~拠点防衛~
「そんな細腕で、よく重くないわね? 」
「見た目は自分だけど、パワースキルは大男だからねぇ。」
美子の疑問に明日香は、慣れた口調で返した。この質問には、飽きる程、答えてきた。
「おや、何やら森の奥が賑やかな気がいたしますね? 」
雪兎の言葉に明日香がハッとなる。
「拠点の方からだっ! 二人とも、急ぐよっ! 」
言うが早いか、明日香は荷物を持ったまま駆け出した。
「見た目は全然違うけど、さっすが黒鬼士… あ、黒姫士だっけ。」
「お嬢様、明日香様の呼び方はともかく、急ぎませんと今宵の宿が無くなるやもしれませんよ? 」
「何それ!? 冗談じゃないわ。雪兎、私たちの寝床を守るわよっ! 」
「御意のままに」
余程、野宿が嫌だったのだろう。美子は脱兎の如く駆け出した。三人が駆けつけた時点で、黒守たちは防御で精一杯だった。
「黒守、黒衛、よく頑張ったっ! 黒護は? 」
「弩黒と一緒に黒夢の警護についてますっ! 」
明日香は頷くと最前列に歩み出た。と同時に美子は黒守と黒衛を回復してから奥へと向かった。
「あら、あんたは行かないの? 」
残った雪兎に明日香が声を掛けた。
「お嬢様より寝床を守るよう命じられておりますので。」
「それじゃ、とっとと追い払うとしようか。」
そんな二人のやり取りを聞いていた敵将が口を開いた。
「追い払うとは言ってくれるじゃねぇか? しかも援軍かと思えば、細っこいのが、たったの三人。異世界から来たんじゃ知らねぇだろうから、教えといてやる。地獄の六禍戦と言ゃぁ、ちったぁ知られた存在だ。その中でも剛将と名高いのが、この轟雷の鬼雷崩だ。よっく胸に刻んで、あの世に行くんだな。」
大人しく聞いていた明日香だったが、ここで大きくため息を吐いた。
「御託は終わった? 今どき、中ボスでも言わないようなフラグ立ててんじゃないわよ。顕現、斬龍刀っ! 」
「ふん、貴様が伏竜を一振りで切り伏せたのは聞いている。だが、こいつならどうだっ!」
鬼雷崩の声に応えるように森の中から雷を纏った巨大な虎のような獣が現れた。
「な…何であんたが襲撃者を連れてんのよ? 」
その獣は明日香には見覚えがあった。ゲーム中に時折現れるレイドボスの一匹にそっくりだったのだ。
「驚いたかっ! 」
鬼雷崩はしたり顔でニヤリと笑うが明日香は動じない。
「言っとくけど、レイドボスなんてぇのは、プレイヤーに倒される為に存在するのよっ! あたしの使い魔、見せてあげるっ!」
そう言うと明日香は斬龍刀を高々と振り上げたのだった。




