~黒き意志~
「ところで、どうして黒夢さんは狙われているんですか? 」
状況に流されてしまったが、都には幾つも分からない点があった。
「あなたは団長なんだから呼び捨てでいいわ。一言で言えば私が召喚師だから。黒姫士から聞いたゲームとかいう世界と違って、召喚するのは『人』なのよ。」
確かにゲーム中で召喚出来たのは幻獣くらいなものだ。相手の意思に関係なく喚ばれるのだからヘルプ要請とも違う。
「そして、召喚された装魔と呼ばれる特異点となった『人』は、この世界の戦局を左右する存在。三国の主は即位した時に一度だけ召喚を行う。けれど、召喚師にはその一度という枷がない。まぁ、それだけに歴史的に色々あって、今、召喚師は私を含めて二人だけしか残っていないんだけどね。」
簡単に言えば召喚師が鍵を握っているという事らしい。
「でも、それなら国が黒夢を守ってくれそうなもんでしょ? 」
「それは… 平たく言えば極楽の先代女王と喧嘩してね。」
うつむく黒夢に都は、それ以上聞くのをやめた。
「で、黒夢を狙ってるのは三国とも? 」
「いや、それは地獄だけ。かといって、他の国にも助けを求められなくて。」
「それで明日香を召喚んだって訳か。」
都も、ようやく、ある程度の現状を把握した。
「じゃ、あらためて… 我等新生『黒の旅団』は三国の平定まで召喚師黒夢を守り抜く事をその黒き意志とする。」
都の言葉に皆が同意した。
「ところで拠点は? 」
「逃げる身だから、そんなもの無いよ? 」
明日香の答えに都は少し考えた。
「流浪の民ってのもいいけど、ゲーム内と違ってリアルに食事もしないとだし、お風呂も入りたいもん。この世界ってゲーム内のスキルは使えるんだよね? 」
「そうだけど? 」
「じゃ、試してみよっかな。」
都は明日香に確認をすると地面に手を当てた。
「敵の陣地じゃないなら… 団長権限、拠点作成っ! 」
不意に地面から柱が生えてきた事に明日香以外の皆は驚いた。
「レベル1の拠点なら、お金も掛からないし10分くらいで出来るハズだしね。」
「そういや、旅団を創設すると敵陣以外ならどこでも拠点を作成出来るんだったけ。」
「うん。でも、モンスター倒しても、お金にならないみたいだからレベルアップは人力かなぁ? 」
「いいとこ実戦経験って経験値くらいかな。」
都と明日香の会話は黒夢たちには何の事か分からなかった。しかし、この未知数こそが、この世界を救いも滅ぼしもする力である事を誰よりも黒夢は理解していた。




