ヴィンスの思惑
本日は短いです。
「これ位言えば、少しは危機感を持ってくれるかな?」
そう呟いたのはヴィンスだ。彼はセルジュと別れた後、一人宿で鍛錬を行っていた。鍛錬を終え、休憩をしようとコップを手にした時、ふと先ほどのことを思い出したのだ。
「流石に御膳立てしすぎたか……?」
宿の自室を良い事に、独り言を言いながら先の場面を思い描く。マリーの言葉を聞いたセルジュの表情は驚愕と憤怒……それも自分の行いの結果だと言う事が理解できていないようだった。
「何を御膳立てしたの?」
呆けていた彼の前に現れたのは、ローザだ。手を腰に当て、眉を顰めてヴィンスを見ている。
「あれ、いつの間に……?」
「ノックしても気づかなかった様だから、勝手に入ってしまったわ。ごめんなさい」
「いや、それは問題ないですが……用とは?」
不思議そうな顔をしているヴィンスに、ローザはニヤリと笑いかける。
「さっきの私たちの話を聞いていたでしょう?ふふ、セルジュ君の顔が見れなかったのが残念だわ」
「……お見事ですね」
流石にあの距離ではバレていたようだ。ちなみにマリーは気づいていなかったらしい。
ローザに問い詰められたヴィンスは、両手を上げて降参する。
「マリーさんの言葉に驚いていた彼に、『身の振り方を考えた方が良いよ』と言っただけですよ。貴女の仰っていた通り、マリーさんを恋人だと思っていたようなので」
「やっぱり。私の見立ては正しかったようね」
ふふん、と胸を張るローザに、苦笑いのヴィンス。
「けど、ヴィンスが助言をするなんて驚いたわ。だって、貴方。マリーの事好きでしょう?」
「ははは、バレてました?」
「ええ。マリーを見る目が他と違うもの。だから不思議なのよ。セルジュ君に助言をする貴方が」
そう言って顔を覗き込むローザに、ヴィンスは笑いかける。
「そうですね……正直マリーさんに一目惚れをしたようで、その時から彼女への気持ちは本物ですが、僕が本当に彼女と関わって良いのか、その資格があるのかって思っています」
「ヴィンス……」
「一方で、彼女と仲良くなりたい僕もいますけど」
ヴィンスは肩を竦める。
「セルジュ君に助言したのは、好きになったマリーさんには心の底から幸せになって欲しいから。幸せになるなら別にセルジュ君を選んでも構わないと思ってます。今でもセルジュ君がきちんとマリーさんを見ていれば、口出すつもりは無かったのですが……彼はマリーさんの優しさの上で胡座をかいている様ですから」
「そうね……これで彼も変わると良いわね。まぁ、私としては恋人にするなら彼よりもヴィンスを推すけど?」
「それは嬉しいですね。少し頑張ってみようかな」
「マリーを泣かせたら承知しないわよ?……と言ってもヴィンスなら大丈夫でしょうけど」
肝に銘じておきます、と笑いながら返答するヴィンス。
ローザはそれだけだ、と言って部屋を出る。
(マリーにはもう少し自立した考えを持ってもらわないと……)
そう考えながら。
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