第12話『廊下走りの魔物達』
久々の更新だぜ!
何か面白いことないかなぁ、とか作者が考えている時にこっちは更新されるらしいです。
夜の闇さえも凌ぐほど暗い魔王城。月の光など意味もない。
魔王の力により生み出された暗黒の霧が、彼の一室に充満していた。
「フンヌッッ! ヌゥゥ!」
力強い腕っ節に任せ描かれる文字。
習字の達人でも書けないだろう文字がそこには書かれている。
黒い霧でよくは見えないがこう書いてある。
『ウ○コ』
確かに、習字の達人では書けない。
「魔王様ッ!」
「何だッ!?」
後ろに現れる魔王の部下。顔色が悪いように思える。
それもそのはず、この霧は消臭スプレー五十個を合成に錬金に合体をした状態で生み出されているのだ。
文字通り、無から有が生み出されているのである。
これが魔王の力か……。
「魔王様ッ! 大変です!」
「何!? この文字が汚いだと!?」
「確かに汚いですが――」
「死刑だッ!」
「ひぃぃぃぃ!? い、いや、書かれている文字のことですよ! 字は綺麗です!」
「何だ、そうか」
魔王は馬鹿である。
そのため世界の半分をあげちゃうような性格をしている。
「あの伝説の悪魔が交戦状態になりました!」
「ほお、今日は勇者のレベルが上がる良い日だな!」
「いえ、それが……」
「何だ?」
「戦っている相手が、勇者ではないようなのです!」
何だって!?
魔王は驚く。
それもそうだ。伝説というからにはオーラとか何とかで勇者を見極める力でも持ってそうなのに、何で見極められないんだ。
おかしい、おかしすぎる。
「クッ、すぐに援軍を向かわせろ! 勇者の姿を伝えるように、とも言っておけ!」
「ハッ!」
魔王の部屋から出て行く部下。
それを追うように部屋の外に出て行く魔王。
珍しく、向かうのはトイレではないようだった。
ゞ 勇者 ゞ
た、戦い。
そう、これは戦いだ。
……マラソン、という名の。
「はっ、はっ、はっ」
リズム良く僕の隣を走る魔物。
人の女性の形の魔物。意思もあり、魔王様と同等……それ以上の力を感じる。
いや、けれども……何か違う。
何だろう。
そうだ! 魔王様よりも頭が悪い!
何で魔王様以上の力があるのに真正面から戦ってこない。
つまり、頭が悪いッ!
「ゆ、勇者様!? あんなところに勇者様が!」
「何!?」
よし、足が止まった。
ラストスパァァァァト!!
「な、何だあのメイドの尻を追いかけているのは……」
勇者様ホントにいたァァァァァッ!!
で、でも振り向かない!
これで僕の勝ちだ!
㎎ 魔王 ㎎
「何!? 負けた、あの伝説の悪魔が……」
……ん? 待てよ。
少し思考が止まる。
書物に書いてあった伝説の悪魔は青い髪に青い瞳……死の冷気を呼び寄せる。
「……アイツ誰だ!?」
「魔王様! どうしましょう!」
「……ぐぬぬ、伝説の悪魔? が敗れた今……」
「各地で悪事を働く悪魔達を無視して魔王城に突っ込んでくるのがまず予想外でしたからね……」
「ああ、勇者なのに正義の行動をしない……なんてな」
魔王とその部下が落胆に沈んでいると部下が顔を上げる。
「四天王を召集しましょう! そして勇者討伐の命を――」
ピコピコピーン、と魔王が閃く。
「我が出向こう」
「は?」
「我が出向く!」
その日、魔王城で魔王を送る会が開かれた。
MARASON!
アーンド
魔王の字は達筆です。