表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

恋愛小説シリーズ

王妃が略奪愛の末に日本から連れ帰ったルームメイト

作者: 青帯


「私にはあなたしかいないわ」


 王妃マチルダは、同じベッドで眠っている青年にそっと触れた。


 夫ではない男性だ。


 王との仲は冷めきっている上に、明らかに疎まれている。

 王宮から離れたこの塔で暮らすよう命じられて何年も経つ。

 

 この塔に王が来たことは一度もないが、もう構わない。

 一緒に暮らしている青年のことを知られなくて済むのだから。


 静かに寝息を立てている青年の寝顔を見つめた。

 その可愛らしい寝顔に思わずクスリと笑う。

 40の坂を超えた自分よりずっと年下だ。


 私も昔は亜麻色の髪と緑色の瞳が美しい可憐な令嬢と噂されていた。

 この国の若き王から求婚されるほどに。

 結婚後は王の寵愛を一身に受けて幾度となく熱い夜を過ごした。

 けれど子供を授かることはなかった。


 やがて王は側室を迎えた。

 その側室との間にはすぐに子供ができた。

 側室は王に諫言を弄して、私をこの塔へと追いやった。

 それでも私に側室を悪く言う資格はない。

 なぜなら、私もこの青年を奪い取ったのだから。


 塔に追いやられて希望を無くしていたある日、不思議なことが起こった。


 突然別の世界に転移してしまったのだ。

 転移した先は、日本の首都東京の上野という街だった。


 その街でこの青年に出会った。

 一目で見ただけですっかり虜になってしまった。


 そして青年には妻がいた。

 その女性も魅力的で、幸せな夫婦であることは分かっていた。


 それなのに私は青年と夜に密会して、手を取って言った。


「お願い。私と一緒に来て」


 答えを聞くより早く、私は青年と共に元の世界に転移してしまった。


 青年は私とこちらの世界で暮らすことを余儀なくされた。


 だから後ろめたい気持ちはある。

 青年にも。

 妻の女性にも。

 そして青年を愛してやまない数多くの人たちにも。


 それでも――。


「こうやって同じ部屋で暮らす相手のことを日本ではルームメイトと言うそうね。あなたがルームメイトで私は救われているわ」


 囁きかけると青年が目を開けた。


「目が覚めたのね、飛飛(フェイフェイ)。あなたが欲しくてたまらないの」


 私は飛飛(フェイフェイ)に抱き着いた。


 もふもふ もふもふ 

 もふもふ もふもふ


 ああ。満たされるわ。


◇◇◇上野駅のある広告◇◇◇


 パンダの飛飛(フェイフェイ)(雄・8歳、人間換算年齢24歳)が行方不明です。

 奥さんパンダの眠眠(ミンミン)も寂しがっています。


 ドレス姿の王妃風の怪しい女性が夜の動物園に忍び込んでいたという目撃談があります。

 飛飛フェイフェイや王妃風の女性を見かけた方は動物園までご連絡下さい。

読んで下さってありがとうございます!


水をかぶると変身する某アニメの影響でパンダの話が書きたくなって綴られたこの物語はフィクションです。


動物園に忍び込んだりパンダを略取するのは犯罪ですので、読者の皆様は真似しないで下さいね☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ