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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
3章☆おとなになるって、かゆいんだ!の巻
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6-モグノラ……さん

きれいなお花を見ながら、楽しいお話をたくさん聞かせてもらっているうちに、あっという間に夕方になっていました。

黒ドラちゃんとドンちゃんは、マグノラさんにお礼を言って、急いで白いお花の森を後にしました。

約束通り一番星が輝く前にドンちゃんをおうちに送って行って、黒ドラちゃんは洞のおうちに戻ってきました。

「今日は楽しかったなあ。今度はブランと一緒に行こう」

黒ドラちゃんは呟きながらゴロンと横になると、すぐに寝息をたてはじめました。



さて、森が夜に包まれて、フクロウのおじいさんのホーッという鳴き声しか聞こえなくなった頃です。

黒ドラちゃんは、昨日と同じように背中がかゆくて目が覚めました。

「か、かゆいっ、かゆいよ~!」

そうでした。3~4日続くってマグノラさんが言っていたんでしたっけ。

黒ドラちゃんの手は短めなので、あいかわらず背中に届きません。

あんなにたくさんお話ししたんだから、かゆくなったらどうしたら良いのか聞けば良かったのに、すっかり忘れていたんです。

かゆくてかゆくて、黒ドラちゃんは背中を洞の内側にこすりつけながら、あっちにゴロゴロ、こっちにゴロゴロ、転げまわりました。


と、その時、黒ドラちゃんのお耳に、誰かが呼ぶ声が聞こえてきました。

こんな夜中に森にお客様でしょうか?いったい誰が呼んでいるんでしょう?

一瞬痒さを忘れて耳を澄ますと「黒チビちゃーん!」というガラガラ声がはっきり聞こえました。

「マグノラさん!」

背中の痒さも忘れて、黒ドラちゃんは声の方へ飛んで行きました。


マグノラさんは湖の向こう岸をウロウロとしているようでした。

黒ドラちゃんが飛んで行くと、すぐに駆け寄ってきてくれました。

「黒チビちゃん、大丈夫かい?」

マグノラさんのガラガラ声が心配そうです。

「マグノラさん、また背中がすごくすごくかゆいの!」

黒ドラちゃんが半べそで言うと「やっぱりかい。ごめんよ」とガラガラ声が、シュンとした感じになりました。

「昼間、初鱗のことを教え切らないうちにあんた達を返しちまったと気づいてね、気になって飛んできてみたんだ」

「ありがとう、これってどうにか出来るの?」

黒ドラちゃんは背中をヨジヨジしながら聞きました。

「人間に姿を変えることは、もう出来るかい?」

「うん。ブランに教えてもらったよ」

「そうかい、あの坊やも役に立つこともあるね。ほい、ちょっと人間になってごらん」

マグノラさんに言われて、黒ドラちゃんは「ふんぬっ!」と掛け声をかけました。

ボワンッと光が弾け、そこには黒髪に若葉色の瞳をした7、8歳くらいの女の子が立っていました。

「人間になったよ、マグノラさん」

「掛け声はアレだけど、姿は可愛いね。さて背中のかゆみはどうだい?」

「えっと……あれっ全然かゆくない!!」

 黒ドラちゃんはビックリしました。

さっきまで我慢できないほど痒かったのに、今は何ともありません。

試しに背中の真ん中を触ってみました。

羽の名残りみたいに背中の上の方の両側に骨があるのがわかりましたが、その間を触っても何も感じません。

ひとしきり背中をさすったりなでたりして、人間の腕って便利だな、と黒ドラちゃんは思いました。

「マグノラさん、ありがとう。これで眠れるみたい」

そういうと黒ドラちゃんは可愛らしいあくびをしました。

安心したら、なんだか急に眠たくなってきました。

「モグノラ……さん、ふあー」

なんだかマグノラさんの名前が変わっちゃってますけど、黒ドラちゃんは半分夢の中です。

「黒チビちゃん、あの洞がおうちだろ?あたしが運んであげるから寝ちまいな」

そう言って、マグノラさんはひょいっと黒ドラちゃんを抱っこして湖の向こうへひとっ飛びしました。

そして洞の中にそっと黒ドラちゃんを降ろして、枯れ葉のお布団をかけてくれました。

けれど洞を一歩出ようと外を見て「おやおや、もうわかんなくなっちまったよ」とつぶやきました。

さっきまではっきり見えていた森は、黒ドラちゃんが眠りに着いた途端に魔力のもやがかかったようになっていました。

マグノラさんには帰り道が全然わからくなっていたのです。


「しょうがない、今日はこのまま子守りをするかね」

そう言うと、マグノラさんは黒ドラちゃんの体を抱え込むように、どっこいしょと洞の中で丸くなりました。


外ではお星さまがチカチカ輝いています。


洞の中から「すー」「ぐー」と二つの寝息が聞こえてきて、森の夜は静かに更けてゆきました。








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