表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
293/297

最終章-1

古の森に、足を運んでくださって、ありがとうございます

黒ドラちゃんたちのお話、最終章です

よろしくお願いいたします


 その日の朝、黒ドラちゃんは何だかいつもと違う気がして目を覚ましました。



 何だか森の中がひんやりしている気がします。



 古の森は、いつもはポカポカ春のような陽気です。

 でも、今朝はちょっとだけ空気がひやっとしていました。


「何だろう?ブランが北の山から雪を運んできてくれたのかな?」



 黒ドラちゃんはお耳を澄ませて、森の中にブランが来ていないか探してみました。お鼻をクンクンさせて匂いも確かめます。

 でも、ブランの羽音も匂いもしませんでした。どうやら、このひんやりはブランのせいでは無いみたいです。


 洞の中から出てきて、不思議な気持ちで辺りを見回していると、後ろの茂みからガサガサという音と一緒に、聞き慣れた羽音が聞こえてきました。


「ぶっぶい~~ん!」

「ドラドラ~!」


 いたずら好きの仔ノラウサギのマシルと、クマン魔蜂のモッチです。その後ろからちょっと遅れて、マシルとは双子のグートも現われました。


「ぶぶいん?」

 キョロキョロしていた黒ドラちゃんにモッチがどうしたのか聞いてきます。


「あのね、今朝ってなんだかいつもと違う気がしない?」


「ぶぶ、ぶいん……」


 黒ドラちゃんの言葉に、モッチも辺りを見回しました。


「ぶいん?」


「わからない?あたしの気のせいなのかなぁ」


 黒ドラちゃんがもう一度森の中を見回していると、後ろの茂みが大きくガサガサと音を立てて、ドンちゃんが現われました。


「おはよう、黒ドラちゃん」


「おはよう、ドンちゃん」


「ぶいん♪」


「ああ、やっぱりモッチと一緒だったんだ。朝ご飯を食べ終わった途端に二匹で外へ飛びだして行っちゃったから、探しに来たの」


「ドラドラ~」

「モチャモチャ~」

 マシルとグートが仲良く答えます。どうやら、黒ドラちゃんとモッチと一緒にいたんだよってことらしいです。


「今日は朝ご飯を食べたら、遊びに行く前にノラウサギダンスの練習のお約束だったでしょ?」


「ドラドラ~!」」

「モチャモチャ~」!」


 双子にとっては、黒ドラちゃんとモッチと遊ぶ方が良かったみたいです。


「まったくもう。黒ドラちゃんたちと一緒なら叱られないと思ってるでしょ?」


 ドンちゃんが腰に前足をあてて、ちょっとだけ低い声で二匹にいうと、マシルとグートは黒ドラちゃんの後ろへそそっと隠れました。


「ぶぶいん」


 なぜかモッチも双子と一緒に黒ドラちゃんの背中に隠れています。


 黒ドラちゃんの後ろからコソッと顔をのぞかせる三匹の様子がおかしくて、思わずドンちゃんは笑ってしまいました。


 すると、ホッとした様子でマシルとグートが前に出てきました。モッチもマシルの頭の上に止まって、どこからか出した白い布で汗をぬぐっています。


「黒ドラちゃん、朝早くから子どもたちが押しかけてごめんね」


「ううん、大丈夫だよ。それよりさ、ちょうどドンちゃんと話したかったの」


「お話?」


「うん。ええとさ、何だかいつもと違う感じがしない?」


 そう言って黒ドラちゃんが辺りを見回すと、ドンちゃんも首をかしげました。


「うーん。何か違うかな?いつもと同じ気がするけど」


「そっかぁ。ドンちゃんにもわからないのか」


 黒ドラちゃんはちょっとガッカリしました。子どもたちやモッチにはわからなくても、ドンちゃんならわかるかも知れないって思っていたんです。


「ねえ、黒ドラちゃんにしかわからないって事は、ひょっとして森に新しい竜が来ているんじゃ無い?」


「えっ!?」

「ぶいん!?」

「ドラドラ~!?」


 黒ドラちゃん、モッチ、マシルが驚いて声を上げました。

 グートの眠そうな目は一瞬だけ大きくなって元に戻っています。


「だって、黒ドラちゃんにしかわからない時って、ブランやラウザーが来た時だったじゃない?」


「うんうん!」


「だからさ、今朝も知らない竜が来ているとか、古の森に」


「そっかあ」


 黒ドラちゃんはもう一度目をつぶって耳を澄ませてお鼻をクンクンさせました。


「うーん?」


「違うの?」


「よくわかんない。でも、森の外れまで行ってみよう!」


「ぶぶいん!」

「ドラドラ~!」

「モチャモチャ~!」


 黒ドラちゃんの言葉に、モッチと双子がうれしそうに飛び跳ねました。


「でも、森のどっちの方角だかわかる?」


「うーん。白いお花の森がある方……かな、なんとなくだけど」


「マグノラさんのところに知らない竜でも遊びに来ているのかな?」


「そうなのかな?まあ、とにかく行ってみるね。みんな一緒に行く?」


 黒ドラちゃんがたずねると、みんながいっせいにうなずきました。


 あ、ドンちゃんが双子を抱っこして黒ドラちゃんの背中を登ってきます。今朝のノラウサギダンスの練習は、無事に後回しになったみたいです。モッチもいつものように黒ドラちゃんの頭の上に止まりました。


「じゃあ、行ってみようか!」


「ドラドラ~!しゅっぱーつ!」

 黒ドラちゃんが羽ばたくと、背中でマシルが大きな声で言いました。

 ナゴーンへのお出かけ以来、マシルはこの号令がすっかり気に入っちゃったのです。


「ぶっぶい~~~ん!」

 モッチもご機嫌で羽音を立てています。


 そうして黒ドラちゃんたちが森の外れを目指して飛び上がった瞬間に、目の前をふわりと白いものが横切りました。


 それは一つだけではなくて、次々に黒ドラちゃんたちの上に降ってきます。


「ぶぶいん!?」

「これ、なあに?」


 モッチとマシルが不思議そうに上を見上げました。黒ドラちゃんとドンちゃんは白いものを見てビックリしました。


「雪?!古の森に雪が降ってきた!」

「ええっ!でも、雪ってブランが棲んでいる北の山や、ノーランドみたいな寒い国じゃないと降らないって、フクロウのおじいちゃんが言ってたよね……」


 いつでも春のはずの古の森に、白くてふわふわの雪が降ってきたのです。


















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ああっ・・・もう最終章なんですね(ToT)
[良い点] ついに来てしまった最終章…… 噛みしめるように読ませて頂きます(寂) どうして古の森に雪が……? 気になりますね。 続きを楽しみにしております!
[一言] え? 最終章? 更新に浮かれて読み出そうとしたら、 衝撃的な一文が最初に書かれてました。 かなりショックですが、 最後まで楽しみに読ませて頂こうと思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ