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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
暁の邂逅

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侵攻

マサキと子供たちが街を満喫していた頃、王国のとある森で。


────────────────────────


「この洞窟の中に反応があります。」


深い森を抜けた先の岩山の麓で発見された洞窟の入り口付近では、100名程の王国騎士団達に身辺を警護されたローブ姿の5人の人物が洞窟の内部を伺っている。

その身に纏われるローブは胸部から肩にかけて複雑な文様が施されており、一見してその者たちが只者ではない気すら纏っている、所謂高位の魔導士達だ。

洞窟の入り口は高さ10m、幅3m程の岩の裂け目の様になっていた。


「なんの変哲もない洞窟の様に見えますが・・・?」

5人の内比較的若く見える男が訝しげに感じた事を口にした。


「入り口から少し入った所で結界が張られております。さ、中へ。」


5人の屈強な騎士団員が先導し5人の魔導士がそれに続く、その周りを囲むように10人の騎士団員が洞窟の内部へと進む。他の騎士団員は洞窟前で不測の事態に対処するために周りを警戒し待機している。


つい先日、この辺りを訪れた冒険者がこの入り口を発見し内部を探索したとところ、只ならぬ空間を発見し冒険者ギルドを通じて王国騎士団に報告された。すぐに調査団が調査に訪れたものの洞窟内の現象が調査団の理解の範疇にない事象だった為、一旦封印をして過去の記録等を調べ対応策を練るという判断が下された。

その封印の為に5人の魔導士が騎士団と共に派遣されてきたのである。


魔導士の魔法による光源に照らし出される洞窟内部は不思議と足元は平坦で、歩くのに全く支障は無い。自然の洞窟にはあり得ない何かしらの力に依るものなのか。

入り口から10m程も入った頃だろうか、


「・・・う。」

「これは・・・?」

「結界を抜けたのか?」


たった今抜けた結界の内部はそれまでの空間とは全く違った表情を見せていた。

回りを照らしていた光源もその照度が落ちたように感じられる、空気の質さえもそれまでと違っている様だ。


「・・・確かに奥に何かしらの力の発生源があるようですな。」

「少し慎重に進みましょう・・・。」


回りを警戒しつつそれまでよりもゆっくりと慎重に足を進める一行。

やがて入り口から50m程も進んだ所で少し広い空間が現れた、ゴツゴツとした岩壁に囲まれた空間で人工物のようなものは一切存在していない。

魔導士達を中心に据え、騎士団員が周りの岩肌を注意深く調べていく。


「行き止まりの様ですが・・・。」

「あ・・・いや、そこの岩陰に何かあります。」


魔導士の一人が指さす方向の岩陰に隠れ、壁面に亀裂があるのが見える。


「この亀裂何かおかしいですぞ。」

「確かに、奥行きが全く感じられない?」

「まるで黒く塗りつぶしたと言うか、黒い物質で満たしたような?」


その言葉を聞いた一人の騎士がおもむろに腰の剣を抜き、そっとその亀裂へと剣を差し入れる。剣はそのまま何の抵抗もなく亀裂に吸い込まれていくが亀裂の表面から奥へ沈む剣の姿は目視が全くできない。

まるで剣が短くなってしまったかの様だ、騎士が慌てて剣を引き抜くと剣は元の姿のまま騎士の掌の中でその存在を主張している。


「この亀裂から向こうはこちらの理が通用しないようですな。」

「と言う事は、やはりこの先に『異界』があると言う事か・・・。」

「早く気付いて良かった、これ以上広がらぬ内に封印を施しましょう。」


5人の内の3人が亀裂の前に進み出て各々少しの距離を開け漆黒の空間に対峙する。

魔導士達は両手を胸の前に構え、印を結んで何やら小声で詠唱する。

1人目の魔導士の詠唱が終わると亀裂の前に白く輝く魔法陣が現れ、二人目の詠唱の終了と共に二つ目の魔法陣が重なった、その直後


「!?何か来ます!」

詠唱に加わっていない二人の魔導士の片割れが亀裂の異変に叫び声を上げた。

亀裂の奥からこちら側へ圧が加わる。


「封印を重ねて!早く!」

詠唱を追えたばかりの二人の魔導士が再び詠唱を開始する、それと同時に奥からの圧が増大し封印の一つが音を立てて弾ける様に消滅する。3人目の封印が終了し弾け飛んだ封印を補完するも再び圧が膨れ2枚目の封印が音を立てて白く輝くがギリギリで耐えた様だ。


「全員で封印を重ねるぞ!」

魔導士5人が全員で封印の重ね掛けに集中する、洞窟内の騎士団員は所持している盾を構え、魔導士達と亀裂の間に割り込んで文字通り彼らを守る盾となる。


封印が1枚増加しては1枚が弾け飛び、更に封印が追加される攻防が繰り返される。

向こうからの攻撃1回で1枚の封印が破れるかどうかの塩梅の様だ。封印は1枚増えるごとに相乗効果で強度があがる性質の為、詠唱者の多いこちらが有利か。

4枚の封印の重ね掛けに成功し、異界からの幾度目かの圧を耐えきった後に更にもう1枚の封印が施され、洞窟内に静寂が戻る。


「・・・なんとか耐えきったようですな・・・。」

魔導士の一人が冷や汗と共に安堵の声を口にする。


「あと数秒遅れていたらどうなっていた事か・・・。」

向こうの世界からこちら側へ来ようとした者が何者かは解らないが、高位の魔導士のの封印を一撃で弾き飛ばす事が出来る程の力は持っているらしい。

やはり邪神の復活を目論む異界の者の侵攻が始まっている様だ、数年後と言われている邪神の復活が早まる可能性もあり、早急に対策を立てなければならないだろう。


突然、亀裂の奥の圧が増大し音を立てて封印が1枚弾け飛んだ。


「!なんだ!?」

「封印を強化しろ!急げ!」


再び亀裂の奥からの圧が高まり洞窟内は騒然とする。魔導士達は再び封印の強化に専念し始めるが先程との違いにすぐに気づいた。


「これは!?」

「さっきと違って複数の圧が加わっている!?」


先程は単体だったのが今回は複数体の攻撃にさらされて封印が次々に消滅する。


「くっ!間に合わん!?」

「・・・各人!防御魔法!」


魔導士は封印を諦め己の身を守る為に防御魔法を唱える。


「おい!俺たちは・・・!」

騎士団員の叫び声と共に封印が全て弾け飛んだ。




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