアカデミアでは魔法適正のある者を早期発見する意味でも、適性検査等は誰でも無料で受けられる。貧困に苦しむ家庭の幼子が魔法適正を認められて、家族の生活を保障されたうえ本人は王国魔導士団に入団等の一発逆転もあり得るという。


俺はフリッツに連れられてマジックアカデミアの門を叩く、アカツキ様は面倒事を避けるためにも別行動をとった為二人きりだ。

受付の女性職員に魔法適正の検査を受けたい旨を伝えると早速フリッツ共々検査室に案内された。


そこは10畳程の部屋で中に入った時の第一印象は「学校の教室っぽいな。」だった。

黒板の位置にそれっぽい大きなパネルがあり、その手前に教壇の様な台まであるし、部屋の中央には一脚だけ割と立派な椅子が据え付けられている。これはあれだ、教師と生徒が教室で一対一で相対しているような状況と言えば非常に解り易い。


俺はその椅子に座らせられ、職員が教壇でなにやら操作をすると椅子を中心とした床に魔法陣が現れ、少しすると正面のパネルに文字や文様が映し出された。

パネルの情報を見つめていた職員とフリッツがやがて驚愕の表情を浮かべた。


「マサキ!君、『飛翔』の魔法が使えるよ!」


「飛翔」、「フライ」とも呼ばれる魔法でその名の通り飛ぶ事が出来る魔法だ。

なんでもこの魔法の持ち主は1万人に1人とも言われている希少な存在らしい。


「飛翔」が使えれば長距離を短時間で移動出来たり、戦闘においても相手の頭上を取ったり一瞬で間合いを詰めたりと戦闘職に相性抜群な魔法だという。


「あ・・・でも、魔力の放出量がかなり少ないみたいですね。」

「あ、ホントだ。魔力総量はそこそこあるのに放出量が少ないのか・・・。」


と、二人とも声のトーンがあからさまに下がった。さっきの熱量が霧散した様だ。


なんでも俺は魔力を放出する事が不得手で折角の「飛翔」も「飛ぶ」のではなく、「浮遊」と言った方が良い程度の事しかできない様だ。これは魔法の初心者によくあることらしく、使っているうちに段々放出量が増えて行くこともあるので、諦めず精進していくしかないという。


「飛ぶ」のではなく「浮遊」か、まぁ正直少し高所恐怖症気味な俺からしたら、そっちの方がありがたい気もする、空を自由に飛び回るって考えたら恐ろしくないか?

第一俺自身に戦闘力なんて全くない、しかし「浮遊」があれば地形の高低差が障害にならないのは結構凄くないか?いや、とんでもなく使い勝手がいいぞ。


ちなみに他の「攻撃魔法」や「回復魔法」と言った魔法に適性は皆無だった。



────────────────────────



街から馬車で1時間ほどの原野に10人の魔導士の卵の一行が到着した。

彼らはマジックアカデミア所属の学生で、近日中に王都で行われる実技試験の対策として実技の訓練を行う場所にこの原野を選んでやって来た。


そしてその護衛として数少ないS級冒険者が4人が同行していた。

盾役のフォルカー、アタッカーのクラウス、密偵のミハエル、魔導士のアリーシア。

彼らは元S級チーム「天空の審判者」のメンバーであり、とある事情でチームの解散後には各々個人で得意分野で活動をしている。

今日は現在マジックアカデミアの教官となったアリーシアの依頼でこの護衛任務を受け、久しぶりに懐かしい顔ぶれが4人揃ったところだ、そしてもう一人。


「お、来たね。流石時間通りだ。」

ミハエルが目ざとくこちらへ近付いてくる1台の馬車を発見した。

4人の元へ到着した一台の馬車から、3人の習い魔導士とアレックスが降りてきた。


「アレックス、依頼を受けてくれてありがとう。」

「よう、元気そうだなアレックス。」

「・・・・・・・・・。」

「フリッツと一緒に後進の育成してるんだってね、君達らしいな。」

それぞれ久し振りに会うアレックスに声をかける、無言なのはフォルカーだ。


「おい、フォルカーまだ昔の事、根に持ってんのかよ??」

「いい加減に意地を張るの止めなよね。」

「・・・・男同士で抉れたら女より面倒って本当なのね。」

フォルカー以外の3人は呆れたように無言の盾役に言葉を投げかける。


「男同志掴み合いの喧嘩した後は綺麗さっぱり水に流すのが普通だろ?」

「いや、フォルカーが一方的に殴り掛かってアレックスが全ていなしただけだよ。」

「ああ、役割が逆じゃねぇか馬鹿野郎って皆で止めたんだっけか。」

「ぐだぐだやってたからアリーシアが文字通り雷落としたんだよね。」

「そうそう、フルプレートのフォルカーが一歩間違ってたら死んでたよな。」

クラウスとミハエルの会話に明後日の方を向くフォルカー、苦笑いのアレックス。


「結局、まだ仲直りする気は無いって事だな。」

フォルカーより軽装の甲冑にツヴァイハンダー装備のクラウスが剣を改める。


「まぁ、今日中に少し改善出来たら御の字だね。」

革鎧のミハエルは革手袋を付け心地を確認しながら体を動かす。


「・・・・・・・。」

フォルカーは無言で傍らに立てかけて置いた愛用の盾を装備する。


「じゃあ、皆さん今から開始します。班に分かれて進んで下さい。」

アリーシアが見習い魔導士達に訓練開始を告げてアレックスに視線を送る、アレックスも無言でアリーシアに返しつつ己の装備を確かめた。



見習い魔導士達は他に人のいないこの原野でそれぞれ制限なしに魔法を使用し、己の魔法の威力や精度を確認していく。思った通りの結果が出ない場合は、納得の行くまで魔法を繰り返し修練する、あちこちでその魔法陣のエフェクトが光る。


「さて、ちょっと獲物を探してきますかね。」

ミハエルがそう言うや、たちまち中空に飛び上がる。ミハエルは数少ない「飛翔」の魔法の持ち主であり、この魔法のお蔭でS級冒険者の地位を確立したのである。

彼は地上から20m程で停止し、周りを見回した後に前方へと「飛翔」していった。


この辺りは初心者が狩るのに丁度良い魔物もおり、見習い魔導士達の魔法の的に良さげな獲物を探してミハエルは空を駆ける。しかし生憎と獲物が見つからない。


「んー、獲物がいないな。この辺りで討伐依頼が出る事は少ないんだけど。」

しばらく索敵していたミハエルの目にあるものが映った。



「そろそろ魔物を的にしたいんだけど、ミハエル遅いわね。」

アリーシアはミハエルの向かった方向を見上げ、アレックスに語り掛ける。

「確かに遅いな、何かトラブルでもあったか?」

アレックスの視力は良い、その彼の目に映らない程ミハエルは移動しているようだ。

しかしこの原野でそんな遠くまで獲物が居ないとは考えにくい。


しばらく待っているとアレックスの目にこちらへ向かってくるミハエルの姿が映る。

いつもの索敵の時と違って速度が速いようだ、なにかトラブル発生か?

そしてミハエルが彼を待つ仲間の元へ降り立った。


「ちょっとおかしいんだ、獲物がほとんどいないんだ。」

この広大な原野で獲物が居ない?普段なら狼や水牛系の魔物がいて、人間の生活域からかなり離れているので討伐依頼などほとんで出ない地域なのだが。ウサギや鳥などの小動物はいるものの的に出来る大き目の生物が見当たらないと言う。


「で、これ見てよ。」

ミハエルはバッグから大小様々な魔石を取り出す、全部で20個ほどもあるか。


「魔物の骨と一緒に残ってたんだ。」

そのミハエルの言葉にアレックスたちはお互い顔を見合わせる。冒険者が倒したのなら魔石を回収しないはずがない。魔石と骨が残っていたと言う事は肉食獣の群れや大型の魔物に捕食されたということか?


しかしその捕食者の姿も見当たらないとは、獲物を食い尽くして移動したのか?

これだけの獲物を喰らう程の捕食者・・・。S級の面々にも心当たりは無かった。



────────────────────────



『おい、マサキ、お主は何をしているのだ?』

『あ、おかえりなさい。』

アカツキ様が宿の部屋に帰って来た時、俺は宙に浮かぶ練習をしていた。

部屋の中で練習をしているのは皆に見られたら恥ずかしいからである。何しろ「飛翔」と言えば聞こえは良いが実際は「浮遊」程度で本当に浮かぶだけだからだ。


これも俺の魔力放出が弱いかららしいが、練習次第で放出が強くなるかもしれないとフリッツから聞いた故、地道な努力をする必要があるのだ。

「浮遊」してみて解ったのは、魔法を使うと体が非常に軽くなり浮いた状態が維持され、どこぞへ移動するときに魔力の放出が必要になるという事の様だ。

試しに移動を試みると幾ら頑張っても現状は歩く位か駆け足程度の速度しか出ない。

しかも俺の魔力量では長くて10分程で落下してしまう。


床を蹴ったり壁を押したりすればその分魔力の消費を抑えられるのだが、方向転換と浮遊の維持には魔力が必要となり、空中に居る間に魔力が切れれば即落下だ。

現状では魔力切れでの落下の危険性があり、うかつに使えない魔法となっている。

それを常用できるようにするにはこの様な地道な努力が必要なのだ。


しかし、この魔法を思うままに使いこなせる人間って要るんだろうか?

もし、いるのなら是非ともコツをご教授願いたい。




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