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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
4章☆貝をお耳にあてるんだ!の巻
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4-馬車でビューン



「それにしても、こんなに朝早くから、どうしてゲルードが黒ちゃんのところにいるんだよ」

ブランが不機嫌そうに言いました。


「あ、ゲルードはね、クマン魔蜂さんとの約束を果たしに来てくれたの!お花いっぱい植えてくれたんだよ!」

黒ドラちゃんがそう言うと、ブランも周りに植えられた花に気づきました。

「あ、そうか。マグノラのところで約束したんだっけ。ゲルードにしては早いな。マグノラ効果かな」

ブランが可笑しそうにつぶやくと、ゲルードが咳払いをしました。

「もともとクマン魔蜂様たちには蜂蜜のお礼を、と考えておりました。華竜殿にせっつかれたからではございません」

「でも、マグノラさんのところで、蜂に知り合いはいない、とか言ってなかったけ?」

黒ドラちゃんが言うと「ゴホンゴホンっ!」とわざとらしく咳き込んでゲルードが話を切り替えてきました。


「輝竜殿から南に行くお話を伺いまして、良い機会ですので私もついていく事にいたしました」


「えっ!」

ブランとラウザーが同時に声を上げました。

「なんで!」「どうして!」

どうやら二匹とも不満のようです。


「実は少し前に南の国境沿いに派遣している隊の魔術師から、気になる報告がありまして」

「なんだい?」

ブランが真面目な顔をして先を促します。


「なんでも、海がある方向から大きな魔力の揺らぎが感じられた、と言うのです」

「魔力の揺らぎ、か。それは確かに一度確かめるべきだな」

ブランがうなずきます。

「あ、でもそれならラウザーが真っ先に気づくんじゃないのか?なあ、何か思い当たること無いか?」

ブランがたずねると、ラウザーは尻尾をキュッ!ゆる、キュッ!ゆる、と落ち着き無くつかみながら「な、何もない……よ」と答えました。

「本当か?人間の魔術師が感じられるくらいのゆらぎだぞ、竜が気づかないはず無いだろ?」

ブランがなおもたずねるとラウザーはそっぽを向いてしまいました。

「ないよ!ないったら無い!何も無い!」

いつもの陽気なラウザーらしくない、かたくなな態度です。


「魔力がゆらぐと何かあるの?」

黒ドラちゃんがたずねるとブランが答えてくれました。


「魔力が大きく揺らぐときには、普通ではありえないことが起こったりすることがある」


「たとえば?」

「普通なら現れないような珍しい魔獣が現れたり、季節が突然変わったり、何日も激しく雷が鳴り続けたり……」

「なんか、あんまり良い事じゃないんだね」

黒ドラちゃんにもちょっと大変さがわかってきました。


「必ず起こるわけじゃないけどね。ただ、魔力の揺らぎ自体、あまりあることじゃないから、よくわからないんだ」

「ふーん」

「隊の魔術師からの報告では、今回もゆらぎが観測された後、特に何かあったというわけではないようなのですが……」

ゲルードがそう言うと、急にラウザーが「だろ!?だろ!?何も無いよ!本当に!」ムキになって念を押してきました。


どうもあやしい……その場のみんながそう思い始めたとき「黒ドラちゃん!」と可愛い声がしてドンちゃんが木々の間から飛び出してきました。

「あ、ドンちゃん!おはよー」

「おはよー!黒ドラちゃん、ブラン、ラウザー、あれ、ゲルードもいるの?」

ドンちゃんは何だかとっても急いで来たみたいです。


「ドンちゃん、どうしたの?」

「あのね、あたし海に行けないかな?ってお母さんに聞いたんだけど、やっぱり外でお泊りのお出かけはダメだって言われて――」

「あっ、それそれ!ドンちゃん、ゲルードが馬車を用意してくれるって!」

「えっ!海まで行けるの?ビューンって?」

ドンちゃんが目をキラキラさせながら聞いてきました。

「あのね、海までは行けないけど、少し離れた場所にとりでがあって、そこまで馬車で行けば、あとはちょっと飛んでいけば海なんだって」

「うそーーー!?あたしも海に行けるの!?うそ、うそ、うそーーーーーっ!?」

もうドンちゃんは涙目で大興奮です。

「あたし、絶対海には行けないんだって思って、昨日の夜はずっと泣いてたんだ。黒ドラちゃんに貝がらのお土産を頼むつもりで急いできたの」

「一緒に行けるんだよ、ドンちゃん!」

「黒ドラちゃん!」

「ドンちゃん!」

うれしくてうれしくて、黒ドラちゃんはドンちゃんを抱え上げてクルクル回って喜びました。




魔法の馬車を準備するために、ゲルードは鎧の兵士さんたちを連れてお城へ戻っていきました。

出発は明日の朝です。


黒ドラちゃんたちもワクワクしながら明日の準備をすることになりました。


まずは、ドンちゃんのお母さんに馬車でお出かけすることをお話ししなくちゃいけませんね。

ドンちゃんのお母さんは、黒ドラちゃんからお話を聞くと、しばらく考えてからこう言いました。

「魔法の馬車があるとはいえ、女の子が遠くまでお出かけするのなら、マグノラ様の森で旅の無事をお祈りしてから行きなさい」

なるほど、なるほど。


黒ドラちゃんはドンちゃんを背中に乗せて、ブランとラウザーと一緒にマグノラさんの森に向かいました。


森に着くと、一本道が森の中に続いています。

マグノラさんが黒ドラちゃんたちを受け入れてくれる証です。

道を進んでいくと、お花畑の広場に出ました。


その真ん中で、マグノラさんが珍しく起きてみんなを待っていました。







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