表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
5章☆見つけるのって大変なんだ!の巻
61/297

4-いばらは楽しい♪

ブランとゲルードが頭を悩ませている頃、何も知らない黒ドラちゃんとドンちゃんは、楽しくおしゃべりしながら美味しいお茶とお菓子を味わっていました。

けれど、ブランとゲルードがなかなか現れないので、だんだんと座っていることに飽きてきました。


キョロキョロと部屋の中を見回していると、置かれている色々なものに触ってみたくなります。

でも、なんとかじっと我慢していると、そばに仕えてくれていた侍女さんが「お庭を散歩されますか?」と声をかけてくれました。


「良いの?」


黒ドラちゃんとドンちゃんが瞳をキラキラさせながらたずねると、若い侍女さんが笑いながら庭の説明をしてくれました。

「こちらの部屋の前に広がっている中庭は、低めの生垣でぐるっと囲まれております。その生垣さえ越え無ければ、大丈夫ですよ」

それを聞いて、黒ドラちゃんとドンちゃんは庭に出て見ることにしました。


中庭には背の低い木がバランスよく植えられ、綺麗なお花もたくさん咲いています。

黒ドラちゃんは、今度来るときにはクマン魔蜂さんも一緒に連れてきてあげたいな、と思いました。

少し歩いているうちに、塀のように整えられた緑が見えてきました。

緑の塀は、黒ドラちゃんの肩くらいまでの高さでずっと続いているように見えました。

植えてあるのは茨のようです。

(あれが生垣かなあ?)

黒ドラちゃんは、侍女さんに言われていた通りにドンちゃんと元来た方へ戻ろうと思いました。

ところが、茨の囲いを見たとたん、ドンちゃんの目がキラリン!と光り、囲いの方へすごい勢いで走り出しました。

「ドンちゃん!?」

あわてて黒ドラちゃんはドンちゃんを止めようとしましたが、ドンちゃんはあっという間に茨の中に消えていきます。


「黒ドラちゃん!ここすごいよ!すごいよ!すごーい!」

そう叫ぶドンちゃんの声がどんどん遠くなっていきます。


「ドンちゃん、ダメだよ!これって越えちゃいけないって言われた生垣だよ!?ドンちゃん!」

けれど、もうドンちゃんは近くには居ないようです。

もう黒ドラちゃんはどうしたら良いのかわからなくて、その場で泣き出してしまいました。




茨の囲いにもぐりこんだドンちゃんは、どこまでも続くように感じる長い茂みに大興奮していました。

右に左にゆるくカーブを繰り返しながらしばらく走り続け、ふと気がつくと黒ドラちゃんからずいぶん離れてしまったようです。

こわごわ茨の生垣から顔を出してみると、そこは中庭とは全く違う、広い緑の庭が広がっていました。


「黒ドラちゃん!」

呼んでみても返事はありません。


「く、黒ドラちゃあん……」

知らないお家で生垣に夢中になって迷子になるなんて、思ってもみませんでした。

キョロキョロと見回すと、背の高い木がまばらに植えられています。

ぐるっと回りを見回してみると、ゲルードのお屋敷が離れたところに見えました。

いつの間にかずいぶん屋敷から遠ざかってしまっていたようです。


もう一度、今出てきた茨の中に戻ってみよう!

ドンちゃんはそう考えて茨の生垣に飛び込みました。

ところが、ボフンッ!と何か柔らかいものにぶつかって、跳ね返されてしまったのです。

コロコロコロン!と転がったところでようやく止まり、生垣を振り向いて見ると、中から灰色のモフモフしたものが這い出てくるところでした。


「ふう~、やれやれ吾輩としたことが、茨なんぞに夢中になってしまうとは……」とかなんとか言いながら、ブルッと体を震わせてモフ毛に着いた草を落としています。

良く見てみると、灰色モフモフには長いお耳がありました。

丸い尻尾もついています。

ついでに黒くて小さなお鼻をひくひくさせています。

そして「この匂いは、ノラうさぎか?まさか?」と言いながらドンちゃんの方を見ました。


「ち、違うもん!野良ウサギじゃないもん!あたし、古の森のドンちゃんだもん!」

灰色のモフモフはドンちゃんの倍くらいの大きさでしたが、負けるもんか!とドンちゃんはがんばって大きな声を出しました。

「いや、お前はノラうさぎだろう?」

灰色のモフモフはどんどん近付いてきます。

ドンちゃんはギュッと縮こまりましたが「違うもん!」と、なんとか声をあげました。


「おかしいな、お前は絶対にノラうさぎだ。私と同じ」

灰色のモフモフにそう言われ、ドンちゃんは目を丸くしました。

だって、このモフモフは金の鎖のついた片眼鏡をしているんです。

とても野良には見えません。


「あなたは野良なの?そんなキラキラした眼鏡してるのに」

ドンちゃんが不思議そうに言うと、ちょっと間が空いてから灰色モフモフは大声で笑い出しました。

「ノラって野良犬や野良ネコの野良だと思ったのか?違うぞ、おちびちゃん」

「えっ!?違うの?」

ドンちゃんが聞き返すと、灰色モフモフは胸を張って答えました。


「ノラうさぎとは、ノーランド魔ウサギのことである!」


どうだと言わんばかりの灰色のモフモフの耳に「へえー……」というドンちゃんの平坦なお返事が沁みました。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ