1話 わたしは…
わたし、“藤原 葵”はある才能を持っている。俗にいう『天才』と呼ばれる人間であるけれども、そんなわたしにもどうにもならないことがある。それは人間関係だ…。
わたしには本当の親がいない。わたしが8歳になるぐらいに交通事故に遭い、わたしを庇って二人ともいなくなってしまった…。そのときのことをわたしは、15歳の女子高生になるという今日この日も鮮明に記憶に刻まれていた。
現在、わたしは自分の朝食を作ってる。
登校しなければならない時間が刻一刻と近づき、心が躍るような感覚が目玉焼きを焼いているわたしに電流のように走っていた。
「あら、また朝食が目玉焼きとトースト一枚なんて可哀想なことね。わたしの本日の朝食はパンケーキなのに…あなたは置いといてももらえないものね」
そのとき、わたしの後ろにある食卓からわたしが生涯嫌っている人の声が聞こえた。
一切可哀想とも思っていない声色で悠々と話し続けている彼女は、わたしが両親を亡くした後、わたしを引き取った父方の弟家族の一人娘だった。
「学校があるのに未だその積み上がったパンケーキを食べれてないのはどうかと思うけどね」
なぜわたしが彼女を毛嫌いしているのかというと、とにかくわたしに対して嫌がらせの域を超えた嫌がらせをしてくる、こんな煽りなんて生易しいものであり、こんなのに気を遣っていると精神が擦り切れると割り切っていた。
「わたしは好きで作ってるの。だからまったく問題ない。貴女こそもう少し料理すればいいんじゃない?そんな母親に出されたものばかりじゃなくてさ」
「っ…。」わたしが煽り返すと、彼女は黙ってしまい、突然彼女は大声で「ママー!葵が意地悪してきた~!」と叫んだ。
呼ばれた彼女の母親がリビングに出てきた。
「何やってるの葵!まぁ、可哀想ね…。葵!この子のことを悪く言うようならこの家を出てもらうわよ!まぁ家事には毎日来てもらうけどね」とまるでわたしが悪いように言うだけでなく、奴隷のように思っているようなことを冗談交じりに言うが、殆ど本気で思っていると感じた。
これに流石のわたしも腹が立って焼いた目玉焼きをトーストの上にのせて、黙って後ろから聞こえる怒声を振り切って自室へ転がり込み鍵をかけた。自室に入ったわたしの目の前には金色に光るトロフィーや壁に掛けられたたくさんの賞状である。
わたしの持つ才能は、『運動』の才能だ。
わたしは中学時代、陸上など様々な競技をして、全国優勝や最優秀選手賞を何回も経験しており、着いた異名は『陸上に降り立った天使』。
なぜ天使なのかはわたしにもわからない。
わたしのことを唯一応援するのはただ一人、病院で院長をしている叔父はそんなわたしの才能を唯一賞賛してくれる存在であり、したいことをさせてくれたため、おじさんには頭が上がらない。
しかし、おじさんは仕事であまり帰ってこれず、帰ってこれても夜遅く帰ってきて、早朝に出かけるため、それをいいことに叔母や従姉妹はわたしに嫌がらせを仕掛けてくる。
まぁ、そんなわけでわたしは叔母や従姉妹に「調子に乗っている!」と煙たがられているのだ。
そんな日常にため息をつきながら彼女らの視線を掻い潜って、朝食の食器を台所におき、大急ぎで自室に戻って、わたしは学校の準備を終える。
「はぁ…」今日もわたしはため息をつく。
鞄を背負って玄関の扉に手をかける。
出かけるときが一番憂鬱だ。
後ろを振り返り、「行ってきます…」とわたしは返事が来ないことも分かっていながらボソッと言って、扉を開けた。
今回が初投稿です。文章から情景が読み取りにくいと思いますが、温かい目で読んでもらえると幸いです。神薙