半融合
オリビアは眼を瞑り、気配だけで風牙の空気弾を紙一重でかわしていた。
「なぜ当たらないのですか! 速度も見えていても回避が困難なレベルなのに!」
「……」
先ほどまではオリビアの方が圧倒的に追い詰められていたのに、今では本気だろう空気弾を回避され続けている風牙の方が焦っているように思えた。
よし、そろそろ準備が整うな。
しかし、こうも空気弾を連射されているとオリビアへ声をかけるのが躊躇われた。
見た目はオリビアが余裕そうに回避しているが、実際にはかなりギリギリで回避しているだろうから、下手に声をかけた瞬間に空気弾を食らう可能性があった。
出来れば空気弾の連射が終わるタイミングがベストなんだけど、まるで連射が終わる気配がないのだ……
まあ、下手したら空気を圧縮して撃ちだすだけの技だから体内の魔力が尽きるまで撃ち続ける可能性もありえた。
どうせ風牙を倒せなければ私の存在はバレるのであれをするか……
私は風牙がオリビアに集中している後ろで、分身体を密着状態で出現させる。
離れた位置から分身体を作成していればオリビアの攻撃みたいに空気膜に弾かれてしまうが、密着状態ならば好きな場所に分身体を作成出来るのだ。
そして私は風牙の後ろから右手首を掴み、上方へ逸らした。
「なっ、どこから増援が来たのですか!?」
「それは秘密だよ。」
ドゴンッ
私は密着状態のまま風牙を蹴り飛ばす。
『オリビア、契約を始めるから私を持って!』
『分かった!』
オリビアはすぐさま私のところへ来て剣状態の私を握りしめる。
『それじゃあ、契約を始めよう。』
【マスターオリビアと魔導書ゾディアの2段階目契約を開始しますが、よろしいでしょうか?】
『はい、お願いします!』
『はい!』
契約が開始されるのと同時に分身体は消え、剣に変身していた状態も魔導書に戻ったと思ったら、身体が消えていくような感覚になっていた。
「なに? 剣が魔導書に……、なるほどそう言う事か、変身の魔導を使っていたんだな。しかし、そうなると何故あなたから魔導書が離れた時点で変身が解けなかったんだ? それに急に現れて消えた女性も不可解な……」
元々、身体の感覚はほとんど無かったけど更に希薄になり、このまま私は消えてしまうのではないかと思えていた。
『オリビアは身体とか大丈夫?』
『私は何ともないよ。左手が少し違和感があるくらいかな。』
『そっか、オリビアに何ともなければ良かった。』
私と半融合する時にオリビアは私を左手で持っていたから、左手に違和感があるんだろう。
この希薄になっていく感覚が私だけのもので良かったと思った。
『ゾディアは大丈夫?』
『大丈夫だよ。』
【契約が完了しました。】
契約が完了したアナウンスと共に、半融合で出来る様になった点と出来なくなった点が大体だが分かってきた。
「……子供? あなたは子供だったのですか、それならばある程度精神面が幼い点も納得出来ますね。」
「鎧が消えた?」
『半融合したことによって変身していたのが一時的にリセットされたのかも……。オリビアにかけた変身は私の剣に変身するのとは違って、最初に込めた魔力が尽きない限りは本来は解除されないものだったからね。』
『もうバレちゃったからこのままで戦う?』
『そうだね……、でも何があるか分からないから念のため再度変身しておこう。』
『分かった。』
「……それに、不可解な魔力の流れがあなたと魔導書に現れ始めましたね。やりたくはないですが、こうなったら子供のあなたを傷つけてでも昏睡させて連れていかせてもらいますよ。」
風牙はローブの下から大量の小さな金属製の球を地面に落としたと思ったら、ふよふよと球を浮かせ始めた。




