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~時空を越えて(後編)~

ー天国ー

天帝アマテラスが統治する常昼の国。

「どこから明日なんだ? 」

 朱鷺坂と陽子の疑問に応えるかのように、扉をノックする音がした。

「どうぞ。」

 朱鷺坂の声を待って、先ほどのメイドが手にガラス張りの箱を持って入ってきた。箱の中には固定された針と回転している円盤が収められていた。

「これは? 」

「この国唯一の地軸計でございます。」

「地軸計? 」

 またも聞き慣れない言葉に朱鷺坂は首を捻った。

「この円盤は、この星の地軸が一回転すると一回転します。目盛りは大きい方から24分割、6分割、10分割となっております。特異点の方は、これが必要と伺っておりますので、お持ちいたしました。」

 つまり24時間計の時計らしい。1日の長さが地球と同じとは限らない。だが、時計も携帯端末も持たずに召喚された朱鷺坂にとっては、これをアテにするしかなさそうだ。

「特異点には必要という事は、この国では? 」

「この国… というか、この世界では目が覚めたら起床時間、眠くなったら就寝時間、お腹が減ったら食事の時間って感じです。」

 きっと以前から特異点の召喚が行われていたのだろう。回答がQ&Aのようにマニュアル化されている感じがした。長年のノウハウとでも、言うべきか。

「君、名前は? 」

「サクヤと申します。」

「では、サクヤさん、アマテラスかイザナが起きたら知らせてください。」

「承知いたしました…。ただ帝や侍従長が呼び捨てなのに、私にさん付けは、お辞めください。」

 サクヤは一礼して部屋を出て行った。目が覚めた時が起床時間というのも、アバウトな話しだが仕方がない。慣れるしかないのだろう。頭の中で状況を整理しながらときさかは、いつの間にか眠りに落ちた。それから、どのくらい経ったろうか。地軸計では6時間程だが、体感的には4、5時間くらいだ。やはり1日の長さが違うのだろう。それに何時に起きても太陽が天頂にあるというのは寝坊した気がしてしまう。

「朱鷺坂様、お目覚めですか? アマテラス様がお待ちです。」

「すぐ行く。」

 身支度は済んでいた。アマテラスの元へ行くとイザナと陽子も待っていた。

「今日はサクヤと市内見物だと聞いたんだが、何か用かい? 」

 相変わらずアマテラスの口調は軽い。緊張させまいとしているのか、それとも地なのか。だが、朱鷺坂にすれば、そんな事は二の次だ。

「大体の状況は俺なりに理解したつもりだ。能力ちからについては、いずれ判るにしても、召喚ばれた理由は知っておきたい。」

 朱鷺坂の質問にイザナが答えようとするのを制してアマテラスが話し始めた。

「この世界にゃ、天国、極楽、地獄と『ごく』と付く、3つの国がある。ここ天国が太陽の国。地獄は常闇の国、極楽は黄昏の国って事になってる。その昔、地獄が最初に特異点を召喚して攻めて来やがった。んで、対抗するために、天国と極楽も特異点を召喚する事にした。」

「つまり、互いの力の均衡を保つためか。だが、何故、俺なんだ? 」

 この質問にはイザナが口を開いた。

「誰が召喚されて来るかは、顕現調書を見るまで誰にも分からんのだ。運かもしれんし、波長かもしれん。他に要因があるのかもしれんが… 」

「要するに、分からない訳か。」

 イザナも頷くしか、なかった。

「それと、これを返しておく。」

 そう言って、イザナから一丁の銃を渡された。

「お主と一緒に顕現した物じゃ。念のため、調べさせたが、弾倉も撃鉄もない。一体、どう使うのやら。」

 それを受け取ると、朱鷺坂が笑いだした。

「いや、すまない。これは、俺の魔力を弾とする魔導小銃だ。」

 それを聞いた陽子も笑いだした。

「あはは、あんたのアバターがゲームん中で使ってる奴、そっくりじゃんっ! 」

 陽子の言うとおり、この銃は朱鷺坂のやっているMMORPGの中で自分の武器として設定している物に間違いない。この時点で、朱鷺坂は自分に付与されたという時空魔法を理解した。無論、アマテラスやイザナには何の事だか、さっぱり分からなかった。

「どういう因果律が働いたのかは、分からんが、ゲーム内の能力が俺の能力らしい。後は実証実験で確認するしかないな。」

「あんた、この状況を受け入れ過ぎだよ? 」

 陽子からすれば、地球ではない事が分かった時点で、慌ててもよさそうだと思っていた。

「夢なら覚めれば終わる。だが、もし現実なら正確な状況判断と的確な行動が必要だろ? 」

 現実の場合はともかく、夢なら覚めれば終わる事には納得した。

「まぁいいや。サクヤさん待たせても悪いし。」

 部屋の外で待っていたサクヤと一緒に朱鷺坂と陽子は市内へと出掛けて行った。

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