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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
5章☆見つけるのって大変なんだ!の巻
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15-初めての舞踏会

おはようございます。

昨日はゆっくり眠れましたか?


それでは、黒ドラちゃんたちと一緒に、

舞踏会へ出かけましょう!

黒ドラちゃんが身に着けるドレスや靴や髪飾り、ドンちゃんのリボンも、ゲルードのお屋敷に準備してありました。

今日は、一度ゲルードのお屋敷によって、それから王宮へと向かうのです。

ブランもいつものように、森の外れまで迎えに来てくれています。

黒ドラちゃんとドンちゃんは、初めての舞踏会に期待と不安を膨らませながら、魔法の馬車に乗り込みました。



ゲルードのお屋敷に用意されていた黒ドラちゃんのドレスは、白いふんわりしたドレスでした。

よく見ると、ところどころに白い魔石で作られたビーズが散りばめられていて、とてもキレイです。

「わあ!あたしこんなきれいなドレス着ちゃって良いのかなあ!?」

黒ドラちゃんはお目々をキラキラさせながらブランにたずねました。

「王妃様が、今日は黒ドラちゃんとドンちゃんは舞踏会デビューだから、白が良いんじゃないか?って」ブランが答えてくれます。

靴もブランの魔石で作られていました。

履いてみると黒ドラちゃんの足にぴったりと合って、まるで履いていないみたいに軽いんです!

「これ、すごいね、ブラン。これならいくらでも踊れそうだよ!」

黒ドラちゃんはドレスを着て靴を履いて、その場でクルクル回って見せました。

ブランもとても嬉しそうです。

そして、いつものように、エメラルド色の魔石で出来たネックレスと、同じ色の髪飾りをつければ黒ドラちゃんの準備は完了です!

黒ドラちゃんの髪も、今日はクルクルに可愛らしくカールさせています。

ブランが用意してくれた髪飾りは、お花の形をしていました。

「あ、これってマグノラのお花の形に似てるね!」

黒ドラちゃんが嬉しそうに言いました。

「うん。今日の為に新しく作ったんだ。前に黒ちゃんがマグノラの花のこと、とてもキレイだって言っていたのを思い出して」

ブランがちょっと照れながら教えてくれました。

「ありがとう!ブラン。……そういえば、今日はマグノラさんも来るんだよね?」

「ああ、そういえばみんな呼ばれているはずだけど……マグノラは国の行事より村人のお産を優先したりするから、わからないな」

「そうなの!?」

黒ドラちゃんはびっくりしましたが、確かにそれってマグノラさんらしいな、とも思いました。

「とにかく、舞踏会へ行ってみればわかるよ。ラウザーも来てるはずだし」

「そうだ!ラウザーにも会えるんだよね!?やったあ、楽しみだなあ」

そんな話をしていると、隣の部屋で準備を終えたドンちゃんが現れました。


「!」

黒ドラちゃんはびっくりしてしまいました。

だって、だってドンちゃんも真っ白なドレスを着ているんです。

そして、ドンちゃんのドレスには、リボンの代わりにところどころに灰色のフワフワしたボンボンが飾りつけられています。

「へ、変かな?」

ドンちゃんが自信無さ気に聞いてきました。

「ううん、すっごく可愛いよ!!そのドレスすごく似合ってる!それに、そのボンボン可愛いね」

「本当?ありがとう。これね、食いしん坊さんが作ってくれたの。食いしん坊さんの毛を使って作ってあるんだって」

「へえー、確かにあれだけモフモフしてたら、このくらい作れそうだね」

黒ドラちゃんとドンちゃんはニコニコしながらボンボンを手の平でコロコロさせました。


そこへ、黒い蝶ネクタイをした食いしん坊さんが現れました。

ボンボンを作ったせいか、すこしモフモフが抑え目になっています。

いつもは隠れて見えないブルーの瞳が、今日ははっきり見えていて、なんだか別人ならぬ別ウサギのようにキリッとしています。

「準備は良いかな?マイ・プチ・レディたちよ」

食いしん坊さんが気取って聞いてきます。

「はい」

黒ドラちゃんもドンちゃんも、ちょこんとお膝を曲げて、ドレスを軽くつまんで、淑女の礼をしました。

あまりの可愛らしさに、ブランも食いしん坊さんも見とれてしまいました。

そして、同時にハッと我に返ると、それぞれにエスコートして、お城へ向かったのでした。



お城では、たくさんの可愛らしい娘さんが、スズロ王子の登場を待っていました。

今日の舞踏会で、王子が花嫁を決めるらしいというのは、特に正式な発表をされていたわけではありませんでした。

けれど、噂が噂を呼んで、今日の舞踏会には国の内外から参加できる限りの若い娘さんが集まってきているんじゃないか?ってくらいの大盛況です。


あれほどカモミラ王女が欲しがっていた、金の髪に宝石のような瞳を持つ娘さんも一人や二人ではありません。

でも、肝心のカモミラ王女の姿はどこにも見当たりません。

ブランにエスコートされながら、黒ドラちゃんはだんだん不安になってきました。

だって、あのドンちゃん誘拐事件の日から全くカモミラ王女に会えていないんです。

「ねえ、ブラン、カモミラ王女もドーテさんもいないね」

黒ドラちゃんがキョロキョロしながらつぶやくと、ブランも「うーん。そうだねえ」と答えました。

ブランもさっきから探してくれていたようです。

ドンちゃんは食いしん坊さんと一緒に、若い娘さんたちから「可愛い!可愛い!」と囲まれてしまって、別行動になってしまいました。


そのまま、黒ドラちゃんはブランと一緒に王様とお后様へご挨拶する列に並び、進んでいきます。

やがて、黒ドラちゃん達の順番がやってきました。

前に会った時と同じように、相変わらず王様は威厳があり、王妃様は妖精のように華奢でとても綺麗でした。

「あ、あの王妃様、今日はカモミラ王女は……」

あらあら黒ドラちゃんたら、せっかく覚えたご挨拶もすっかり頭から消えてしまって、気になることを真っ先に聞いちゃいました。

でも、王妃様はそんな黒ドラちゃんに優しく微笑むと「カモミラ王女のことを心配してくれてありがとう、黒ドラちゃん。でも安心してくださいね」と言いました。

横で王様もうなずいています。

ごあいさつはごく短い時間しか取れない為、黒ドラちゃんはそれ以上お話が出来ませんでした。

でも、その場を離れる時に、王妃様はもう一度黒ドラちゃんに向かって、しっかりうなずいてくれました。

安心して待っていてね、というように。


やがて一通りみんなのご挨拶が終わり、スズロ王子の登場が告げられました。

周りの娘さんたちから一斉に熱い視線が集まります。

すると、正装をした王子が現れました。

けれど一人ではありません。

一人の美しいお姫様をエスコートしています。

そのお姫様は、茶色で優しそうな大きな瞳、ふんわりした茶色の髪を大きな白いマグノラの花で綺麗に飾り付けていました。

「カモミラ王女!」

黒ドラちゃんはびっくりして大きな声で叫んでしまいました。

周りの人たちもその名を聞いて驚いています。

ノーランド国のパッとしない末姫様が、見違えるように美しく、その場に登場したのです。

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