表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

序章

タバコの煙とカフェインを摂取しても、頭が冴えなくなってきた。


度重なる仕様変更によるイライラは、体の疲労感で上書きされている。体に染みついた動作を、霧がかった思考のまま実行する。


赤字で表示されたエラーメッセージを読む。該当行を見る。


単なるタイポだったりしないかな。渡す引数を間違えてるだけじゃないかな。初期化のし忘れか?


簡単に修正できるパターンであってくれという願いは数秒で打ち砕かれた。


あきらめ、数行の文字列を書き換えていく。


「ここまでやっておけば明日には……いや、もう最後までやるか?」


止めるか続けるか、決断がつかない。先延ばしの言い訳をするように、切れたタバコを買いに行くことを選択する。


「雨降ってたのか」


ビルの外階段につながる扉を開けると、外は思ったより冷えていた。夜になって、小雨が降り出していたようだ。傘も上着も必要ない程度の雨だ。しかし、今の精神状態では、その程度の雨でも心に波を立ててしまう。


足を運ぶスピードが速くなる。踏み下ろす足が段々と力強くなっていく。踊り場を曲がり、さらに下の階へと階段を下りる。ビルの外に出ようとする。


タバコは買えなかった。


階段を下りている時、後頭部に激しい鈍痛が襲ったことを思い出した。荒い降り方をしたせいで、転んだのかもしれない。


手足に力は入らない。タバコの煙を深く吸い込んだ時よりも、何十倍も強烈に緊張がほぐれていく。同時に、体が冷めていく感覚に襲われる。


一度目覚めた意識も、自分の状況を理解した途端に薄れていく。


あきらめ、ゆっくりと目を閉じる。


幸いにも痛みはもはや感じない。薄れゆく意識の中で、後悔の言葉が湧き出ては消えていく。


「ハードディスクの中身、消しておきたかったな。」


「俺の借金ってどうなるんだろ。」


「カレー冷蔵庫に入れ忘れてたー。」


「……さっきの修正、コミットしたっけ?」


「……」


「……」


「……」


「」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ