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《MMORPGアルザストルーナにて》

初めまして作者です。初投稿なので緊張して手が震えています。文章力がないかもしれませんが気軽にかつ暇潰し程度に読んで頂けると幸いです。




 世界が黒く渦巻く雲に覆われる中、いくつもの怒声や悲鳴が上がる。


 目の前にはオリハルコンの素材で出来た暴君の巨人【タイラントゴーレム】と(あわ)く光り、光線を天から落とし攻撃してくる聖天龍【ヘブンズドラゴン】、漆黒の羽衣(はごろも)を身に付け、無表情で敵を斬り捨てていく絶望の女神【アテリナス】。



「くっ…! こんなのありかっ!?」



 思わず叫んだ俺はその三体の攻撃を避けつつ右手に握る漆黒の刀、妖刀【闇夜(あんや)】を振り抜きアテリナスの腕を斬り飛ばす。俺は一撃加えるとすぐにその場を離れて戦線離脱する。

 

 だが、一撃加えたところでアテリナスのHPは減ったかどうか分からないくらい少ないダメージしか負っていない。そんな無慈悲な現実に乾いた笑みが浮かんでしまう。


 今、俺たちプレイヤーが挑んでいる相手はMMORPGでよく出てくるレイドボスというやつだ。通常のボスより何倍も強く、何組ものパーティーが連結してやっと倒せるレベルのボスである。今回はそんなレイドボスが三体同時に出てきた。普通はこんなことあり得ないのだが、その分倒した時の報酬がボスの装備と素材が必ず手に入るとの事なのでプレイヤー達は血眼(ちまなこ)になって戦っている。俺もその一人だが、正直ちょっとどころかかなり怖い。


 しかし、死んだら戦場から復活の神殿へ強制的に転送され、ボス戦に参加出来なくなる(勿論、報酬は参加賞のポーションだけとなる)という条件があるため、プレイヤーの数が減れば減るほど不利になっていくのだ。


 そして目の前に広がる光景は阿鼻叫喚(あびきょうかん)地獄絵図(じごくえず)と言っていいほど酷いものだ。ある時はタイラントゴーレムの巨大な拳で潰され、またある時はヘブンズドラゴンが繰り出す光線に貫かれる。そんなこんなでやられていき、今のプレイヤーの数は最初にいたプレイヤーの数のおよそ三割程度しか残っていない。


 アテリナスの方を見るといつの間にか斬り飛ばした腕が再生されている。他のプレイヤー達は魔法で攻撃、防御、支援をしたり剣や斧などで攻撃、盾で防御したりと休まずにレイドボスと戦っている。


 俺も前線に戻り三体のレイドボスに攻撃を加えるがたいしたダメージにはならない。当たり前だけど…



「【鬼神化(きじんか)】、【疾風迅雷(しっぷうじんらい)】っ!」



 俺は攻撃力2倍と速度超アップのスキルを使うと三体のレイドボス目掛けて走り出す。妖刀【闇夜】の(つか)に手を添えて身構える。ターゲットに近づくと俺は【闇夜】を抜き放ち、スキルを発動させた。



「【千剣斬(せんけんざん)】っ!!」



 瞬間、三体のレイドボスの間にいくつもの線が生まれ切り裂いていった。目にも止まらぬ速さでHPを削っていく。だが、それでも倒すには至らない。俺は顔をしかめながら戦線離脱する。


 それからどれほどの時間が過ぎただろうか…辺りを見渡せば戦場にはもう数人しか残っていない。


 自分のHPの残りを見てみるがもう4割といったところか…回復薬であるポーション、ハイポーション、フルポーションはもうなくなってしまった。MPも2割しか残っておらずかなりピンチだ。


 他のプレイヤーたちも大体同じ状況だろう、かなり疲弊している。


 レイドボスのHPも残り僅かだが、まだヘブンズドラゴンとアテリナスの2体が残っている。他のプレイヤーたちも何とか攻撃しているがこのままだとこちらが先にMPがなくなりやられるだろう。


 俺は意を決して(となり)にいる魔法職のマジックキャスターに声を()けた。



「少しいいか…?」


「何か用か?」


「頼みがある」


「頼み?」



 隣にいるマジックキャスターが不思議そうにこちらを見ている。俺はそのまま話を続ける。

 

 

「ああ、このままでは全滅してしまう。そうなる前に決着をつけたい」


「気持ちは分かるがどうやって決着をつけるつもりだ?」


「俺に、君の全てのMPを使って攻撃力アップのスキルをかけてくれないか?」


「…はぁっ!?正気か?」


 

 マジックキャスターは信じられないという風に目を見開きこちらを見る。


 それもそうだ。MPを使い切ったら後がなくなり敗北が確定するのだから。俺は生き残ってる他のプレイヤーにもメッセージを送ると返事はすぐに返ってきた。



(よし、これなら何とかなるかな…)



「で、どうする?」


「出来る訳ないだろ…そんなの」



 予想通りの返答が来たので俺は続けてこういった。



「そうか、なら半分でいいんだ。攻撃力アップのスキルをかけてくれ」


「う、むぅ。他に手はないし半分なら構わない」


「ありがとう、感謝します」



 感謝の念を伝えると俺に攻撃力アップのスキルがかかった。そして【闇夜】を構えて走り出した俺は残りのレイドボスへ攻撃を仕掛ける。


 ヘブンズドラゴンがこちらに振り向き攻撃してくるが俺は難なく回避して目の前で【鬼神化】を発動させた。


 ヘブンズドラゴンも俺に目掛けてブレスを吐こうとするが一瞬だけ動きが止まる。


 足下(あしもと)を見てみると(つた)のようなものがヘブンズドラゴンの足にまとわりついて動きを封じている。更に、他のプレイヤーが抜刀攻撃力アップの支援魔法を俺にかけた。


 俺はその一瞬を無駄にする事なく【闇夜】を引き抜きヘブンズドラゴンの頭部へ一撃浴びせた。しかし、HPが僅かしか減らない。



「なっ!? 倒せていないじゃないかっ!!」


「いや、倒せているよ」



 焦ったマジックキャスターに俺はそう答えると引き抜いた【闇夜】をツー、と音を立てながら仕舞う。



―――――カチンッッ!―――――



 そんな音と共に刀を仕舞った瞬間、ヘブンズドラゴンのHPが全て削られ断末魔を上げながらその場に崩れ落ちた。


 スキル【一刀両断(いっとうりょうだん)(きわめ)】。このスキルは【鬼神化】を使った次の瞬間にだけ使える防御無視の貫通攻撃だ。


 しかしながらこれにも弱点があり、少しでも集中力が乱れたり攻撃が当たったりしたら中断される。だから他のプレイヤーに頼んで攻撃力アップだけでなく足止めなどの援護を頼んでおいたのだ。


 俺はすぐにその場を離れて距離を取る。次の瞬間にはゴッッ!!という音が鳴り響く。



「ぐわぁぁああああっ!?」



 俺の近くにいたマジックキャスターが先程の攻撃に巻き込まれてやられてしまった。攻撃してきた方角を見るとこちらを静かに見つめているアテリナスがいた。



「ぐっ…油断しているつもりはなかったが少しHPを削られたか…」



 他のプレイヤーもあと二人しかいない。まさに絶望的な状況である。そんな事を考えているとアテリナスは俺の方へと剣を振り上げ斬りかかってきた。


 俺は【闇夜】を抜刀し剣を受け流した。アテリナスは続けざまに剣を振り何度も攻撃を繰り返し、それを俺が何度も受け流す。


 そんな攻防がしばらく続くとアテリナスは目標を変えて残りのプレイヤーに襲い掛かった。


 慌てて離れるも間に合わずに一人やられてしまった。続けてアテリナスはもう一人逃げたプレイヤーの背に向けて剣を振り下ろしバッサリと斬り捨てた。


 残りは俺一人である。アテリナスはこちらに振り向くと静かに口を開いた。



貴方(あなた)は…報酬が欲しいか?』


「――――ッ!?」



 俺は目を少し見開きアテリナスを見る。


 レイドボスが話し掛けてくるとは思わなかったので驚愕(きょうがく)してポカンと固まってしまった。


 これまでこんな演出は一度たりとも無かったからだ。アテリナスを見てみるが俺の答えを待っているのか、攻撃してくることもなくただ静かに待っている。俺は考えるのをやめ、思ったことを答えた。



「ああ、欲しいよ。喉から手が出るほどにね」


「そう。ならばそれに値する力と知恵を見せなさい」


「言われなくともそのつもりだ…」



 俺はアテリナスの言った言葉の意味を考える。奴は力と知恵を見せろと言った。このまま戦っても力だけではどうやっても勝てないだろう。だからこそ何か勝つための方法があるのか知恵を絞って考えなくてはならない。


 静かに【闇夜】を構え警戒しながら素早く接近する。抜刀してアテリナスに斬り掛かるも難なく防がれ、更にもう片方の空いた手で別の剣を取り出し反撃してきた。



「何っ!?、今までに無かったぞ!こんなパターンっ!!」



 俺は愚痴りながらも反撃を受ける前に素早く射程内(しゃていない)から出る。

 

 異常だ…明らかに何かがおかしい。戦っていて何とも言えない違和感を覚える。だが、今はそれを気にしている暇もなければ余裕もない。


 アテリナスは両手に持つ剣を構え、こちらに絶え間無く襲い掛かった。それに対して俺はというと受け流すのが精一杯だ。実力差がありすぎて泣けてきそうになる。



(くぅ…か、考えなくては! 何か勝つための方法をっ!)



 斬撃を受け流してはいるが最初の頃と比べて段々と動きや剣の速度が上がっている。どうやらあまり時間もないようだ。振り下ろされた剣を受け流そうとして、もう片方の剣が先程よりも素早く迫ってきた。



(しまったっ!? 一回目の攻撃はフェイクかっ!)



 必死に身体を(ひね)って避けようとするが間に合わずに横腹を斬られ、吹き飛ばされた。俺のHPはもう1割程度しか残っていない。MPも同様である。



(もってせいぜい三回か…)



 MPの残りを見ながらスキルの使える回数を計算する。



(こういう時どうすれば…くっ! せめてあの攻撃を防ぐにはスキルを同時に使えれば何とかなりそうなんだが…)



 ふと、俺はある可能性に気が付く。だが、確証はないし成功する確率も低いと思う。


 このMMORPGではスキルを同時に使う事が出来ない。しかし、今回のこのボス戦事態があり得ないような事になっている。レイドボス三体同時出現やアテリナスとの会話…おかしいと、違和感を覚えた事が脳裏に浮かぶ。



(これは賭けだな…負ければ復活の神殿へ転送され、勝てばこの三体のレイドボスの装備と素材が貰える…!)



 覚悟を決め俺は【闇夜】を構え、【鬼神化】で攻撃力を2倍にさせる。何故か自然と笑みが浮かんでしまう。



(まずは一つ目…)



 アテリナスに向かって全力で走る。俺の覚悟が伝わったのか顔を(こわ)ばらせアテリナスも迎撃体勢を取る。


 俺は更に加速し、瞬時に間合いへと入る。アテリナスは剣を振り上げ斬りかかってくる。



(ッッ!! 今だっ!!)



 俺はタイミングを見計らい【一刀両断・極】と【千剣斬】を同時に発動させた。



『【奥義:百剣繚乱(ひゃっけんりょうらん)桜吹雪(さくらふぶき)】を獲得しました。』



 俺の脳内に無機質な声が聞こえるがそれを無視して新しく覚えたスキルを発動させる。



「【百剣繚乱・桜吹雪】ッッ!!」



 俺は【闇夜】を抜き放ち、信じられないような速度でアテリナスに斬撃を浴びせた。


 腕、肩、足、身体へと全身に鋭い軌跡が描かれ、瞬く間にアテリナスのHPを全て削った。


 アテリナスは淡い光となって虚空へと消えた。消える時に見たその表情は無表情に見えるが何故か嬉しさが混じっていたような気がした。



「やっと…終わったのか…」



 一人呆然としながら言葉を漏らす。


 世界を覆っていた黒い雲は消え、今は澄み渡るような青空が広がっている。しばらく空を眺めていると、未だにボス戦の緊張感が抜けていない俺の目の前にステータスメッセージが表示された。



――――――――――――――――――――――――



<ステータスメッセージ>

・現在、三体のレイドボスモンスター…暴君の巨人【タイラントゴーレム】、聖天龍【ヘブンズドラゴン】、絶望の女神【アテリナス】の討伐が確認されました。只今(ただいま)より、生き残ったプレイヤーには報酬が送られます。報酬は以下の通りです。


<アイテム報酬>


・神結晶×999


・オリハルコン(インゴット)×999


・魔結晶×999


・魔石×999


・ミスリル鉱石×999


・高純度鉄鉱石×999


・暴君の重鎧×1(防具)


・タイラントハンマー×1(槌)


・タイラントグローブ×1(拳)


・聖天龍の翼×2(追加装備)


・ホーリーナイトアーマー×1(防具)


・ホーリーランス×1(槍)


・ホーリーナイトセイバー×1(聖剣)


・【白夜(びゃくや)】×1(妖刀)


・女神の指輪×1(追加装備)


・漆黒の羽衣×1(防具)


・女神のドレスアーマー×1(防具)


空想神機(くうそうじんぎ)×1(???)


・金貨100,000,000枚


<ステータス報酬>


・レベル上限解放


・レイドボス三体の討伐によりレベル250から300へ上昇します。


・スキルポイント×300を獲得しました。


・職業はサムライからグランドマスターへと変化します。(グランドマスターは全ての職業を使用可能にします。)


・スキルは今後、同時発動することによって一定確率で新たにスキル、奥義、秘奥義を獲得可能になりました。(ただし、奥義、秘奥義に限り、何らかの条件が満たされていないと獲得出来ません)


<その他報酬>


・アイテムボックスの収納限界がなくなりました。


・新たな職業が追加されました。(内容は以下の通りです。


迷宮の主(ダンジョンマスター)  ・死霊術師(ネクロマンサー) ・呪術師(シャーマン) ・巫女 ・メイド



<ステータスメッセージ>

・以上が今回の報酬になります。報酬は全てアイテムボックスへ自動で送られますので後程(のちほど)ご確認下さい。これにて今回の大決戦イベントを終了致します。



――――――――――――――――――――――――



「・・・・・」



 ステータスメッセージに書かれている報酬にを見て俺は唖然とした。明らかに異常である。報酬の量もその内容も。


 こんな量の報酬が一人のプレイヤーに渡されたと分かった日には確実にネットで炎上するだろう。



(運営は何を考えているんだ…?)



 疑問に思うも所詮は俺の頭脳なので分かる筈がない。


 疲れ果てた俺は一旦ステータスメッセージを閉じると寝る為にログアウトを選択する。



<ステータスメッセージ>


・これよりこの大決戦イベントで生き残ったプレイヤーを――――



 何やらまだ伝える事があるのかステータスメッセージが開くが、俺は「後で見ればいいか」と判断してログアウトするのだった。



読んで頂きありがとうございます。

次をいつ頃投稿するかは未定ですが投稿出来るように頑張りたいです。m(_ _)m

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