~D.O.O.M.~
ー旅団ー
主人公たちがプレイしていたMMORPGにおけるギルドの事
「なんだ、小僧? 」
「オイラの名はセンリ。お嬢の使い魔だ。」
アントリオンと名乗った男の問いに少年は、そう答えた。よく見れば陽子同様、獣の耳と尻尾が生えている。異なる点と言えば、それが狐ではなく猫の物である事と、尻尾が二本生えている事だった。
「忠犬ならぬ忠猫か? 我ら『砂の旅団』初陣の獲物としては安っぽいが…まぁ、いいだろう。貴様から始末してくれる。」
そう言うとアントリオンと名乗った男は二本の剣を構えた。
「これは100万ダウンロード毎に抽選で一本だけ配布された激レア武器だ。それに二度当たった奇跡の男、それがこのアントリオンだ。Double One Of Million.略してD.O.O.M.貴様らを絶望に導くのに相応しかろう? 」
アントリオンと名乗った男が剣を振ると、その姿は200人程に増えた。
「これが武器固有技、幻影分身だ。小僧、貴様一人でいつまでもつかな? 」
そこに響いた突然の銃声が、その場に居た者の視線を集めた。
「ウスバカ、ここから先は俺が相手だ。」
朱鷺坂は少し離れた丘に居た。
「変な所で句切るなっ! 俺のH.N.は薄刃 影狼…じゃなくて、ここではアントリオンだっ! 俺のことを知ってるとは貴様も、あのゲームのプレイヤーか? 」
「貴様程の有名プレイヤーじゃ、ないけどな。」
朱鷺坂は銃をホルスターから抜くと一歩づつ近づいてきた。
「この幻影分身に拳銃では役に立たない事もわからないとは初心者か? 」
歩みを止めると朱鷺坂は薄笑いを浮かべた。
「猫まんま、危ないから下がってろっ! 」
猫まんま。蘭々には、そう呼ばれる覚えがあった。
「マ…団長? 」
「ほら、二股、あんたもだよっ! 」
陽子は、そう言ってセンリの腕を引っ張った。
「貴様の言うとおり、幻影分身を一体づつ相手してたんじゃ埒が明かない。まとめて片付けさせてもらう。超時空転送、魔導砲っ! 」
魔導砲。その名に今度はアントリオンと名乗った男が驚きの表情を浮かべた。
「ゲーム中、唯一のone of all、魔導砲だと? 確かにゲーム中、最大火力のアレなら幻影分身も一撃だ。あの最大スケール、最大重量を転送とは考えたな。だが、発射までの所要時間も最大だと云うことを忘れていないかっ! 」
「超加速充填っ! 発射っ! 」
問答無用で朱鷺坂は引き金を引いた。




