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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
6章☆願いを込めて、選ぶんだ!の巻
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1-愛でるのじゃ

黒ドラちゃんたちが、

始めてお買い物に出かけます。


向かう先は王都のお店。


いったい何を買うんでしょうね?


では、では、少しだけお付きあいください。

黒ドラちゃんとドンちゃんは、古の森の外れでワクワクしながらブランのことを待っていました。

今日は、前に約束した「街でお買い物」をするんです。

ブランと一緒に魔法の馬車に乗って、お出かけすることになっていました。


「ブラン、まだかな~?」

「まだかな~?」

黒ドラちゃんとドンちゃんが北の方を見ながら早く早くと思っていると、後ろの方から「おーい!」という声が聞こえてきました。

振り向いてみると、ラウザーがしっぽを振り振りしながら飛んでくるところでした。

背中に誰か乗せています。

あれ、しかも二人も乗せているようです。


ラウザーは黒ドラちゃんたちのすぐそばに降りました。

背中から、この前の舞踏会で会ったラキ様という綺麗な人と、モジャモジャした黒髪でローブを着た男の子が降りてきました。


「ラウザー、どうしたの!?今日はあたしたちこれからお出かけしちゃうから、せっかく来てくれたけど遊べないんだよ。ごめんね」

黒ドラちゃんが申し訳なさそうに言うと、ラウザーが笑顔で答えました。

「違うよ、黒ちゃん。ブランから聞いたけど、今日は街へ行くんだろ?」

「うん。お買いものするの!」

「そうだよな、それで俺たちも一緒に行こうと思ってさ」

ラウザーがご機嫌で言いました。

「一緒に?本当!?やったあ!」

黒ドラちゃんは嬉しくて、その場でぴょんぴょん跳ねました。


「ラウザー、その子、誰?」

ドンちゃんが興味津々で黒髪のモジャモジャをじっと見ています。

“複雑に入り組んでるところに潜りたくなる気持ち”で、うずうずしているようです。

「あ、こいつね、魔術師見習いくんのリュング。砦の仲間さ」

ラウザーが紹介すると、リュングくんはぺこっと頭を下げました。

「は、初めまして、古竜様。私は南の砦に魔術師見習いとして派遣されております、リュングと申します」

「あ、はじめまして」

黒ドラちゃんとドンちゃんもあわててごあいさつしました。

ごあいさつしながらも、ドンちゃんはリュングの頭から目を離しません。

「あ、あの、私の頭に何か……?」

リュングが不安そうに尋ねると、ドンちゃんはハッとしたように「う、ううん。なんでもないの!」とあわてて目をそらしました。


すると、ラウザーの隣にいたラキ様が、ずずいっと前に出てきてドンちゃんの前にしゃがみこみました。


「ええ、なんとまあ可愛い生き物であろうか?おぬしは城で素晴らしき舞踏を披露していたうさぎではないか?近う寄れ」

そう言いながらドンちゃんの方へ手を伸ばして抱き上げようとしました。

けれど、ドンちゃんは突然目の前に現れたラキ様にびっくりして、黒ドラちゃんの背中へ隠れてしまいました。


ラキ様の眉間にシワが寄ります。

小さな稲光がピカピカと体の周りを飛び跳ね始めました。


「あ、あのさ、ドンちゃんは恥ずかしいんだよな?、な?な?」

ラウザーがあわてて黒ドラちゃんとラキ様の間に入りました。

でも、ラキ様の目はラウザーを通り越して、黒ドラちゃんごとドンちゃんを射抜くように見ています。


「やれ子ウサギよ、可愛さ余って何とやらじゃぞ。早くこちらへ来ぬか?」

そう言いながらラキ様が手を伸ばすと、黒ドラちゃんが止めに入りました。

「あ、あの、ラキ様、ドンちゃんは恥ずかしがり屋で怖がりなんです!ちょっとだけ待ってあげてください!」


するとラキ様は初めて黒ドラちゃんに気付いたようでした。

今まで、黒い壁だとでも思っていたんでしょうかね?


「ふむ。おぬしは誰じゃ?その姿は……おぬしも竜神か?さてずいぶんとコロコロしておるな、ほれほれ」

そう言いながら、ラキ様は黒ドラちゃんのぽってりしたお腹をぽむぽむと叩きました。

「えっと、その、あの――」

黒ドラちゃんはお腹をぽむぽむされながらだんだんと後ろへ下がって行きます。

「黒ドラちゃんがんばって!」

後ろからドンちゃんが応援してくれます。


「ほお、銅鑼とな?確かに銅鑼のようであるな、ふむふむ」


なんだかラキ様は変な風に納得しちゃったみたいです。

機嫌良さそうに黒ドラちゃんのおなかをぽむぽむと叩いています。

後ろの方ではリュングがあわあわしながら「古竜さまがぁ……」とかつぶやいていますが、ラキ様はおかまいなしです。


「銅鑼子よ、おぬしの腹はなかなか良い感じだぞ。さて、背中のふわふわをこちらに寄こさぬか?」

そう言いながら黒ドラちゃんの前に手を差し出します。

黒ドラちゃんはどうしようかとラウザーの方を見ました。

けれどラウザーは尻尾をにぎにぎするばかり。

視線は、ラキ様と黒ドラちゃんの間を行ったり来たりするだけで、頼りになりそうにありません。


ドンちゃんは黒ドラちゃんの背中でぎゅーっと小さくなっています。


「あ、あの、ラキ様、もしドンちゃんを渡したらどうするつもりですか?」

黒ドラちゃんがたずねると、ラキ様は当然のように答えました。

「愛でるのじゃ」

「めでる……?」

黒ドラちゃんとドンちゃんがコテンと首をかしげます。

めでるってどういうことでしょう?

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