戦いの終わり
私は風牙の記憶を操作したあと、オリビアに主導権を返していた。
『身体の感覚はどう?』
『違和感も無いし大丈夫だよ。それにしてもゾディアはやっぱり凄いね。あんなに強かった風牙をあっさり倒しちゃうなんて。』
『まあ、その代わりオリビアの魔力をかなり消費しちゃったよ。』
『魔力は直ぐに回復するから大丈夫だよ。』
他人の魔力操作は技能が必要な他に大量の魔力を必要としていて、更には記憶操作もしたからオリビアの魔力をほとんど使ってしまったのだ。
だからオリビアからしたらあっさりと倒した様に見えるけど、実際にはかなりギリギリだった。
『さてと、この風牙はどうしようかね……。』
『放置? もしくはゾディアの事を聞く?』
『いや、いくら襲ってきたと言ってもダンジョン内に気絶してる人を放置したら死んじゃうよ。それに記憶を操作してるから、もう顔は合わせない方がいいかな。』
『ならどうしよう? 安全な場所まで連れていくならエリアボスを倒して村に戻る?』
『うーん。多分だけど試練のダンジョンにはエリアボス前にセーブポイントって呼ばれる安全エリアがあるから、そこまで連れていくのが良いかも。』
何故か試練のダンジョンにだけはセーブポイントがこまめにあるんだよね。
天然のダンジョンなら、そんか優しい安全エリアなんで無いんだよね。
『じゃあそうしよう。』
『あっ、そう言えば2段階目の契約をした後遺症なのかは分からないけど、私がオリビアの身体を使ったあとは能力に使用制限がかかるみたいで、数時間は確実にオリビアと話が出来なくなるからね。』
『ゾディアが寝ちゃう感じ?』
『多分、意識はあるけど念波みたいな能力が使えないから話が出来ないだけだよ。』
『そうなんだ……』
『心配しなくても主導権をオリビアから貰うようなピンチはかなかな無いと思うから大丈夫じゃないかな。』
さっきみたいなオリビアの物理攻撃が効かないパターンは厳しいけど、それ以外ならオリビアの身体能力を越える人を見たことがないから大丈夫じゃないかなと思う。
しばらくダンジョン内を歩いていると、やっとエリアボス前の扉に到着していた。
『それじゃあ、いくよ。』
『うん、1階のエリアボスなら余裕だろうけど気を付けてね。』
勇者を育成させるためのダンジョンだから、最初から強いなんて事はないだろう。
オリビアがエリアボスの部屋に入るとそこには巨大なこおもりが一匹いるのが見えた。
『エリアボスってあのこおもり?』
『そうみたいだね、ボスにしては弱そうだけどね……サクッ倒して出ようか』
私は魔導書から剣に変化しようとして違和感を感じた。
あれ?
……まさか。
『どうしたの?』
『いや、剣に変化出来なくなってる……それに変身も出来てないみたい、というか私の内蔵されていた魔力が無くなってるから一切の魔導が使えないかも……』
『えっ、どうしよう?』
そう言ってオリビアが腰のホルダーから私を手に取ると、急に魔力が戻ってくる感じになった。
『あっ、そう言う事か……』
『どういう事?』
『オリビアが私を手にしている時だけ私にオリビアから魔力が流れてくるみたいで、私が魔導を使いたい時はオリビアが私を手にしてないとダメみたい。しかも、この感じだと同時に魔導を発動させるのも今のところ難しいかも。』
『じゃあ、私がずっとゾディアを持ってればいいんだね。』
『それはそれでかなりのハンデな気がするけど……とりあえずは剣に変化してボスを倒そうか。』
『うん』
そしてオリビアは楽々と試練のダンジョン1階を攻略するのだった。




