~時空魔導師の能力~
ー技・術ー
朱鷺坂たちがプレイしていたMMORPG内で使用していた術技が三国でも使用できる。ただし、ゲーム内では選択式だったコマンドをCVの代わりに声にしている。他にも発動方法はありそうだが、現在の処は不明
「ちっ、チートか!? 」
「能力の適正運用だよ。 」
そう言われてアントリオンと名乗った男は朱鷺坂を睨みつけた。
「時魔導師と空間魔導師の上位ジョブ…時空魔導師か? 貴様、何者だ? 」
「天国の装魔…っていうのは貴様の求めている答えじゃないよな? 『風の旅団』団長クロノスって言えばいいか? 」
その名を聞いてアントリオンと名乗った男は青ざめた。対照的に蘭々は笑顔を取り戻した。
「やっぱり団長だったんだっ!」
「まったく…アバターと見た目は違うし、テキストチャットじゃ標準語で打ってたから気づくのが遅れた。 」
「ごめんしゃ…ごめんなさい。」
「別に謝る必要はない。」
俯く蘭々の頭を朱鷺坂はポンポンと撫でた。その様子に陽子が食って掛かろうとしたが、センリが宥めていた。
「スコルピオン、アラネァ、撤収だっ! 」
「ちっ…ドジ踏んじまった…二人とも早く逃げな。さっきの、喰らったら、おしまいだよっ! 」
身動きの取れなくなっていたアラネァと呼ばれた少女は二人に逃げるよう促した。
「すまないっ! 」
幻影といえど、約200人を一瞬で消し飛ばした威力は普通ではない。
「さてと。」
戦場に一人残された身動きの取れない少女に朱鷺坂は歩み寄ると拳銃を構えた。
「殺るなら、一思いに殺っとくれ。」
覚悟を決めたように少女は眼を閉じた。その瞬間に朱鷺坂は引き金を引いていた。
「きゃぁぁぁっ! 」
それは少女の断末魔…ではなかった。打たれたハズの少女は怪我一つなく立ち上がっていた。
「な、何をした? 」
不思議そうに少女は自分の手を見つめていた。
「俺は幻影分身だけ吹き飛ばすつもりだった。お前を捲き込んだのは不可抗力だ。だから、お前の身体だけ魔導砲で怪我する前まで時間を巻き戻した。とっとと地獄に帰りな。」
「そ、そうはいかないっ! 」
立ち去ろうとした朱鷺坂を少女は呼び止めた。
「まさか一人で俺とやり合うつもりじゃないだろ? 」
「当たり前だ。鬼族は命の恩人に牙を剥くような不義理はしない。この恩を返すまで、付き合わせて貰う。」
あまりに真剣な表情の少女に朱鷺坂は苦笑した。
「勝手にしろ。」
あっさりと許してしまう朱鷺坂にセンリは首を捻った。
「スパイとか裏切りとか心配ないのかね? 」
「だから鬼族はそんな事しないっ! それから…あたしの名前は鬼沙羅だ。お前でもアラネァでもない。これからは鬼沙羅と呼んで…欲しい…。 」
「じゃ、鬼沙羅、猫まんま、引き上げるぞっ! 」
「お、おぅ…。」
「ハイ、団長っ! 」
「あたいらも居るんだっ! 妖怪差別だ、もののけハラスメントだぁ~っ! 」
鬼沙羅はモジモジしながら、蘭々は元気に、そして陽子はセンリになだめられながら、一端、極楽王城へと戻って行った。