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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
3章☆おとなになるって、かゆいんだ!の巻
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3-白いお花の森へ

「ねえ、マグノラってどんな竜だと思う?」

背中からドンちゃんが聞いてきます。

「うーん、白い大きなお花が咲いてる綺麗な森だったから、お花みたいに白くてきれいな竜かな?」

「お花みたいな竜かあ。会うの楽しみだね!」

ドンちゃんが言うと、なんだか黒ドラちゃんも楽しみに思えてきました。

「優しい竜だと良いね!」

「うん!」


ちょっと元気が出てきた黒ドラちゃんは、マグノラの棲む森を目指してどんどんお空を進んでいきました。


しばらく飛ぶと大きな白いお花の咲く森が見えてきました。

濃くて鮮やかな緑に白くてふんわりしたお花がとてもきれいです。


「とりあえず降りてみようよ」

ドンちゃんに声をかけられて、黒ドラちゃんは森のはずれの方にゆっくりと降りて行きました。




近くで見るマグノラの森は、黒ドラちゃんの森と違って、大きな木がきちんと並んで生えていました。

そして森の中に向かって一本道がまっすぐ続いています。

空から見た時には全然わからなかったのに、不思議です。


「行ってみようか?」

背中のドンちゃんに話しかけると、タンッと一回元気な合図が返ってきました。


黒ドラちゃんはドンちゃんを背中に乗せたまま、1本道を歩きはじめました。


森の中はとても良い香りです。

白いお花の周りには、可愛らしいミツバチさんがたくさん集まっていました。

お花の中に出たり入ったり忙しそうです。


このミツバチさんのはちみつ、舐めてみたいなぁ、なんて黒ドラちゃんが考え始めた頃、急に目の前が開けました。

まるで広場のように、ぐるっと丸くそこだけお花畑になっています。

その真ん中に、茶色のゴツゴツした大岩がデーンと置いてありました。


「黒ドラちゃん、ここステキ!」


ドンちゃんが背中からピョンと飛び降りて、お花の中に飛び込みました。

色々な色の花びらが舞って、ドンちゃんは大喜びです。

「黒ドラちゃんもピョンピョンしようよ!」

「う、うん。でもマグノラさんがお留守みたいなのに、勝手に遊んで良いのかな?」

黒ドラちゃんがそう言うと、ドンちゃんはピョンピョンをやめました。

そして、真ん中にある茶色の大岩に登って後ろ足で立ちました。

長いお耳をピンッと立てて辺りをぐるっと見回します。


「ここってマグノラさんのなわばりかな?」

そうドンちゃんが言うと、黒ドラちゃんが答えるよりも早く、大きなガラガラ声が響き渡りました。


「わかってるんなら話が早いわ。ここはあたしの庭だよ、おチビちゃんたち」


と、ドンちゃんの足元がグラリと大きく動きました。

「きゃー落ちるー」

ドンちゃんは、あわてて岩の上でしゃがみこみました。

ですが、岩が急に高く上に伸びてきたので、コロコロと転がって花の上に落ちてしまいました。

「ドンちゃん、大丈夫!?」

「うん、お花があったから痛くない。でも、岩が動いたよ?」


「岩って、あたしのことかい?」


またガラガラ声が響いて、岩がくるりとこちらを向きました。


「わっ!岩じゃない!!」

黒ドラちゃんとドンちゃんが一緒に叫びました。


そこには、茶色と赤の混じったうろこを輝かせて、大きな竜が一匹立っていました。

岩だと思っていたのは、竜の背中だったんですね。


「ごめんよ、野ウサギのおチビちゃん、落っことすつもりじゃなかったんだけどね」

ガラガラ声で赤茶の竜がドンちゃんに声をかけました。

「大丈夫。あたしこそ、勝手に背中に登っちゃってごめんなさい」

ドンちゃんが謝ると、赤茶の竜は「いいよ、いいよ」と言いながら、ドンちゃんの頭をなでなでしてくれました。


「で、あたしの昼寝の邪魔をしてくれたおチビちゃんたちは、どこの迷子だい?」

そう言いながら、ブランよりもさらに大きい赤茶の竜は、黒ドラちゃんたちの前で大きく伸びをしました。

伸びをしながら大きく欠伸をすると、口の中には丈夫そうな牙がずらっと並んでいました。

とたんに黒ドラちゃんの背中に飛びついたドンちゃんが「こわくない、こわくない、こわくなんかない」とまるで呪文のようにつぶやいています。

言葉と裏腹に、ちょっと、いや、かなり震えてるみたいです。






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