23歳男だけどガチでサンタクロースを信じてるんだが異端か?
僕だってさ、こんな年してサンタがどうのこうのいいのは恥ずかしいよ
でもさ、僕の23年の短い人生に起きてきたことを鑑みるにサンタクロースは存在するんだよ
とりあえず、順を追って話すよ
いややっぱ、核心から話すわ
去年のクリスマスの話なんだけど、ご存じの通りイブは仕事に打ち込んでてさ
仕事が終わった後は、まっすぐ帰って床についたんだよ
それで翌朝、目覚めると枕元にクリスマスプレゼントが置かれてたんだ
僕は一人暮らしだし、玄関のカギはちゃんと閉まってた
それに人が歩いただけで床が軋むボロアパートだから、誰か侵入してきたら絶対に気づく
それでも、誰かが僕の枕元にクリスマスプレゼントを人知れず置いていった
でもさ、僕はそのことに少しも驚かないし疑問も抱かなかった
なぜなら、それはクリスマスの朝には毎年起こっていることだったからだ
つまり、僕の部屋に侵入した何者かってのは、正真正銘のサンタクロースなんだ
遡って子供のころの話をしようか
物心ついたころから、僕はクリスマスにはずっとプレゼントを二つ貰ってたんだ
一つは両親から、もう一つはサンタから
ずっとそうだったから、それが普通だと思っていたんだけど
おかしいってことに気づいたのは、小学二年生のころだった
まあ、友達からサンタの正体が父親だって教えられたからなんだけど
でもさ、僕は親父がサンタであるはずがないって思ったわけだ
だって、親父がサンタなら、親父は毎年、二つのクリスマスプレゼントを用意してるってことになる
そんなことをする意味がないだろ?
だけど、そんなことを言ったら「まだサンタを信じてるのかよ」って馬鹿にされる
だから、人前ではこんなこと絶対に言わないで皆にあわせて生きてきた
親父がサンタじゃないって思う理由は他にもあるんだ
このサンタからのクリスマスプレゼントなんだけど、もらえるのは僕だけじゃないんだよ
ただ僕以外の人がサンタからプレゼントをもらうには条件があってさ
それは、クリスマスイブに僕と同じ部屋で寝ていること
僕は11歳の時に、親父の書斎を譲ってもらって自分の部屋を手に入れたんだけど
それまでは、親子三人川の字で寝てたんだ
つまり、10歳のクリスマスまでは両親にもサンタからのクリスマスプレゼントが届いていたってわけ
この条件に気づいたのは、12歳の時
その年のクリスマスは、両親がインフルエンザにかかってさ
僕は避難も兼ねて従兄弟がいる叔母の所に泊まったんだ
従兄弟とは年も近いし、夜中までゲームしてたよ
それで、目が覚めたら僕と従兄弟にサンタからのクリスマスプレゼントが届いてた
うちの親父なんかは、「世の中には不思議なことが往々にしてあるものだ」とか言ってたけど
さすがに、おばさんはパ二くってね
終いには僕たちが盗んできたんじゃないかとか言い出してさ
まあ、それは必死に弁明したら信じてくれたんだけど
ちなみに、その時のプレゼントはずっと欲しかったDSのソフトだった
更にちなみになんだけど。僕、ここのところウイスキーにこっててさ特にアイラの独特な風味が気に入ってるんだ。そうしたら、昨年のプレゼントはラフロイグだったよ
ちょっとお高めの酒だったから、すごいうれしかったよ
サンタのチョイスはさ、すごい的確に僕が欲しいものをついてくるんだ
ただ金額的な制約があるのか、たまに欲しかった奴より一つランクが下がってたりするんだけど
ここまで話せば、さすがにわかっただろ
他の奴らにはサンタがいなくとも、僕と僕の周囲に限ってはサンタクロースは実在するんだよ
それまで、話をずっと黙って聞いていた彼女から、憐憫の眼差しが向けらていることに僕は気づいた。
しかし、僕は、彼女のその刺々しさをものともしない。それどころか、その鋭さが、鋭さゆえに心地よくすらある。そもそも、僕は彼女のその反応を最初から想定していた。
「先輩、クリスマスイブにわざわざ私の部屋まで訪ねてきてすることが、そんな面白くない話ですか」
彼女の声には、憐憫を超えて強い蔑みすら感じられる。あぁ……なんと安らぐ声だろうか。
兼ねてより、僕にはMっ気があるのかもしれないと思っていたが。どうにも彼女と出会って以来、その傾向は顕著になってきている。
だが、強い男に憧れる身としては自分がMであるとは素直に受け入れ難い。でも、それが事実であるならば真正面から受け止めるのもまた強い男だ。だがしかし、彼女に俺がMだなんて知れたら、恥ずかしさ、情けなさのあまりに僕は身もだえることだろう。
まあ焦る必要もあるまい。僕がMであるのか、そうではないのかという問題は慎重に検証する必要がある。
「でもまあ、決して面白くはなかったとはいえ、検討に値する程度の話ではありましたので、すこしだけ考えてみましょう」
その言葉とは裏腹に、彼女の瞳には好奇心の色が宿っていた。こうなった彼女は、本当に頼りになるのを僕は知っている。もともと、僕と彼女は高校時代に図書室の常連として知り合ったわけだけど。
彼女は俗にいう、探偵脳(石黒正和曰く、ミステリ小説を好んで読む人が陥る脳の状態)であった。すなわち、他愛のない日常の出来事にですらミステリ的推理を用いてしまう人のことであるが。
そんな、彼女だからこそ非日常的な出来事に強い関心を示すのだ。
そして、その性向は実生活でも十分に発揮され。彼女は高校在学中に、いくつもの事件を解決し、校内ではちょっとした名探偵として知られていた。
まあ、事件と言っても落とし物探しとか、人探しとか些細なものではあったが。
しかし、事件の大きさに関係なく、僕は彼女の高い推理力を買っている。だからこそ、僕は恥を忍んでサンタの話を持ち出し。彼女に、その謎へと挑んで欲しいと期待したのだ。
彼女の様子を伺う。白く細い手を口元にあて、どこに焦点があっているものか虚空をじっと見つめている。うむ、まごうことなき名探偵の所作と言えよう。
「整いました」
「謎かけかな」
「……情報が少なすぎますが、とりあえず二通りの答えを用意してみました。つまらないのと、多少面白いの。どちらから聞きます?」
「つまらないの!」
僕は、世の男性諸君と同じく好物はあとに残しておく主義なのだ。
「じゃあ、つまらないほうから。犯人は、先輩のご両親ですよ」
本当に、つまらない答えだった。明らかに、気を落とした僕を見て彼女はフンと鼻を鳴らした。どうやら、彼女にとってもこの答えは気に入らない物であるらしい。
そりゃそうだ、先に述べたように彼女は非日常を好む。犯人、否、サンタクロースの正体が父親なんて、当たり前すぎてへの足しにもならない。
「まず、昨年の出来事から考えてみました」
「密室(僕のオンボロアパート)へのウイスキー配達事件のことだね」
「先輩の部屋、合鍵を持っているのは私だけじゃありませんよね?」
「……何かあったときの為に、両親にも渡してある」
「もう、これ以上は話す必要はありませんね」
「いやいやいや、両親なら実現可能ってだけで謎はいっぱい残ってるよ! 幼少期には両親にもプレゼントが届けられていたこととか、従兄弟の家にまで届けられたこととか。むしろ、謎がまるまる残ってると言っても過言ではないよ」
「従兄弟の家には、プレゼントを預けてあったんじゃないですか。それに、叔母さんのパニックは演技じゃないと言えますか? 当時の先輩はまだ小学生ですよね。子供をだますなんて容易い容易い」
「じゃあなぜ、親父達はそんな手間を? 親父達がサンタなら、サンタ名義で自分たちと僕に、本人達からとして僕の分のプレゼントを用意していたことになる。それは、とても経済的とは言えない」
「むしろ、そこに動機があるように私は感じました」
僕の頭に、疑問符が浮かぶ。
「先輩のご両親、クリスマスにかこつけて自分達が欲しいものをサンタからのプレゼントと称して買ってたんじゃないですか?」
なるほど。自分自身へのご褒美というわけか。確かに、あり得そうな話ではある。
「でも、わざわざサンタからのプレゼントに偽装する必要があるかな」
「自分たちが贅沢をしている姿を子供に見せたくなかったんでしょう。それで、サンタにご登場願ったわけです。ほら、子供をだますのは容易いでしょう?」
僕は、思わずウーンと唸ってしまった。彼女の推理には、完璧とはいいがたいが確かな説得力があった。そもそも、僅かな情報からよくここまで思いついたものだと感心すらしてしまう。
しかし、頭の隅のもやはどうにも晴れない。何か、見落としがあるような……。僕が、頭を右に左に捻りながら思考を巡らしていると、彼女がぐぐっと近寄ってきて僕の頭をガシッと両手で捕まえた。必然、彼女の澄んだ瞳と僕の濁ったそれが直線に結ばれる。
まさか、僕は今から彼女に引っぱたかれるのではないか。そんな迫力が、彼女の目には宿っていた。だとしたら、望むところだ。さあ、どんとこい! その冷たい平手打ちの、卑しい僕の頬に! 早く! プリーズ! まて、それでは本当に僕がMみたいじゃないか。落ち着くんだ僕。
突然のにらみ合いに、僕がドキドキしていると満を持して彼女が口を開いた。
「もう一つ、面白いほうの答えが残ってますよ。聞きますか?」
有無を言わさぬ彼女の様相に、僕は黙ってうなずく。
「これは、幼い頃の先輩のご両親、そして従兄弟といった先輩以外の人がクリスマスプレゼントを受け取る条件から導き出した答えです」
「イブの日に同じ部屋で過ごすって条件のことだね……」
僕は、ごくりと唾を飲み込む。
「先輩、適当に話をでっちあげて私を同衾に誘ってるんでしょ」
僕の心臓がばっくんばっくんと踊り狂いだす。ててて適当にはなしをでっちあげて! どどどどどどど同衾!? 違う、そんなつもりじゃないんだ! たたたたしかに今日は、彼女と二人きりで過ごす初めてのクリスマスイブ。付き合い始めたのはもっと前だが、昨年は僕の仕事のせいで会えなかった。
であるが、決してそんなつもりでサンタの話をしたんじゃない! 脳内を、否定の言葉が駆け巡るが、どういうことかどれもこれも言い訳じみてて、それを口にしたとたん彼女に魂胆を見抜かれそうで。僕は「あ」とか「ご」とか、言葉にならない単語を漏らすことしかできなかった。
「なんだ、違うんですか」
僕の慌てぶりから、あてが外れたとばかりに彼女は溜息をついた。その溜息が、自身の推理が外れていたことへの悔しさなのか、はたまた僕の意気地の無さへの失望なのか。僕には見分けがつかなかった。
彼女は、僕の頭から手を離すと、どこか不満げにソファーに横になった。そんな彼女の姿を見て、僕は自分のあまりの情けなさに泣きそうになってしまう。
僕たちは、付き合い始めて既に2年近く経つ。にもかかわらず、僕たちはまだ結ばれていない。それは、ひとえに僕が彼女を大事にしているから? いや、これは言い訳でしかない。僕は、彼女に拒まれるのがとてつもなく恐ろしかったのだ。
それにしても二年は長すぎる。彼女の二つ目の推理。あれは、推理にかこつけたお誘いだったのではないか。臆病者の僕を、見かねて彼女が救いの手を差し伸べたのだ。が、僕は、そのチャンスすらみすみすと手放してしまった。女に誘わせ、それでもなお狼狽えることのしかできなかった僕に、彼女は失望したことだろう。
「じゃあ、最初のつまらない推理のほうでいいですね。サンタクロースは先輩のご両親です」
抑揚のない、どこか棘のある彼女の言い様に、普段であれば心地よく感じるその冷たさに、僕は素直に喜べないでいた。もはや、僕がMであるかどうかなんて検証は意味を持たない。そんなことは関係なく、今の僕はただの情けない糞野郎だ。
だがMであることは認めても、彼女に恥をかかせたままの糞野郎であり続けることを僕は許容できない。僕は、覚悟を決め彼女に向かいなおした。
「いや、キミの推理は二つとも間違っている」
「……なんですって?」
「もしサンタの正体が僕の両親で、自分たちへのプレゼントが目的だとしたら、どうして僕が独り立ちした後も僕にプレゼントを贈り続ける必要があるんだ。それも、わざわざ僕の部屋に忍び込んでまで」
「そんなの、本人に聞いてください」
「それと、もう一つの推理も間違いだ。僕は下心でこんな話をしたわけじゃない」
「だったら、先輩の推理を聞かせてくださいよ!」
彼女は、立ち上がって僕を睨みつける。目じりには光るものがたまっている。間違いなく僕のせいだ。僕の情けなさが、彼女にこんな思いをさせてしまった。全責任は、僕にある。
であるならば、僕がそれを拭わなくてはならない。それこそが、僕が憧れる強い男の役目だ。
「だからさ、サンタクロースはいるんだよ」
「何をバカなことを言ってるんですか」
「信じられないかい? でも、幸いにも僕はそれを証明することができる」
「どうやって?」
「今晩、一緒に過ごさせてください」
部屋が、沈黙で満たされる。
緊張と押し迫るプレッシャーに僕が顔をゆがめる中、彼女は一瞬の逡巡のあと、コクリと頷いてみせた。
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クリスマスの朝。僕は、困惑した表情の彼女に揺さぶられ目を覚ました。
彼女の手には、小さい包みが握られている。赤い包装に、緑色のリボン、まぎれもなくサンタからの贈り物だろう。
「これ、先輩からのクリスマスプレゼントですよね? そうと言ってください」
ふと、横に目をやると僕の枕元には少し大きめの弁当箱ぐらいのプレゼントが届いていた。
「ねえ、なんとか言ってくださいよ」
「開けてみたら?」
僕は彼女をしり目に、僕宛のプレゼントへと向かう。聞いたこともないブランドの工具セット。KTCが欲しかったんだけど、まあさすがに今の僕には高額過ぎるよな。それでも、嬉しい。ありがとうサンタさん。
「私のはイヤリングでした…」
僕は、何も答えずにカバンの中から包みを取り出し彼女へと手渡す。
「メリークリスマス。でもごめん、サンタクロースと被っちゃった」
僕が用意したプレゼントもイヤリング。彼氏である僕が、彼女の欲しがっているものを見抜くのは当然であるが、サンタの目利きもたいしたものである。
「えぇ……じゃあ、こっちのプレゼントは本当に?」
「だから、サンタはいるって言ったでしょ」
「マジすか」
彼女は、困惑しながらも僕から袋を受け取りイヤリングをつけて見せてくれた。
「サンタの方がセンスはいいですね。うへへ、ありがとうございます」
物言いはともかく、彼女の笑顔に僕の胸は幸せに満たされる。
「あ、私からも。メリークリスマスです。先輩」
紺色の毛糸のマフラー。おそらくは、彼女自身の手によって編まれたものであろう、ところどころにほつれが見える。
「ありがとう。しかし、手編みのマフラーってベタだなあ」
彼女はムッとした表情で、僕の手からマフラーを奪い取り、サッと僕の首にマフラーを巻き付けてくれた。首に巻かれたマフラーは、毛糸がちくちくとしてむず痒かった。
「このまま絞め殺してやろうかな」
「え、まじで!? ありがと!」
「なんで、嬉しそうなんですか……」
彼女の言葉に、僕はハッとする。
いつもなら、口に出る前にストップがかかるというのに、今日はクリスマスで気分が浮かれていたせいか。つい願望が口にでてしまった。……ん? ……願望?
そう。僕は、望んでしまっていた。彼女が、非日常に恋い焦がれるように、僕は僕が痛めつけられることをどうしようもなく望んでいたのだ。
ああ―――なんてことだ。この幻想的なクリスマスの朝に、僕はどうしようもなく逃れられざる現実をつきつけられてしまった。
長きにわたる検証の結果は、黒。
どうやら僕は、真正のMであるらしい。
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ここからは、僕の解答編。というより、怪盗編? いや、犯行声明といったほうが正しいか。まあ、僕の心のうちに留められることを考えると自白というのが一番しっくりくる。
おっと自己紹介がまだでした。僕は、名探偵の相方にして愛の伝道師。しかし、それは仮の姿。実のところ、その正体は、いわゆるサンタクロースであります。
そう、すべては、僕の自作自演。
端的に言うと、僕が冒頭に語ったサンタクロースに関連する出来事は全てでっちあげ。彼女を騙すためだけに、僕が考えたストーリー。
昨年の僕は、ウイスキーをもらってはいないし、過去20年においても本物のサンタからのプレゼントなんてものは無かった。今朝のプレゼントだってそう。サンタから彼女へのイヤリングも、謎のブランドの工具セットも。すべて僕が用意したものだ。
何故そんなことをしたかだって? それは、彼女に喜んでもらいたかったからさ。
彼女は、深刻な探偵脳であり、ミステリ的非日常に恋い焦がれている。しかし、現実問題、不可思議なことなんてそうそう起きることなく、変わらない日々を退屈に過ごすしかない。
そんな彼女へ、不思議という名のクリスマスプレゼントを贈る。
それこそが、今回の事件の実に詰まらない答えというわけだ。
実のところ、動機はもうひとつある。それは、彼女への物質的なクリスマスプレゼントであるイヤリングを選ぶ際に、彼女の好みそうなものを二つにまでは絞ったものの選びきれなかったことにある。
結局、二つとも贈ってしまえと購入したものの、彼女はああ見えて遠慮しいで気兼ねしちゃうことは目に見えていた。そこで、二つのクリスマスプレゼントが存在する理由をでっちあげる必要があったのだ。
さて、今回のプレゼント。いずれも彼女は喜んでくれたようだが、僕は重大な過ちを犯してしまった。
それは、彼女を騙したという事実。おそらく、彼女が真実にたどりつけば怒り狂うに違いない。それに伴うお仕置きに心躍らずにいられなくもないが。彼女との関係が壊れてしまう可能性は、できるかぎり避けたい。
僕がサンタクロースであること、そして僕がMであるという秘密は生涯にわたって隠しとおす必要がある。
これは、僕が一生抱えなければならない罪だ。そして、罪には必ず罰が与えられる。僕は、名探偵を欺いた代償として、これから歩むであろう彼女との人生の中。クリスマスには必ず、プレゼントを二つ用意しなくてはならないという代償を負ってしまった。
つまり、僕は秘密が保たれるかぎりにおいて、毎年サンタクロースを演じ続けなければならないのだ。しかし、実のところそんなのはよくあることなんじゃないかな。
だってほら、有名な歌にだってあるだろ。
「恋人はサンタクロース」ってさ。
―――
まったく、先輩は愚かな人だ。
名探偵と呼ばれるこの私に、そんな隠し事ができるなんて本当に思っているのかな。なんだか侮られてるみたいでイライラするよ。つねってやろうかな。
いや、それはやめておこう。喜ばせるだけになりそうだ。
先輩の正体? そんなものは最初から知っていたさ。名探偵は何でもお見通しなのだよ。
でも、たぶんこの事実を突きつけられても先輩は否定するだろうな。問い詰めるのもなんだか可哀そうだ。
プレゼントもいっぱい貰っちゃったし、このことは私の胸の内にしまってあげておこうと思う。
先輩の正体が―――ドMだってことはね。
―――
おわり
―――