表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/38

24話 詐欺だろあれ

体育祭当日、神が味方したのか、はたまた何者かへの恨みなのか、天気は青天、紅白に分かれ、皆グラウンドに立てられたテントの下で涼みながら、自分の出番を待っている。

「叡智ー?」

「あぁ?」

白の鉢巻きを巻き、テントの下で小型の扇風機を回し、涼んでいる叡智に話しかけたのは、前日から今か今かとこの日を待ち望んでいた藤原葵であった。

「叡智は種目なに出るんだっけ?」

「はぁ…、昨日も言ったろ?俺は借り物競走とクラス対抗リレー、あと騎馬戦。クラス対抗リレーに関してはお前と同じだろ?」

「いや~、一応叡智がなに出るのか把握しときたいな~と思って。じゃ!私100m走のほう行かなきゃだから、応援してねー」

「はいはい、頑張れよ。陸上部のエースさん」

そう言った後、葵は招集場所に走って行った。

(ほんと、元気な奴)

そう思って保冷剤を首に当てていると、後ろから声が聞こえる。

「おはようございます。神谷君」

「おはよう、日野。お前は白組ではなかったはずだが、なんでこっちにいるんだ?」

「向こうにいても暇なだけですし、それに招集場所はこっち側なのですからいいでしょう?」

「まぁ俺は一向に構わないが…」

チラッと和泉の方を見つつ、問答を繰り返していると、和泉が少し遠くのテントを見る。

「山城さん、退学処分になったらしいですよ」

「ふーん」

「興味なさげですね。あの時、鬼の仮面を付けて私たちの前に現れたあなたなら少しは興味があったと思ったのですが?」

「今更だな。それに俺がお前の言う鬼の仮面を付けたやつであるという証拠はないだろ?」

「そうですね。ですが、現状の情報を精査した結果、あなたであると確信しているので…」

そう言われた叡智は鼻で笑い、どうだろうな?と言わんばかりの顔で和泉を見た。

「やっほー!二人とも~!」

そう聞こえたとき、肩に少し日焼けした腕が回る。

「何々?なんの話?」

そう声をかけたのは浪華燎であった。まさに太陽のように眩しい笑顔を放つ彼女に心なしか気温が高くなったように感じ、背中に汗が垂れるのを感じた。

「葵が出る競技の応援しようぜって話」

「え…えぇ。そうですね。一緒に応援しましょう」

さらっと嘘をつく叡智とぎこちなく誤魔化す和泉にまったく疑いの目を向けず、信じ切っている様子だ。

「まぁ…心配する必要もなさそうだがな」

「ま…まぁ…そうだね…」

珍しく少し引きつった笑みを浮かべた燎を見て、和泉は不思議そうに首を傾げた。

「藤原さんが運動が得意とは聞いていますが、そこまでですか?」

そう言った和泉を二人はジト目で見て、世間知らずめと言うように叡智はため息をついた。

「『陸上に降り立った天使』って言えば分かるか?」

「まぁ…噂ぐらいは。藤原さんの異名でしょう?」

「それがまぁ…詐欺レベルの異名の付け方なんだよね…」

葵と同じく陸上部の燎が顔を引きつらせてそう言ったとき、アナウンスが流れ、100m走が始まった。

「ま、見てれば分かるよ」

叡智の目線の先には話の中心である藤原葵がいた。

「位置について…よーい」

パァンというピストルの音とともに一斉に選手が走り出す。レースに出てるのは12人、決勝に進めるのは各レースの一位と二位である。

だが…(そんなことはまったく関係ない。ただ、私が楽しめれば…それでいい!)

そう心の底から感じている葵は叡智らから見て一番奥を走る。

スタートダッシュにおいても他を圧倒する駆け出しで始まり、徐それ々に加速していくことで二位との差をどんどんと開かせていき、誰がどう見ても独走状態でゴールテープを切った。

その光景を見ていた日野は空いた口が塞がらないほど驚いていた。

「相変わらず名称詐欺な才能してるよね」

「なんなんですか!あれ?!」

呆れた顔をしている二人に和泉は声を上げた。

「あれが天使の名の所以。あれを見たことがないやつは容姿からそう名付けられたと思うが…実際は違う。彼女のもつ圧倒的な運動の才能、それによってあらゆるものを地獄に叩き落としてきた。まるで、裁きを与える天使のようにな…」

「ほんと…バランスブレイカーだよ。陸上部の先輩もボッキリプライドへし折られてるから…ほら」

そう言う浪華は遠い目をして、指差す先には彼女の言う陸上部の三年生の女子が無表情でうずくまっていた。


「いやー楽しかった!」

「あのな…少しは加減というものを覚えたらどうだ?流石の俺たちもちょっと引いてるぞ」

そう言う叡智の後ろでウンウンと燎と和泉が激しくうなずいていた。

「はいはい、分かったよ。まったく…君にだけは言われたくなかったんだけどね」

「あ?俺のどこが加減できてないって?」

「それで加減してるつもりなら君は穴でも空いてるよ」

「そうだな。俺の才能があまりに大きすぎるからどうやら抑えきれていないようだな~」

「じゃあ君も半人前だね!仲間じゃん」

二人はただ平然と笑顔で言い争いをしており、その場に彼らを止められるものはまったくいなかった。

「次の借り物競走に出場する選手は招集場所に集まってくださ~い」

そう声がかかり、叡智は言い争いをやめ、椅子から立つ。

「じゃあな、バーカ!」

「うるさいなー、早く行ってきなよ」

捨て台詞を吐いて去っていく叡智に葵はシッシッと手を払うような動作をに叡智に向けた。

(ほんとに…あいつがらみになると調子が狂うな…)

いらつきから自分の髪をクチャクチャと片手でしてしまい、髪の毛がぼさぼさになるが、頭を振って元に戻す。

(に…しても、面倒なことになったな)

叡智は先日のことを思い出し、ため息をつく。

(あぁそうだ)

何かを思い出したように指パッチンの形をつくる。

「お呼びでしょうか?叡智様」

「うん、まだ呼んでないよ」

いざ指を鳴らそうとするよりも先に側近、白咲夕凪が叡智の前に現れた。

「生徒会長の件でしょうか?」

「いや…また別の話だ」

「はぁ、それでは要件は何でしょうか?」

「それはだな…」

叡智の話すことに白咲は驚きを隠せず、目を見開いていた。

「これは内密に頼む。俺もできる限りの調査は行うが、お前以外に信用の足る人材はいない」

「承知いたしました、叡智様。では、本日の体育祭、頑張ってください」

「おう、お前もな」

白咲に背を向けて手を振り、叡智は自分の招集場所まで行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ