表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/15

ローザの想い

 

 何故マリーにそこまで構うのか。それはローザがマリーの事を可愛がっているのが大前提ではあるが、聖女として浄化の旅を終えた後のことを考えていたためである。


 ローザは公国の大公の娘であること、そしてユラニブレ聖王国の王太子の婚約者として公表されていたこともあり、彼女を手に入れようとする貴族の動きはほぼ無かった。もしそんな貴族がいたとすれば、大公とテレンスの父である騎士団長にこってりと絞られているはずである。


 聖女という称号を得たマリーは、浄化の旅を終えた後も国を救う存在として崇められる事になるのは目に見えている。例え既にその力をヘーレー神へ返却していたとしても、その功績が消える事はない。国に尽くしてくれた恩人として一目おかれるだろう。

 そんな時に平民の、しかも押しに弱くお人好しなマリーが聖女となると……彼女に近づこうとする貴族が後を絶たないだろうし、あわよくば彼女を丸め込んで……と考える輩もいるのではないか。そこがローザの心配な点なのだ。


 相手に合わせる事は別に悪いとは思わないが、それを悪用されるのは宜しくない。そのためには、マリーが「自分で考え、断る」事ができる様にならなくてはならないのだ。相手に言質を取られてしまえば、いくらローザが王太子の婚約者という立場であったとしても、彼女を守り切ることができないからだ。それがもし婚姻関連だとしたら……マリーが気づかぬうちに、どこかの貴族の後妻として輿入れしている可能性もあり得る。


 マリーは純粋で他人の心を慮る事のできる人だ。そんな彼女に貴族世界は厳しいものとなるだろう。そんな想いから、マリーの意識を変えたいとローザは思ったのである。勿論、その根底には「マリーと話したい、仲良くしたい」想いで占められているのだが。


 どの様に彼女を導くか考え込んでいた彼女は、すっかり夕食の事を忘れていた。だから目の前に現れた人物にも気づくのが遅れてしまう。


「ローザ様、ヴィンスを呼ぶのに時間が掛かりすぎですよ」


「テレンス……」


 彼の姿を見たローザはヴィンスの部屋に訪れた理由を思い出して、ばつが悪い。テレンスに頼まれ、ヴィンスに夕食の時間である事を伝えに向かったはずが、伝え忘れたまま廊下で考え事をしていたからである。

 その事を察したテレンスは、苦笑いだ。


「しかもその様子だと、夕食の件は伝えていない様ですね……」


「う……ごめんなさい、テレンス」


「いつでもどこでも考え込んでしまうのは、貴女の長所でもあり短所でもありますからね……もう慣れてますから」


 彼にしてはどこか優しさが滲む声色で発せられた言葉だったが、一方でテレンスの表情はあまり芳しいものではなかった。


「しかし、お一つ申し上げますと……彼女に構いすぎではございませんか?貴女様がそこまで彼女の事で悩む必要性がないと思うのですが」


 身分が上位であるローザに物怖じする事なく、テレンスは真っ直ぐに彼女の目を見て話す。これが彼の好ましいところだ。

 テレンスからの忠告めいた言葉にローザは、聖母の様な微笑みをたたえテレンスに笑いかける。その笑みは見た者を引き込む様な雰囲気を纏っていた。

 長期間側に仕えているテレンスも、気を抜くと彼女の笑みに見惚れてしまうくらいだ。


「貴族の世界は魑魅魍魎。純粋な彼女が足を踏み入れたら、底無し沼に囚われる様に抜け出せなくなるはずよ。それが将来聖王国を良き方向に導くとは思えないの。私は民を導くための存在。そんな私が一人の聖女を助ける事が出来ないなんて、笑ってしまうわ。彼の婚約者として、それは私が許せないの」


 そこで一息ついたローザ。彼女の目線は窓の外ーー正確に言えば、聖王国の王城の方向を見つめていた。

 一瞬遠い目をした彼女だったが、すぐにテレンスの方に顔を向けてにっこりと笑う。その笑顔は先程の笑みとは違い、可愛らしいものだ。


「あ、でも一番は、マリーが大好きだからよ?可愛い子には幸せになってもらいたいじゃない?」


 悪戯が成功した子供の様な笑顔を見せているローザに、面食らったテレンスだったが、フッと笑うとローザに目線を合わせて返事をした。


「そうですね、それが貴女でしたね」


「そうよ?忘れてしまったのかしら?」


「最近はこの様な事が余り無かったので、油断しておりました」


「もう、貴方達の仲を取り持ったのは私なのは忘れていないでしょうね?」


「そ、それは勿論……さあ、ローザ様。先に食堂へ向かってください。私はヴィンスを呼びますので」


 ジトーと効果音が聞こえるような目でテレンスを見るローザに狼狽え、繕うテレンス。彼女は少しの間見つめていたが、すぐに普段に戻る。


「ええ、後は()()も任せるわね」


「その件は、お任せください」


  そう言うと颯爽と彼はヴィンスの部屋に向かう。その背中をローザは見えなくなるまで見つめていた。

 いつも読んで頂き、ありがとうございます。

現在、この先の展開をどうしようか悩み中のため、もしかしたら来週投稿できないかもしれません。

その代わり、短編を執筆しようかとも思っているので、来週はもしかしたら短編をあげるかも……?


 とまあ、週一更新も出来てなくて申し訳ございません。

のんびり更新する予定なので、気長に待っていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ