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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
4章☆貝をお耳にあてるんだ!の巻
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6-『りありゅうめ!』

ドンちゃんと一緒に森の外れに出てみると、もうブランとラウザーは人の姿になって待っていました。

魔法の馬車もそばに停まっています。

馬車の横にはゲルードが馬に乗って待っていました。


「黒ちゃん、ドンちゃん、おはよう。準備は良いかな?」

ブランに尋ねられて、黒ドラちゃんとドンちゃんは「良いよ!」と一緒に応えました。


黒ドラちゃんはお決まりの「ふんぬっ!」っていう掛け声をかけると、女の子に変身しました。

もう12~3歳くらいの女の子です。

黒くて艶やかな髪に健康そうなピンク色のほっぺ、明るい若葉色の瞳は長いまつげに縁取られています。

手足もすんなりと伸びて、だいぶお姉さんぽくなりました。

白いマントの下には、今日はストンとした何の飾りも無い茶色いワンピースを着ています。

編上げのブーツも茶色、そしてくるっと回って見せると「ドンちゃんとお揃いにしたの!」と言いました。

でも、その胸にはキラキラ光るエメラルドのペンダントがありました。


「あ、黒ドラちゃん、それってブランのくれた鱗と同じだね」

ドンちゃんがさっそく気づきました。


ラウザーがブランのことを肘でつついています。

ブランはラウザーにやり返してから、照れたように黒ドラちゃんに言いました。

「黒ちゃんが人間になった時には、ペンダントになるようにしてあるんだ。どうかな?」

黒ドラちゃんはキラキラ光るペンダントを何度も陽にかざして眺めてから「とってもキレイ」とつぶやきました。

それを見てブランはほんのり頬を染めています。

横でラウザーが「りありゅうめ!」とつぶやきました。


「りありゅうって、なあに?」


ドンちゃんが不思議そうな顔でたずねると「いや、その、なんでもない!」急にラウザーはそわそわとしだしました。


「よろしければ、そろそろ出発いたしましょうか」

ゲルードが声をかけてきました。

気がつくと、ゲルードのそばに馬車がもう1台停まっていました。

黒ドラちゃん達が乗る馬車よりも大きくて、でも飾りはほとんどついていません。

中には兵士さんたちが何人も乗っています。

これも魔法の馬車だということでした。

やはり竜がまとまって三匹も南の端まで行くのには、兵士さんたちが付いていく必要があるみたいです。


みんなで馬車に乗り込むと、ゲルードが外から声をかけてきました。

「では、出発いたします」

「えっ、待って待って、ゲルードは馬車に乗らなくても良いの?」

黒ドラちゃんが驚いて声をかけると「私一人であれば、馬に乗ったまま砦まで魔法で移動できます」

すぐにゲルードが答えます。

「へー!すごいね!さすが国一番の魔法使い!」

黒ドラちゃんとドンちゃんが感心していると「さ、行こ、行こ」外で得意そうにしているゲルードを置き去りにして、さっさとブランが馬車を出発させました。


馬車は走り出してすぐに、ガタンっとちょっとだけ揺れました。

そして、窓の外に目をやると、そこにはすでに森のそばとは全く違う景色が広がっていました。

後ろに灰色の石で出来た門が見えます。

砂の中に門だけが建っていて、馬車はそこから出て来たようでした。

あれにブランの魔石が使われているということでしょう。


砂、砂、砂、とにかく見渡す限りの砂です。


「わー!何ここ!何ここ!何ここ!?」

黒ドラちゃんとドンちゃんは興奮して馬車の中で大きな声で言いました。

ラウザーが得意そうに「ここは南の砂漠さ。俺の棲家だよ」と言いました。

「えっ!?、どこ?どこがラウザーのおうちなの?」

黒ドラちゃんとドンちゃんはお家らしきものを探してキョロキョロしましたが、見つけられません。

「このへん全部、俺のうちみたいなもんさ」

ラウザーは得意そうです。

「えー!こんなにひろいおうちなの!?」

黒ドラちゃんもドンちゃんもびっくりしました。

「でも、ラウザー、ここって木もお花もないし、可愛い系のみんなや蜂さんみたいな虫もいないね」

「う、うん……」

「ラウザーだけしかいないの?」

黒ドラちゃんとドンちゃんに見つめられて、ラウザーは尻尾をにぎにぎし始めました。

っていうか、あれ、今人間の姿じゃなかったっけ?


「ラ、ラウザー、尻尾出てる!」

黒ドラちゃんに言われて、ラウザーはあわてて尻尾を消しました。


「ラウザーは陽の気を集める竜なんだ。だからラウザーの住む場所には雨が降らない」

ブランが教えてくれます。

「そうなんだよ」

なんだかラウザーが落ち込んだように言いました。

「俺ってばお天気にするくらいしか能力が無いからさ。お祭り竜なんてあだ名付けられちゃって」

「お祭り竜?なんで?」

黒ドラちゃんとドンちゃんがコテンと首をかしげました。

黒ドラちゃんの頭の上でクマン魔蜂さんも斜めになってます。


「人間がさ、何かお祭りごとをしたい時、俺を呼ぶんだ。そうすれば絶対にお天気だから」

「なるほど!」

黒ドラちゃんのお膝の上でドンちゃんが喜んで飛び跳ねます。

「良いね!お祭り竜、良いよねえ?」

ドンちゃんがタンタン飛びながら言いました。


「うん、そうだよね。ラウザーはお祭り竜って呼ばれるの、嫌なの?」

黒ドラちゃんがたずねると、ラウザーは窓の外を見ながらぽつりぽつりと話し出しました。






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