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第11話『伝説の悪魔』

前回ふざけすぎたので……今回マジメに行きますか。

暗い暗い魔王城。昼間のはずだが現在魔王が居る地下には光が入ってこないのだ。

ただ魔王は暗視できるので光などたいした意味を持っていない。


「ほお、これが……」

「左様でございます」


魔王が感心する声をあげると隣に居た魔物が追従する。


「伝説の悪魔、ここに眠っていたとは」

「先日部下が――」

「いや良い。先ほど聞いた。そろそろ物語の『逆境』部分を演出しないといけないと思っていたところだ! ちょうど良い、目覚めよ伝説の悪魔よ!!」


悪魔の閉じていた瞳が開かれる。濁った赤い目をしている悪魔だ。

髪の色まで赤いのでその分不気味に感じる。魔王はさすがに恐怖を感じていない様だったが隣に居る魔王の部下らしき魔物は動じていた。


「つ、強い力だ……」

「我の言葉がわかるか?」


首をコキコキ捻ると魔王のほうを少し見つつ思考してから答える。


「訛りかと思ったがわたしが眠りすぎていただけらしい。時の流れで言葉が少しずつ変わっていったのか……。一応はわかる」

「なら良い。始めて見る顔なのだが命令だ! 勇者を討てっ!!」

「……先代魔王にも言ったはずだがな。わたしは勇者など興味は無いのだ。わたしには睡眠だけあれば良い、それで……どうした? 腹など押さえて」


魔王は少し考え言う。勿論便秘などとは言えないからだ。


「な、何でも無いさ。くくっ、ついにこの時が来たようだな」


勿論こと時とは……言わずともがな。

トイレを目指し魔王は背を向ける。それに付いていく魔王の部下。


「待てっ!」


魔王は立ち止まる。早くしろと怒鳴りたい気分なのだろう。顔に苛立ちが出ていた。


「なるほど。勇者とやらに興味が出てきた。場所を教えてくれ、わたしが出向こう」

「いきなりなんだ……。まあ良い。お前、教えてやれ」


隣に居る部下に言う。魔王はというと何故気が変わったのかと考えながらトイレに向かっていた。



Ш 勇者 Ш



すごい豪邸だ。確か情報ではこの辺りに住んでいるのは大富豪の――


「君達? 人の家に土足で踏み込むとは……盗賊か?」

「その通り!!」

「いや勇者でしょう!!」


いつの間に盗賊になってるんですか!!


「えぇ? でも前の町で盗賊に職業を変えたはずじゃあ無かったっけ?」

「捏造しないでください。あの人がこの屋敷の主でドン・ヨークさんです」

「おお、名がここまで知れ渡っているとは……いやはや感激です。それと、君達は勇者ご一行とお見受けするが……その後ろのは……」


スライムとガーゴイルとゴブリンを指差すドンさん。


「あっはっは、気にするな。目を閉じてみるんだ。ほら気にならない」

「勇者様それは違うと思います」

「じゃあ目を潰せば良いのね!」

「どっちも違うっ!!」


危険すぎるよこの人達!!

って勇者様何処に行くの!!


「メイド探しに行って来るっ!! 何、情報収集だ」

「じゃあ私は執事を探してくるとするわ!!」

「二人とも何を……行ってしまった」

「愉快な人達で。まあこの館は別荘ですからお気になさらず。別に盗まれても良いものしか置いてありません」

「こ、この人もすごいです」


ビュンッ


「……ん? いつの間にかドンさんが裸に!?」

「何を言ってるんです? ……は、裸っ!! ひぃぃぃ!!」


去っていくドンさん。どうなってるんだ!?


「キサマが勇者か!」

「な、何だっ!!」


窓際に何者かが立っている。そうかこいつが犯人だな。


「って魔物っ!? え、あ……僕は――」

「問答無用!!」


自分から聞いたくせにっ!! ああ、もう戦うしかない!!


一応魔王軍の中では優秀な僕だ。ある程度は戦える。


「やぁぁぁぁっ!!」



㌦ 魔王 ㌦


「うう。暑い季節だからって冷たいものばかりじゃいかんなまったく」


トイレの扉を破壊してトイレから出る。取っ手の部分が汚い、というのが魔王の持論だ。

勿論入ってくるときに触っているので無意味なことに魔王は気づいていない。どうせ手は洗うのに。


玉座に戻ると部下に聞く。


「それで、あいつはどうなった?」

「そ、それが……居場所は伝えたのですが生憎勇者の姿を伝えるのを忘れまして」

「……まあ居場所だけ伝えれば良い。さて、どのようにして勇者はこの試練を乗り越える?」


潜入した魔物が戦っていることに魔王は気づいていなかった。


主人公が勇者の時代はもう終わりだ!!

そう、今の時代主人公は潜入した魔物だぜ!!

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