14話 全力で…
神谷叡智の宣戦布告事件から一週間、この日茜学園始まって類の見ない、平民による貴族への宣戦布告という大事件に関して、あらかた考察や反応など、消費されつくし、その先にある天国に学生たちは心躍っていた。
世はまさにゴールデンウィーク
新年度始まって以来の長期休みであるこのゴールデンウィークは、休息に使うのもあり、新たな出会いと親睦を深めるにもあり、とても大切な時期である。
だが…世の学生たちはこの天国の先に地獄の門が待ち受けており、この休みを勉学に使うか娯楽に使うか、この選択によって後々天地の差が生まれるのである。
そしてまたここに、ゴールデンウィークを過ごす学生がいる。
(日野和泉。2007年5月3日生まれ、血液型はAB型、貴族 日野家の長女で、家族構成は父親と兄のみ…か)椅子に座り何台ものモニターとにらめっこして、カタカタとキーボードを叩いているのは、貴族 神谷家の御曹司、神谷叡智である。
神谷別邸、自室の一角にて、神谷叡智の作業用デスクがあり、そこには日野和泉に関する情報がモニターに貼られていた。
先日の宣戦布告より、叡智は日野和泉の調査を本格的に始めていた。
神谷叡智からしてみれば、向こうから喧嘩ふっかけてきたのに、正当防衛で殴り返したと言うような状況だった。それに加え、日野家という圧力により、平民を装う自分を悪者にするのはたやすいことであっただろうと今考えてもあの作戦は感心する。
(だが…日野が俺の情報をどれだけ持っているのかは分かっていない。少なくとも情報収集能力はこっちの方が上。役所の書類も俺に関する情報はほとんど偽造している。おそらく、奴が握っているのは平民としての神谷叡智の情報のみだとすると…)
叡智は不敵な笑みを浮かべる。その姿は将に悪魔とも魔王とも言える凶悪な笑みであった。
(だが、とにかく奴との勝負に勝たないと始まらないか…)
叡智は背もたれにもたれ掛かり、天上を見上げる。
このテストにおいて、叡智に慢心はない。それは天才が相手であることとは異なる理由である。
これはまだゴールデンウィーク前のこと、日茜学園内にある大図書館で、叡智が日野家の資料を漁っていたところ、叡智の目に入ったのは、ただ一人静かに勉強している日野和泉であった。
窓の外はもう日が暮れている。部活動などでも帰宅する生徒が多くなっているのに和泉は終わるような気配すらない。
彼女にも慢心はないのだ。表面上はあんな言い方をしていたが、本当はとても悔しかったのだろう、再び実力の差を見せつけられるのが怖かったのだろう。だからこそ、あんな背伸びして、みんなに認められるよう、天才を演じているのだろう。
神谷叡智の目には彼女がそう映った。
ならば…
叡智は自分の部屋から大広間まで出てきた。
そこには課題を急いでこなしている葵がいた。
現在はゴールデンウィーク最終日、日茜学園ではゴールデンウィークに課題が出されるのだが、最終日まで課題を残していたことが叡智にバレたことにより、サボらないよう監視まで付けられ、拘束されている。
「え…叡智、助けて…一つだけでも良いから」
「断る、自分のしたことぐらい自分でかたをつけろよ」
助け船を求めた葵に叡智は自業自得だ、とあしらう。
(日野とは真反対だな…こいつは)と現在の葵を見て、叡智は感じた。
(やつに慢心はない。本気で俺を潰しに来るだろう。ならばこちらも…)
同時刻、自室にこもり、日野和泉は黙々と勉強をしている。
(彼の実力は本物、事実、私が一度負けている。例え、彼の実力が私を超えていたとしても、私は彼を…“叡智の賢者”を…)
((全力で叩き潰す))
ここに天才たちの感情が1つになった
そして無慈悲にも時は流れ、中間試験は始まる…




