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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
2章☆キラキラ王子に会いに行くんだ!の巻
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6-お城のなかへ

 黒ドラちゃんとドンちゃんがお城に着くと、偉い宰相様という人が迎えに出てくれていました。

 なんとゲルードのお父さんなんですって!ゲルードったら、あんな変わり者だけどお坊ちゃまだったんですね。そいう言えば、王子様とも幼馴染だって言ってたっけ、なるほどなるほど。


 ふんふんと黒ドラちゃんとドンちゃんが感心している横で、ブランが宰相様と話しています。


「王は謁見の間でお待ちです。ご案内いたします」

 宰相様がそう言って歩き出すと、ブランも歩き出しました。


 キョロキョロしていた黒ドラちゃんも慌ててドンちゃんを抱っこして歩き出しました。背中には森のお土産の小包を背負っています。竜の時ならともかく、今の黒ドラちゃんの見た目からするとけっこうな大荷物です。でもどうしても自分で運んで王子様に渡したかったので、お城の召使さんの手助けはお断りしました。


「見てみて、黒ドラちゃん、まるで本物みたいだね」

 ドンちゃんが小さい声で話しかけてきます。


 ドンちゃんが見ているのは、壁に飾られた大きな肖像画でした。代々の王様とその家族でしょうか。まるで本物みたいに良く描けています。


「すごいね、今にも動き出しそうだね」


「今の王様一家の絵もあるのかな?」

 黒ドラちゃんとドンちゃんがヒソヒソ話していると、ブランが振り向いて教えてくれました。


「あの一番先に飾られているのが、今の王のご家族だよ。近くに行ったらよく見てごらん」


 黒ドラちゃんとドンちゃんは、その絵の前で立ち止まりました。


 黒に近いこげ茶のクルクルした髪の男の人が王冠をかぶって、たくさんの宝石がついた服を着て立っています。その横には妖精みたいに華奢で美しい、金の髪をした女の人がこれまたたくさんの宝石のついたドレスを着て椅子に座っています。腕には赤ちゃんを抱いています。ピンク色の可愛らしい産着、ほっぺもピンクでこれはターシャ様ですね。

 女の人の横には二人の男の子が立っています。こげ茶のくるくるっ毛がセリジ様、同じくこげ茶でサラサラっ毛がソロン様でしょうか。

 でも、どの子もとても美しい顔立ちをしていることだけは間違いありません。

 王冠をかぶった男の人の横には、クルクルした金の髪の少年が剣のようにも杖のようにも見える棒を持って立っています。カッコつけているようですが、クルクルの金の髪が鳥の巣のようになっていて、ちょっぴり子どもっぽさがにじみ出ています。


 この、金のクルクルっ毛の少年がスズロ王子でしょう。透き通った水色の瞳、輝く金の髪、飛びぬけて整った容姿は本当に光り輝くようです。


「キラキラだね、黒ドラちゃん」


「本当だ、ホントにキラキラしてるんだね」

 黒ドラちゃんとドンちゃんはその肖像画の前から全然動かなくなってしまいました。


「黒ちゃん、ドンちゃん、本物の王子様がこの扉の先で待っているよ」

 ブランに声をかけられ、黒ドラちゃんたちはハッと我に返りました。


「ドンちゃん、いよいよ王子様だよ」

 黒ドラちゃんが緊張した声で言いました。ぎくしゃくした足取りで進んでいくと、大きな両開きの扉が内側から開かれます。


「輝竜ブラン様と古竜黒様のお成りー!」


 扉の近くにいた騎士の人が大きな声で紹介してくれました。


 黒様なんて言われると、自分のことじゃないみたいで、黒ドラちゃんは不安でドキドキしてきました。


「ドンちゃんドンちゃん」

 小さい声でドンちゃんに話しかけます。


「なあに、黒ドラちゃん」

 ドンちゃんも小さい声で答えてくれます。


 ドンちゃんに「黒ドラちゃん」と呼ばれたら、ちょっとドキドキが治まりました。やっぱりドンちゃんに一緒に来てもらって良かった、黒ドラちゃんは心の底からそう思いました。



 一歩入ってみると、謁見の間は良く磨かれた石の床で天井にはブランの魔石を使ったシャンデリアが輝いていました。

 黒ドラちゃんは腕にしっかりドンちゃんを抱いて、一歩一歩王様の前へ進みました。絵の中で見たとおりの王様は、キラキラした姿で豪華な椅子に腰かけています。


「ドンちゃん、あの椅子ね、王座って言うんだって。フクロウのおじいちゃんが言ってたよ」

 黒ドラちゃんが囁きましたが、返事がありません。


 あれっ?って思って腕の中のドンちゃんを見ると、緊張してカチンコチンになっていました。それを見ていたら黒ドラちゃんも急にドキドキが激しくなってきました。


 王様がにっこりしてブランに何か話かけています。ブランが答えながら黒ドラちゃんの方へ微笑みかけました。でも、黒ドラちゃんはドンちゃんと一緒にカチンコチンになっていたので、誰の声も耳に入りません。






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