~風の旅団~
ー時空魔法ー
朱鷺坂の付与能力。強大な能力な故に制限も多い。呼び寄せられるのは自己所有の武器、パーティー所有のアイテムに限られ、自分が顕現する以前には戻せない。また死亡したキャラの時間も戻せない。
極楽王城に戻った朱鷺坂たちは今後について話し合っていた。とりあえず、デューシーとアマテラスには直接、話し合って貰う事にした。
「今さら、天国と極楽のトップ会談が何かのアピールになるとは思えないが…。」
朱鷺坂としては乗り気ではないが、形式上、行うべきと判断した。会場は天国。単純に警護上、地獄と隣接していないためであり、逆に防衛戦線は極楽に張る事になる。
「この星のほぼ赤道に近い距離を防衛するのは大変だが、問題となるのはアントリオンとか名乗っていた奴だけだと思われる。」
「志田だよ。」
「ん? 」
不意に朱鷺坂の話しに鬼沙羅が口を挟んだ。
「アントリオンなんて名乗ってるけど、あいつの真名は志田正って言うんだ。顕現調書に書いてあったから間違いない。」
それを聞いた朱鷺坂と蘭々は顔を見合わせた。
「何か普通。…って言うか回文? 」
「何か、そう言われるのが嫌でコードネームとか拘ってるみたい。それをあたしらに押し付けられても迷惑なんだけどね。」
鬼沙羅の言うことも、もっともだ。
「それで、他に顕現調書には何か書いてあったのか? 」
「付与能力が二刀流幻影刀技ってあったから、さっきの技だか術が、あいつの全てなんじゃない? 」
実はゲーム中でも一本ならともかく、二本で幻影分身を出されると処理落ちするので薄刃影狼というプレイヤーの評判は良くはなかった。
「それじゃ、『砂の旅団』の構成は? 」
「志田の下に、あたしら八鬼衆を組み込んだもので、あたしの他に鬼宿、鬼灯、鬼鏡、鬼籍、幽鬼、龍鬼、鬼麟の7人。鬼族の族長ヨミ様の命令で仕方なくついてるけど、あんまり好かれてはいないね。ただ、あいつら、変に真面目だから敵としては厄介だよ。どう対応する? 」
「正式にはアマテラスと女王の会談後になるが、志田たちが『砂の旅団』なら、こちらは『風の旅団』が対応する。強制はしない。誰か抜けたい奴はいるか? 」
朱鷺坂の問いに誰も反応はしない。厄介なのが志田たちだけならば、こちらも、そこへ集中すればよい。そもそも、天国と極楽の特異点は、その為に召喚されているのだから。
「朱鷺坂、一人助けてやりたい奴がいるんだけど、頼めるかい? 」
「そう言って、罠に嵌めようってんじゃねぇだろうな? 」
センリは疑いの眼を向けたが、蘭々と陽子が引き戻した。
「取り敢えず、話しを聞かせてくれ。」