ハウツー・お話の導入部での引き込み方
なかなか人様に読んでもらえず苦慮してはいませんか?
それはお話の一番最初、導入部分で失敗している可能性があります。
いくら気をつけてもなかなか上手く作れない、小説の入り口部分の作り方を解説します。
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・前置き
当然ながら世の中には様々な読者がいます。
50点でも笑って許してくれる方から、100点満点を追い求める方まで多種多様です。
初見作品に対する姿勢もまたそれぞれ。
あら探し始める方もいれば、良いところにガンガン食いついてくれる聖人君子まで。
しかしこれらは裏表に過ぎません。
どちらにしたところで、読者は己の時間をその作品に消費するだけの価値があるのかどうか、話の導入で見定めようとするのです。
冒頭で切られては意味がありません。気を使いましょう。
では、具体的なお話へ。
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・プロローグとは難しいもの
作者視点に立ちましょう。
当然ながら作品はプロローグから書き出されます。
頭の中の構想を、作品という形で0文字の世界に加筆してゆく段階です。
小学校の頃、作文とかありました。
この作文の第一行目がまるで書けずに、題名と名前だけ書いて赤点食らう。……なんてことも人によってはあったかもしれません。
それだけ0文字の世界に何かを積み上げてゆくというこの段階が、とても難度の高い作業という例えです。
で。そこなんです。プロローグって難しいのです。
難しいということはそれだけ、執筆時の思考力を持っていかれています。
そうなると確実に平時の貴方よりクオリティの下がった文面が出来上がると思って下さい。
つまりこういうこと。
「冒頭のクオリティは大事。だが冒頭のクオリティは自動的に平時より下がる」
これが一つの現実です。
なら後から改良の手を入れるか、せめて冒頭部だけはじっくりペースで作るしかありません。
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・先にプロット&後からテコ入れ
ダラダラ書くの好きじゃないので、自分の場合は後から調整を入れます。
またプロット段階で意識してメモっておくのも大事です。
プロットにメモっておけば、それだけ執筆時の思考力に余裕を持たせることが出来ます。
いわばプロットは作り置き、仕込みの性質も持ってますので、導入部を良くしたいならそこだけでも丁寧に組むと良いです。
で、さらに後からテコ入れします。
そうなるともう一つの事情とぶつかることになるでしょう。
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・今さら冒頭テコ入れとか無理!
どうしようもねぇディズティニィー、改変不能の時系列。それが出来たら苦労はしねぇ!
ある程度書き進めると、変えようにも変えれなくなります。投稿しちゃってあったらさらに大変、読者を考慮すると微調整程度しか行えません。
冒頭展開とは、いざ書き出してしまうと取り返しが付かないのです。だからなおさらタチが悪い!
調整しなければ読者の引き込みに難が出る部分であるというのに、その調整がやたらに難しいのです。
・
なら時系列をいじりましょう。
引き込みの弱いプロローグの代わりに、話の山場を前に持ってきちゃうのです。
変えることが出来ないなら追加すれば良い。という安直な発想です。
多少ややっこしくはなります。
ですがパンチの弱い導入よりは遙かに良い。
話の始まりというのはだいたい地味なものです。その地味な内容で読者を引き込むのと、いきなり(ぷち)クライマックスで引き込むのでは単純な威力が違います。
さらに乱暴な言い方をしましょう。
どのお話も、始まりは全て似たような内容になります。
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主人公がいました。
主人公が生活していました。
その主人公が話の主軸となる何かと出会いました。
主人公の物語がいま始まる――
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乱暴に圧縮してしまえばこんな感じ。
使い古されたパターンの上をなぞって進むだけで、何も意識せずに書けば確実に埋もれます。
いかに美しく、文才豊かに描写しようとも、それそのものが地味なのは否めません。工夫しましょう。
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・具体的な部分:悪手
では悪手潰しから始めます。これは特にあら探しをする人種に対して有効です。
ステレオタイプに解釈すれば、いわゆる高二病とか意識高い系とか揶揄される方々です。
かといってこれが少数派かと言うとそうでもない。
この手のタイプは何かの熱狂的なファンになることが多く、その崇拝する作品をハードルにしてえり好みします。
味方にすれば感想をまめに送ってくれるかもしれないです。
・悪手:設定語り&キャラ解説
ここから始めるのは大変危険です。傲慢でしょうけど非推奨と断言させていただきます。
SF系とか、設定に面白さが詰まったお話となると半分しょうがない部分もあるのですが……あまり器用とは言えません。
胸を熱くさせる設定語りOPもあるっちゃあるんですがね。それを自分も出来るとは思わない方が良いです。
例にするとこんなヤツ。
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XX帝国がXX王国に侵攻、これに便乗して南の蛮族たちうんたらかんたら~~。
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B.C.1352年 XX生まれる
B.C.1361年 XX没
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下のヤツは年表プロローグってやつで、さらにヤバいやつです。
読者はまだ物語設定に興味なんてありません。
心の中のロードオブザリング世界を持っているのです。作者が考えたその亜種みたいなのを語られても、ヘーソウナンダーくらいしか感じない現実があるのです。
なので、設定語りの厚みは極力薄くしておきましょう。こことても、大事。
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・悪手:開幕エロ&イチャイチャサービス
ここもよく勘違いするので押さえておきます。
ぶっちゃけるとアレです。これは、町のアベックが、公衆の面前で、過激なイチャイチャをしているところを眺める図に等しいということを。
とてもとてもとてもまずい。どれくらいヤバいかというと、即ブラバの危機と言いましょう。
こういうのはですね、読者が主人公やキャラに感情移入してからやるべきことです。
イチャラブとか、エロエロとか、ついでにハーレムうひゃーとかは、読者が主人公を認めた先にあるのです。
少し脱線しますが、モテモテイチャイチャエロエロは読者好感度の低い主人公と相性が悪いです。
クズければクズいほど読者側からするとなんか、ムカつきます。
とにかくエロかったり全力萌え路線の冒頭は止めて、盛り上がったところでお風呂会を入れて下さいお願いします、挿し絵も下さい。
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・悪手:分厚過ぎる自分語り
主人公を主人公にして進めるんだから説明必要じゃん?! せっかくの一人称だし語らせちゃおう!
というわりかし多くの作者が陥る罠、それがこれ。自分語りを盛り過ぎるというケース。
もちろん読者は主人公に興味を持っていますから、情報は欲しいところです。
自分語りはバランスです。
ここは日常会話にあてはめましょう。
例えば、自分のことばっかり話しまくる人を想定しましょう。
そいつのことを、貴方はどう思いますか?
「うるせぇそんなことより鮫の話しようぜ!!」
って日常会話なら返せるのですが、小説だとそうはいきません。話の長いオバちゃん的に、ダラダラダラダダダダダダダーーッッ! って語られたらそりゃ逃げます。
って話。
大事なのは話の展開部分なので、主人公の描写については、冒頭に押し込まずやや不足する程度にしましょう。そこは我慢なのです。
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・セオリー:感情移入&好感度調整
読者が主人公に好感を覚えるように仕向けましょう。
好感にもいろいろあります。憧れ、共感、格下感。多種多様です。
共感が一番使いやすいです。
さてこれも現実世界の話になりますが、貴方が他人に好感を持つ瞬間ってどこにありますでしょうか?
趣味や好みが同じだったり、立派な価値観や行動をしていたり、実際に親切にされたり、飯を奢ってくれたりする人も素敵です。
読者もまた同じものを主人公やキャラに向けています。
よくある本好き主人公なら、本の好きな読者が釣れるでしょう。
コイツ俺と同じだー! と思わせたらこっちのもんです。
主人公に興味や好意を持つよう仕向けた描写を、意図的に少しだけ混ぜ込むと読者も入り込みやすくなります。
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・セオリー:具体的な目標設定
「この物語は一体何なのだろう? 知りたい」
言語化すれば読者はこんな感情、欲求を持っています。
ならば早い段階で案内すべきです。
目標という形で話の流れを指し示したり、とにかくコレはこーいうものなのだと、全体の形を最初に悟って貰うのです。
これをやっておくとわかりやすいです。
そういうものなんだね! って前提で読んでくれます。長期連載するならばやっておいて損はありません。
それだけ書く方も読む方も話を追いやすくなります。
でも別にやらなくてもいいやつです。
話のテーマとか、目標設定というのは、いわゆる幼児の歩行機ようなものでして、それ無しで上手く歩けるなら無くても全然OKです。
提示すると楽。ってだけで。
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・以上、まとめ
冒頭エロダメ、過度な自分語りダメ、舞台設定描写はグッと我慢。
読者が主人公らキャラに感情移入するよう仕向けましょう。鍵は共感。格下感。憧れ。
早い段階で目標設定しておくと楽だよ。読み手も書き手も。
お話のプロローグは難しい。必然的に質が下がるものなので注意して作ろう。
テコ入れするなら時系列いじって、クライマックス的なもの頭に追加しちゃえ。
物語の序盤展開なんてどの作品も大体同じ。目立ちたいならその分工夫しよう!
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これを読んだところで現在連載中の作品に導入するのはちと無理ありますが、でも導入が面白くなれば読者も作者もみんなが嬉しいことです。がんばっていきましょう。
本当に話の導入作りというものは難しいです。
苦労したり悩んだりするのは当たり前です。誰もが苦しい部分ですので、そこを上手いことやって他作者さんに差を付けよう!
ネット小説の性質からして、極めて重要! プロローグから読者のハートをつかめる作品が勝利だ!
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こんな文でもし迷わせてしまったら申し訳ないです。
それができたら苦労しねぇよっていつもの理想論でございました。
でも、なかなか読んで貰えず苦悩するよりは、プロローグ部分がんばって調整した方がよっぽど良いと思うのです。
いつもの、それが出来たら苦労はねぇ! でした~!




