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~白狐~

 雪兎の毅然とした態度に玉藻も一瞬躊躇った。

「玉藻、ここは退きなさい。」

 そこには白い狐の半面の男… 白狐が立っていた。

「今、特異点同士で揉めても利は無いからね。噂には聞いていたよ。最強魔法少女、黒雪姫。」

 都は白狐の様子に身構えた。攻撃してくる様子は無い。だが、決して隙も見せてこない。

「そう警戒しなくとも敵意は無いよ、今のところはね。こちらもクロノスのもとへ急いでいるので今日の処は失礼する。玉藻、急ぐよ。陽子君に大分置いていかれたようだ。」

「あんな仔狐なんぞ居らんでも、かましまへんて。」

「人間には、時に体裁も必要なのだよ。」

 そんな会話をしつつ、白狐たちは去って行った。

「なんとも忙しい御仁だ。」

 そう言いながら雪兎は両耳をシルクハットに納めた。主である白美神の前ではあるが、この世界でもウサ耳男子は少々目立つ。

「でも、あんた、こっちで良かったの? 後から来たのが団長でしょ? 」

 明日香の問いに白美神は手を振って否定した。

「いいの、いいの。別にリアルの知り合いじゃないし。ちょっと美声イケボだったけどねぇ。」

「そういや、あんた、名前は? 」

「へっ? 」

 明日香の質問に白美神は一瞬キョトンとした。

「あたしは明日香。奈良明日香。で、黒雪姫が京野都。」

 名乗られて質問の意味を理解した。

「あぁ、確かにアバターならともかく、素顔晒してヴィーナスは恥いやね。美子。白上美子。ヨロシクね。」

「あぁ、それで白美神か。」

 美子のH.N.が自分の名前を捩ったものである事を初めて知った。

「あ、あたしのH.N.の由来なんて、どうでもいいでしょ!? それより、白狐の奴、クロノスに会いに行くらしいよね? 」

「あっ!」

 美子の言わんとした事に都も気づいた。

「あのクロノス?」

「黒雪姫が居て白狐が居るなら、常にランキングトップの『風の旅団(ウィンドレギオン)』の団長マスタークロノスに違いないよ! きっと手を組んでおいた方が得だよ。」

 美子の言う事にも一理ある。力を貸して貰えるのであれば黒夢を守るのも容易くなるかもしれない。何しろ特異点とは戦局を変える能力ちからがあると言う。その特異点は何故か同じMMORPGのプレイヤーから選ばれている。それも能力はゲーム内のままだ。つまりゲーム内最強のプレイヤーはこの世界でも最強の可能性が高いのだ。

「霧黒、一緒に来て。明日香は美子と拠点ベースに帰っててっ! 」

「この買い出しした荷物は? 」

「人手なら、そこに居るでしょ? 」

 仮面を着けた都の口元が、イタズラっぽく微笑んだ。明日香のパワースキルなら一人で持てる事は分かっているのだが。都と霧黒が出立すると美子が憂鬱そうな顔を浮かべた。

「雪兎、あんた執事でしょ? 代わりに荷物持ってよね? 」

「申し訳ないのですが、兎ですので力仕事には不向きでして。それに… 」

 雪兎の視線の先には荷物を一人で抱えた明日香が、さっさと歩き出していた。

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