表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
2章☆キラキラ王子に会いに行くんだ!の巻
21/297

10-とくべつなの

「スズロ王子!」


 ゲルードが王子のもとに駆け寄ります。


「ゲルードすまなかった。お前にもずいぶん心配をかけたな」


 王子様がゲルードに声をかけると、ゲルードは感激のあまり声も出せずにぶんぶん首を振っています。


「良かったね、ゲルード。伝説の古竜は役に立った?」

 黒ドラちゃんがゲルードの顔を覗き込むと「もちろん!もちろんでございます!」と涙声で返事がかえってきました。


 王子は立ち上がると王様の前に進み出ました。そのまま、ただ黙って頭を垂れる王子に、王様が言いました。


「その輝きがもたらされることの栄誉を、責任を、忘れるな」


 王子はその場で深く深くうなずきました。

 

と、黒ドラちゃんが王子の顔を覗き込んできます。小さな声で「はちみつ舐める?」と聞かれて、王子は思わず笑ってしまいました。王子が立ちあがり、黒ドラちゃんを抱きあげます。その足元で、ドンちゃんがぴょんぴょんしているのが、黒ドラちゃんから見えました。


「ドンちゃんも抱っこして」とお願いすると、王子はすぐにドンちゃんも抱き上げてニッコリほほ笑んでくれました。


 心の陰りが消えたスズロ王子の笑顔は、とびっきりのキラキラしい笑顔でした。


「キラキラだねー」


「うん、本当にキラキラだね!」


 黒ドラちゃんとドンちゃんは、王子様に抱っこされてポワンとした顔で見とれています。ゲルードは嬉し涙を拭いています。王様やお后様、弟王子や王女様も皆嬉しそうです。ブランも……

 あれ、ブランはなんだか不機嫌そうですね?ブランもクマン魔蜂のはちみつ舐めたかったんでしょうか。





 謁見が無事に終了すると、黒ドラちゃんとドンちゃんはブランに連れられてお城から森に戻ることになりました。来た時に乗った魔法の馬車がお城の外で待っています。


 お后様とスズロ王子は、馬車のところまで黒ドラちゃんを見送りに出てきてくれました。


「またぜひ遊びに来て頂戴ね、黒ドラちゃん、ドンちゃん」とお后様。


「今度は私が古の森へ赴こう。お土産に欲しいものがあれば、ゲルードに伝えておいてくれ」


 王子様が黒ドラちゃんとドンちゃんの頭を交互に撫でながら約束してくれます。その後ろでゲルードがコクコク頷いています。


「絶対来てね!約束だよ!」


 黒ドラちゃんはスズロ王子と指きりしました。ふくろうのおじいちゃんから教えてもらったんです。人間は大事な約束をするときに指きりするって。


 馬車に乗り込んで窓から外をのぞくと、お后様と王子が手を振ってくれていました。


 王子の肩にはタンポポ妖精のポポンが乗っています。ふわふわと揺れてお別れしてくれました。


 馬車が動き出し、お城がだんだんと遠くなります。来る時に通った街は、夕暮れの中で昼間とは少し違うあわただしい賑わいを見せ始めていました。黒ドラちゃんもドンちゃんも、今日一日の疲れが出てきたのか眠くなり始めました。窓の外の景色をぼんやりと見ています。


 ずっと黙っていたブランが口を開きました。


「黒ちゃん、……スズロ王子が一番好き……なの?」


 ちょっと声が震えています。


「うん!スズロ王子はキラキラだったね!人間の中で1番好きだよ!」


 眠そうだった黒ドラちゃんがぱっと顔を輝かせました。


「人間の中、で?」


「うん!」


「じゃあ、たとえば人間以外の、虫とか……動物とか……竜とか……そういうのも含めたら?」


「うーん、そしたら1番じゃないかも?」


 それを聞いてブランの瞳がきらりと光ります。


「じゃ、じゃあひょっとしたら竜が、たとえば僕が一番になることもあるかな?」


 声がちょっと嬉しそうになってきました。


「ううん、ブランは1番にはならないね」


「えっ!?」


 ブランが、ガーンッという効果音が聞こえそうな顔をして聞き返します。


「ブランは“特別”だから順番は付けられないの!」


「えっ!?」


 今度はパァ~っという効果音が聞こえそうな顔でブランが聞き返します。


「ブランとドンちゃんは特別なの!特別大好きなの!」


「あ、ドンちゃんも?……そうだよね」


 ブランの肩が、ちょっと落ちました。黒ドラちゃんの膝の上では、ドンちゃんが丸くなってウトウトし始めています。


「そ、そっか僕とドンちゃんは特別か……うん、ありがとう」


 なんとか立ち直ってブランが黒ドラちゃんにお礼を言った時、馬車はまた魔法の力で森のすぐそばに着きました。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ