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15話 天才

中間試験当日、ホームルームが終わり、ついにテストが始まるというとき、神谷叡智は自分の机にてただ一人、静かに佇んでいた。

「神谷君?大丈夫?」

叡智の隣、浪華なにわとその隣、葵は現在の叡智の様子を見て、声をかけたようだ。

「大丈夫だよ。そりゃ…こんだけ周りから見られてたら誰でも緊張するよね」

周りを見渡し、冗談交じりに二人に言うが、実際とんでもない人数から見られている。

それは教室内からだけではなく、教室の外、そればかりか窓の外からも見てきている。

そんな悪意に満ちた視線を浴びて、現在に至る。

叡智は人よりも視線に敏感である、それがどんな視線であっても、どれだけ小さな気配であろうとも気がつくほどである。

原因はやはりあの宣戦布告だろう、と考えている間に時間は過ぎ去って、遂にテストが始まろうとしていた。


同時刻、日野和泉もまた、自席で一人、佇んでいた。

完全無敗のお姫様、それが自分の周りからの印象である。日野自身、自分が天才だとは思っていない。現在の地位は自分の努力によるものであると自負していた。勿論、今回の実力テストも本気で挑んだ。

だが…それとは裏腹に彼女の足は何者かに引っ張られ、積み上げた屍たちとともに落とされた。

それは、日野にとって自分の人格を否定されたのと同義、何より、一位という冠を被っていなければ自分は日野和泉という人間ではなく、五摂家の一つ、日野家のご令嬢でしかなくなる、それだけは必ずや避けなくてはならない。そういったプレッシャーが日野和泉にのしかかる。

(必ず勝つ…私は…ただの人形にはならない)

彼女はそう決意し、時を待つ。


日野和泉には少なからず才能を持ち合わせている天才と呼ばれる人間である、そう神谷叡智は考えていた。

だがそれは、日茜学園という小さな世界におけるトップである。

『叡智の賢者』とは神谷叡智の二つ名である。

その名の通り、賢者のごとき知識量を持ち、それをフル活用することが出来る頭脳を持ち合わせている。

それが、神谷叡智という“世界最高峰の天才”の力の一つである。


一限目 数学

試験開始1分前、解答用紙、問題冊子が手元に配られ、皆がいまかいまかと机に向かう。

9時10分、テスト開始の合図とともに、世界中の時計の秒針が1秒を刻む。

2秒後、神谷叡智が回答欄に氏名を記入

4秒後、問題冊子を開き、問題を確認

10秒後、解いた問題の答えをあり得ない速さで解答用紙に記入

テスト開始からおよそ20秒、神谷叡智は一限目のテストを終えた


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