2話 間違い
家を出てしばらくかけてわたしはわたしのこれから通う高校『日茜学園』への通学最後の難関、急な上り坂をわたしは上っている。
(まぁ、わたしならこのぐらい大丈夫)と思いながら、しんどそうに上り坂を歩いている会社員と思われる人たちを横目に走って行った。
「着いた…。ここが、日茜学園。」
家を出るのに余裕を持ちすぎた結果、予定より20分程早く着いてしまい、もう少しゆっくりすればよかったとわたしは後悔しつつ、校門まで辿り着いた。
が…そこにはしっかり施錠されている校門があった。
「えっ?!なんで?!」と公共の場でありながら叫んでしまい、目を丸くしながら自分のスマホに移っている時間と校門を交互に見て、おどおどしている。
周りには同じ制服の生徒はいない。
早く出たことが裏目に出てしまったと焦りに焦っているとき、わたしは後ろから肩を叩かれた。
涙目になりながら振り返ると、そこにはわたしと同じ日茜学園の制服であるシャツの上に真っ黒なコートのようなものを着て、フードを被った男が立っていた。
「おい、大丈夫か?」とその人に話しかけられたわたしは、完全にやばい人に絡まれたと思い、わたしはその場を去ろうと咄嗟に「はっ、はい!大丈夫です!それじゃあわたしはもう行くので失礼します!」と言い、後ろへ振り返るもそこには無慈悲にも逃げ道を塞ぐように開いていない校門がそびえ立っていた。(そうだったー!?)と心の中で絶望するわたしは再び彼の方を向き、おそるおそる「あの…なにかようですか?」と尋ねた。すると、彼は被っているフードを脱いだ。
彼の身長はおよそ185㎝ぐらいといったところで、けっこうスレンダーな見た目をしている。そして、フードで隠れて見えていなかったが、眼鏡をかけており、顔立ちはしっかりとしていることが分かる。男性とのかかわりが乏しいわたしでも一般的にイケメンと言われるような見た目をしていることだけは分かった。しかし、わたしが真っ先に目についたのは彼の髪だ。驚いたことに彼の髪は真っ白になっており、それが太陽光に照らされて銀色に光っている。
そんな彼の髪に目を奪われているわたしを我に返らせるように彼は話し始めた。
「君の制服を見るに高等部の生徒だろ?」「はっ、はい!」急な質問に驚いたわたしは素っ頓狂な声で返事を返すが、それでも彼は話を続ける。「そこ、中等部の校舎だぞ。」「えっ!?」わたしは突然の情報に動揺を隠せないでいた。(えっ、えっ!?中等部!?)も
う一度門を見ると、そこにはしっかり『日茜学園中等部』と書かれていた。ボッと顔が熱くなり、赤くなるのが分かり、そんなわたしを見ても淡々と彼は話し続けていた。「高等部の生徒なら高等部の校舎はあっちだ。」彼の指さした先は未だ続く上り坂の先にある校舎だった。わたしは自分のスマホの画面を確認し、8:00の画面がみえ、坂の下の方には多くの生徒がいた。「うゎ!もう8時じゃん。行かなきゃ。じゃ!ありがとう!」と全速力で坂を走って行った。そのとき、わたしは電車の定期券を落としていった。その定期券を拾った彼は走って行くわたしを見て「藤原 葵…。以外と早く見つかったな。まっ、捜す手間が省けたのは不幸中の幸いだな。」と意味深に呟いたが、わたしはまったく聞こえていなかった。「この学園生活は、俺の思っていたより面白くなる予感がするな。革命の足音が聞こえてきたみたいだぞ…。なぁ?『日野』…。」彼の口元には、さっきまでとは裏腹に邪悪な笑みを浮かべ、日茜学園高等部の校舎を睨み付けた。そうして彼はわたしの後を追うように、日茜学園への通学路を歩き始めた。