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~華の彷徨~

「貴様等、こんな場所で何をしている? 」

 野営をしていた一行は立派な甲冑の騎士に声をかけられた。

「我等ジュラの一族は流浪の民。三国の境関係なく往来を許されております。御詮議を受ける覚えはございませんが? 」

「貴様が族長か? 」

「はい。ジュラの族長、ハクア・ジュラと申します。」

 ハクアが名乗ると甲冑の騎士はいきなり剣を抜いた。

「我は地獄の六禍戦、業火の鬼炎峰。我が弟、鬼雷崩を退けたという黒の旅団を知らぬか? 」

何故なにゆえ剣を向けなさる? それに此処はまだ極楽の地。如何に六禍戦と云えど詮議の権限はないのでは? 」

「今は戦時いくさどき、我等が侵攻したまでの事。黒の旅団を知っているのか、いないのか? 」

 鬼炎峰の態度にハクアは憤りを抑えるように深く息を吐いた。

「我等ジュラの一族は三国の守秘を義務とし不可侵を権利となす。いずれか一国に加担するような真似は致しかねまする。」

「ならば用は無い。死ねぃっ! 」

 問答無用に鬼炎峰は剣を振り下ろした。ハクアも避け、即死は免れたものの、致命傷は逃れられなかった。

爺々(じじ)様っ! 」

「来るなカレンっ! 」

 背後からの声にハクアは振り向くことなく叫んだ。

「カノンとカリンを連れて逃げるのだっ! 」

「そ、そんな… 」

 だが、ハクアは次の句を告げる事なく鬼炎峰に切り捨てられた。

「カノン、カリン、逃げるわよっ! 」

 カレンは二人の手を引いて走り出した。

「鬼炎峰様、追いますか? 」

「慌てるな。百数えてから追え。狩りがすぐに終わっては、つまらないからな。」

 鬼炎峰は薄笑いを浮かべていた。


 ***


 どのくらい走っただろうか。カリンがをあげた。

「ねぇ、何処まで行くの? あいつら追っかけて来ないよ? ちょっと休もうよ? 」

 確かにカリンの足がついてきていない。だが、カレンには鬼炎峰が簡単に見逃してくれるとは思えなかった。

「カノン… カリンを連れて極楽王城に向かって。」

「えっ!? 」

「デュシス女王なら悪くはしない… と思う。」

「姉さんは? 」

「あたしは… 」

 カレンは振り返ると身構えた。

「時間稼ぐから。早く行って。」

 そこには、いつの間に追い付いたのか鬼炎峰の軍勢がいた。

「なんだ、もう追い付いたのか? まぁいい。とっとと始末して任務に戻るぞ。」

「い、妹たちは見逃してもらえないか? 」

 1分でも1秒でもいい。カレンはカノンとカリンが少しでも遠くに逃げる時間が欲しかった。冷静に考えれば意味のない事かもしれない。それでも、である。しかし、鬼炎峰は返答をする代わりに渾身の一撃を振り下ろしたのだった。

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