表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
1章☆雪をお口に入れるんだ!の巻
3/297

3-初めてのおでかけ

 翌朝、黒ドラちゃんはドンちゃんに揺すられて目を覚ましました。


「ドンちゃん、一緒に行けるの!?」


 飛び起きた黒ドラちゃんは嬉しくて目をキラキラさせました。


「……ううん。ごめんね、お母さんがダメだって」


「ええ~~~~~っ!そんなぁ」

 黒ドラちゃんはがっかりして、尻尾がへにゃりとしちゃいました。


「ごめんね、黒ドラちゃん。お母さんがね、北の山はすごく遠いし上の方は寒いから、あたしには無理だって」


「そうなの?……あたしは大丈夫かなぁ……」


 わくわくした気持ちがしぼんで、黒ドラちゃんは急にお出かけが不安になってきました。


「大丈夫だよ、黒ドラちゃんは竜だし飛べるし丈夫だし!」


 ドンちゃんがあわてて言います。


「それでね、あたしは行けないけど、もし持って帰れるなら、ちょっとだけでも良いから雪を口に入れてみたいなあって」


「おみやげだね?」


「うん。雪って持って帰れるかな?」


「ブランに聞いてみるよ、きっと雪には詳しいと思うから」


「そうだね。じゃあ、ブランによろしくね!」


 ドンちゃんが帰っていくと、黒ドラちゃんはまた不安になり始めました。昨日は雪を口の中に入れることがすごく楽しみだったのに、自分だけで行くとなったらなんだか昨日ほど楽しみじゃありません。でも、ブランを待たせているんだし、とりあえず待ち合わせの場所へと飛んで行きました。


 昨日と同じように、ブランはキラキラしていてすぐに見つかりました


「お待たせ!あのね、ドンちゃんは来れなくなっちゃたの。だからあたしだけ」


 降りて黒ドラちゃんがブランを見上げると、ブランは特にがっかりしているようには見えませんでした。


「あのね、北の山は遠いし寒いしダメだってお母さんに言われたんだって。……あたしは大丈夫かな?」


 黒ドラちゃんが不安そうに言うと、ブランは優しく言いました。


「君は大丈夫だと思うよ。ドンちゃんたちから見たら北の山はすごく遠いかもしれないけど、僕たちは空を飛んで行くからね」


「どのくらい遠いの?今日中に着く?」


 黒ドラちゃんが不安そうに言うとブランが笑いながら言いました。


「もちろん。今から出発すればお昼ころには僕の家に着いてるよ」


「そうなの?!あのね、あたしドンちゃんに雪をお土産に持って帰るって約束しちゃったんだ」


「雪をお土産にかぁ。出来なくはないと思うよ。君には魔力が豊富にあるし」


「魔力と雪と関係あるの?」


「君が魔力を使って、雪の冷たさを閉じ込めれば良いんだよ」


「えー、そんなこと出来るかな?あたし」

 ブランは大丈夫と言ってくれました。


「むしろ君に出来ないことなんてあるのかな……」


 それはつぶやきのようで黒ドラちゃんはよく聞き取れませんでした。


「え、なあに?何て言ったの?」


「何でも無いよ、さあ、出発しよう!」


 ブランが大きく羽を広げて飛び上がりました。黒ドラちゃんもすぐ後ろから付いていきます。


 飛び立ってすぐに、黒ドラちゃんはブランに頼んで森の中のドンちゃんのところへ行きました。空の上でバサバサしながら大きな声でドンちゃんを呼びます。すると地面に掘られた穴の一つからドンちゃんがひょこっと顔を出しました。


「黒ドラちゃん!」


「ドンちゃん、あのね、雪は持って帰れるって!あたし出来るだけいっぱい持って帰るから、楽しみに待っててね!」


「うん!待ってるよ!いつ頃戻るの?」


「えっとー、夕方?」


 黒ドラちゃんが首をかしげながらブランをみると、うんうんとうなずいてくれました。



「じゃあ、行ってくるねー!」


 元気よく黒ドラちゃんが空中で一回転しました。普段はドンちゃんを乗せているからしないけど、やれば出来る子なんです、黒ドラちゃんは。


 ブランと一緒に飛んでいく黒ドラちゃんを見送りながら、ドンちゃんが雪のお土産を想像してワクワクしていると、お母さんが穴の中から出てきました。


「黒ドラちゃんが雪を持って帰ってくれるって!」


「そう、良かったね」


「うん!」


 そのままずーっと見送っていそうなドンちゃんにお母さんが声をかけました。


「お家に入るわよ」


 ドンちゃんもお母さんの後から穴に入りました。

(雪、楽しみだな)青空が見えている出口を振り返りながら、思わずドンちゃんはタンタンっ!と足を踏み鳴らしました。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ほんわかあったかくて可愛いお話ですね〜(●´ω`●) 黒ドラちゃん、森から出たことがなくて自分のことを知らないだけで、実はとってもすごい存在なのかな。 ウサギのドンちゃんとか白ドラゴンのブ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ